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ハスクバーナが導き出したソフトスポーツの答え
サーキットでのパフォーマンスを過度に追求した結果、スーパースポーツの進化についていけなくなってしまったユーザーはたくさんいる。200psを超えるパワーや1万5000rpmを簡単に超えていくエンジンにリアリティはなく、サーキットでもそのパフォーマンスを知ることは難しい。
それと同時期にMotoGPマシンは市販車からかけ離れたフォルムとなり、ライダーの操作も走行中に電子制御や車高をコントロールする特殊で複雑な領域に突入。レースでのスポーツライディングにおいても、多くのユーザーがイメージする『バイクを操る』ことを超越しつつある。
まさにスポーツバイクやスポーツライディングは過渡期。厳しい規制でハイパフォーマンスエンジンの開発が難しくなったこともあり、メーカーはスポーツバイクへのアプローチを変更。新しいスタイルを模索し続けている。
欧州ではミドルクラスのスポーツバイクを『ソフトスポーツ』と呼ぶ流れが起きており、各メーカーがレース、窮屈なポジション、ハードなサスペンション、高回転型エンジン、温度依存の高いタイヤから脱却した新しい形のスポーツバイクを提案。ただし、それは当たり障りのないバイクのことではない。さじ加減はとても難しいのだ。
そんな時代にハスクバーナ・モーターサイクルズ(以下、ハスクバーナ)が出した『ソフトスポーツ』の一つの答えがスヴァルトピレン801である。
先代のスヴァルトピレン701からデザインの流れは汲むものの、エンジンは単気筒から並列2気筒となり全てを刷新。完成度を大きく向上させた。
モノトーン基調の高級感のあるスタイリング。スウェーデン語でスヴァルトは「黒」、ピレンは「矢」という意味で、カラーは「黒い矢」をイメージ。2024年8月発売予定で138万9000円。
クロームモリブデン鋼のチューブラーフレームに799ccの並列2気筒エンジンを搭載。シンプルなスタイルだが、スポーツ性は高く、燃料を除く重量は181kg。直線と曲線を組み合わせた未来的なデザインも魅力
ハスクバーナとKTMだけが持つ不等間隔爆発の並列2気筒エンジンに注目
バイクにおいてエンジンの楽しさはとても重要だ。近年、スポーツバイクにおいて並列2気筒エンジンが増えてきているが、人気は270度位相クランクを使う不等間隔爆発(90度Vツインと同じ)だろう。
しかし、KTMとハスクバーナは、他にはない285度位相の不等間隔爆発を採用。ちなみにメーカーは75度と表記するが、これはKTMのVツインエンジンの挟み角が75度だから。KTMが長年Vツインエンジンで培ってきた爆発間隔を並列2気筒エンジンで再現。そしてその技術がついにハスクバーナのロードスポーツにも投入されたのだ。
フランスのマルセイユ郊外のワインディングで試乗。アスファルトのコンディションは日本ほどよくないが、それだけに電子制御の恩恵を受けやすい。
このエンジンを活かすための電子制御も充実。シフトアップ&ダウンに対応するイージーシフト、選べるライドモード、モードに応じて介入度が連動するABSやトラクションコントロールも装備する。
さらに面白いのはダイナミックパックというオプションを用意していて、よりスポーツ性を追求したいユーザーには電子制御を任意に設定できるネクストステージを用意していることだろう。
タイヤはブロックパターンのピレリ製MT60RSを採用。「このタイヤが好きでなければ変えてください。そのために最もメジャーなサイズにしたんですから」と開発陣が言ってしまうところもなんともハスクバーナらしい。好みのバイクに仕立てるのはあくまでライダーなのである。
ライダーがバイクに合わせるのでなく、バイクをライダーに合わせる
スヴァルトピレン801はスリムだが、それほどコンパクトではない。それが佇まいの良さを生み、高級感のあるスタイリングを実現。跨るとポジションはとても自然で、サスペンションはスッと沈み込む。
ライドモードから「ストリート」を選んで走り出す。エンジンは穏やかだが、スロットルを大きめに開けるとしっかり加速する。どの回転でも扱いやすく、独特のパルス感が気持ち良い。
その後は「スポーツ」モードをテスト。エンジンは速さを発揮するが、たまにトラクションコントロールが介入してくるため、オプションの「ダイナミック」にしてトラコンとリヤのABSをカットしてみた。
するとスロットル操作に対する車体の反応が上がり、アグレッシブなキャラクターに。フロントフォークの減衰力調整機構は簡単に手で回せるため、停止時に頻繁に変えてみる。変更した際の変化がわかりやすく、好みを探しやすい。
スヴァルトピレン801に苦手なシチュエーションはなく、低速コーナーも高速コーナーも抜群の安定感を披露。スリムな車体は、コーナー手前で直立付近から向きを変えるレスポンスがとてもよく、その後の旋回、立ち上がりに繋げやすい。ブロックタイヤであることを忘れるほどのコーナリングパフォーマンスだが、少しロード寄りのタイヤにしたらさらなるスポーツ性を見せてくれるはずだ。
走行後に街角に佇む丸目のヘッドライトを見るとなんだかとても安心する。最近のネイキッドは、顔が険しく、グラフィックも派手だが、丸目でも存在感や強さを主張できることをスヴァルトピレン801が教えてくれる。ハスクバーナ・モーターサイクルズが提案する最高峰のロードスポーツの答えがここにある。
ハスクバーナ・モーターサイクルズ スヴァルトピレン801 [2024]主要諸元
(スペック)
・ホイールベース:1388±15.5mm
・車重(燃料含まず):181kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒799cc
・最高出力:105PS/9250rpm
・最大トルク:8.87kgf・m/8000rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=180/55-17
・価格:138万9000円
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ピーキーな単気筒よりもマイルドな2気…いや、それでも105馬力あるのか、凄いな
確かにリア180のタイヤは一般的なサイズだけど、キャラクター考えたら先代と同じく160でも良かったような
それでもこのスペック、装備で138万円は破格ですね