
こんにちは! 今週の「WebikePlusスタッフが勧める意外といいぞ!」のコーナーです。
安くてカッコいいバイクを買ったので、意気揚揚と仲間に見せたら「ああ……コレ買ったのか……」なんて言われ、その言葉どういう意味!? と思いつつネットで調べたら「壊れやすい」だの「不人気」だのひどい言われよう。

そんな経験ありませんか? だからってさっさと買い替えるのはちょっと待った。キラキラした大人気車ではなくても、どんなバイクも個性の塊。メーカーが「これは売れるぞ!」と意気込んで開発したバイクたちは、それぞれ独特の魅力を持っているもの。
そこで、人気はどうあれいいものはいいぞ! とゴリ押ししていくのがこのコーナー。人気モデルに乗ってりゃエライ時代は過去のもの、現代こそマイナーバイクを全力でお勧めしたい! と「マイナーバイク好き(自称)」のWebike+スタッフ・西田が独断でピックアップしたモデルを紹介していきます!
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目次
質実剛健! スポーツマシン風だけど少し違う250ccオンロードツアラー
バイクの醍醐味といえば、思いがけないほど遠くに行くこともできる自由さがあります。この楽しさにとりつかれ、ロングツーリングにハマってしまうライダーも沢山いるはず。もちろんバイクに乗り始めたばかりのビギナーライダーも、まだ見ぬ景色を目指してロングツーリングに憧れる人も多いでしょう。そこでセレクトしたい車種が「オンロードツアラー」。ロングツーリングに最適化されたスペックが、自由な旅の相棒にふさわしい!
オンロードツアラーに求められるスペックは、まずたくさん走っても疲れにくいこと。ハンドルのフラつきや風圧での消耗はできるだけ避けたいところです。そして高速道路を使うことも考えて、限界までスロットルを開けなくてもしっかり車の流れに乗れる動力性能を持つこと。そしてタンクが大きく航続距離が長く、田舎道でもガス欠の不安なく走れること。ついでに大きなキャリアやタンデムシートで荷物をたくさん積載できること――加えて、機械的にシンプルで故障が少ないことも大事。
過去のオンロードツアラーには、これらの条件をしっかり押さえた魅力的なモデルがいくつかありました。

カワサキのZZR250は1990年発売。大型ZZRのデザインを踏襲したフルカウルは風圧をカット、35PS/12000rpmのパワーは高速巡行もでき、250ccオンロードツアラーの代表として長く生産された。

スズキのACROSS(アクロス)も1990年発売。GSX-R250由来の並列4気筒ユニットは45PS/145000rpmのスポーツエンジンながら、タンクの位置にフルフェイスヘルメットが入るほどの25Lの収納を装備。フルカウルながら機能性はすごい。

スズキから現行販売されているGSX250Rは、スポーティなSSライクな見た目ながら性能はオンロードツアラー的。搭載するエンジンはかつてGSR250に採用されていた水冷並列2気筒の発展型で、高い燃費と中低速重視のギア比で粘り強い。
しかしそんなツアラーの中でも、とくに私がおすすめしたいのがホンダ・XELVIS(ゼルビス)なのです。
250ccツアラーの決定版!? ホンダ・XELVIS(ゼルビス)
ゼルビスは1991年発売のモデルで、系統としてはホンダ初の250cc水冷Vツインエンジンを搭載したロードスポーツ「VT250F」の子孫にあたります。当時は一種のスーパースポーツ的立ち位置を持っていたVT250Fですが、そのエンジンは非常に発展性が高く、かつ頑丈で扱いやすいという特徴から、その後多くの後継モデルが生まれました。ゼルビスもその中の1台で、エンジンを中低速よりの特性に調整、大型車種並みのフレームとホイールベースを持ち、ハーフカウルを搭載しました。
ところが、ゼルビスの発売当時はちょうどネイキッドブームまっさかり。カウル付きのモデルがわざわざネイキッド化するような時代の中、ゼルビスのスタイリングは流行に乗れませんでした。かといって、ネイキッドに興味のないスポーツマシン好みのライダーにとっては、既に当たり前の装備であるフルカウルを搭載するわけでもなく、エンジンは10年前に基本設計された目新しくないもの。しかも大柄で重いボディは250cc特有の軽快さはありません。というわけで多くのライダーからはあまり評価されぬまま、1997年に6年間続いた生産を終了。モデルチェンジはなく、カラー追加も92年以降ありませんでした……。
じゃあ実際に乗ってみるとどうなのか? というと、まず大柄な見た目にちょっと腰が引け。それもそのはず、ホイールベース1430mmの長さはCB400SFより20mm長く、あきらかに250ccクラスとしては一回り大きいのです。ところがシートにまたがると意外とスリムで、身長164cmの筆者でもV型エンジン由来の車体の細さからか足付きに不安はまったくなし。172kgの車体重量も、重心が低めなのか? 取り回しに影響している感覚はありません。

1991年発売のゼルビスは本格的なオンロードツアラー。ハーフカウルは上半身への風圧を遮り、高速巡航でも疲労感なし。16Lのタンクと25km/Lを超える燃費性能は300km以上の航続距離を誇り、長いホイールベースで直進安定性も抜群。理想的なオンロードツアラーだ。

エンジンは1982年のVT250Fをルーツに持つDOHC4バルブ水冷V型2気筒。最高出力は36PS/11500rpmと、当時のハイパワーマシンの中では控えめながら中低速で扱いやすいギア比、トルクを実現。基本設計が古くとも、シンプルで頑丈な特性はバイク便やツーリングライダーに高い評価を受けた。
そして走り出すと、まず感じるのはエンジンの力強さ! 低回転でラフなクラッチ操作をしても粘り強く加速するため、街乗りでもストレスはなし。最高出力36PS/11500rpmのエンジンはベースとなったVTZ250からはダウンしていますが、中低速での扱いやすさは十分なもの。そのくせ、Vツインならではのフラットな吹け上がりで高速走行時もスムーズ。250ccバイクで高速道路を走るときありがちな「エンジンがすげー音出して無理してるよ……」という不安な感覚は全くなく、まるで400ccクラスのような安定感を発揮します。
これはフラットなエンジン特性もさることながら、大きな車体が生み出す直進安定性と、重い車体によるどっしりとした安定感から感じるポイントでもあるでしょう。分厚いシートで長時間の走行でも疲れづらく、荷掛けフック(なんと6個を装備!)で荷物を積むのも苦労がありません。ハーフカウルも上半身への風圧をかなり防いでくれ、正直「フルカウルって必要なのか?」とすら思うほど……(フルカウルモデルオーナーの皆さん、ごめんなさい)。

メーターはアナログオンリーの3連式で、レッドゾーンは13000rpmから表示されている。地味なメリットではあるが、このカウル内部にかなり余裕があるため、後付けの計器類やETC車載器などを取り付けるのにも不自由はない。その点もツアラーとして優秀!

シート高は770mmで現行車のCBR250RRの790mmやCB250Rの795mmよりも低く、スリムな車体もあいまって足つき良好。また写真では隠れているものの、シート下に収納可能な荷かけフックを6つも搭載しているため、キャリアがなくとも積載性はバツグンだ。
つまり意外といいぞ「ゼルビス」
いいところばかりピックアップしましたが、ツーリング特化モデルとしてのネガティブな部分ももちろんあります。大きい車体は小回りという点でピュアなスポーツマシンほどはなく、重心が高いので峠のコーナリングでは「よっこいしょ」という感じになりがちで、コーナリングは慣れるまでは少し怖いかも。そして年式が古い個体ばかりであるため、整備状況によっては故障することもありえます。そういう意味では設計が洗練され、機械的にも安心な新型モデルのほうがいい! というライダーもいるかもしれません。
ただし、最新モデルに比べればお手頃に、かつ自分で整備できる部分の多いゼルビスは、自分でメンテナンスを覚えるには非常にいい教材。そしてVTシリーズの中で熟成されたエンジンのフィーリング、独特のスタイリングはゼルビスならではのもの。超長距離を走るバイク便ライダーや、ロングツーリングを楽しむライダーには熱烈に愛されているモデルでもあります。
つまりゼルビスは、

・大容量タンク、ハーフカウル、余裕あるシートなど、すべてが疲労感の軽減につながるぞ
・ベテランライダーに愛される高信頼性のスポーティエンジン搭載だ
というバイクなのでした。
ラインナップの限られた250ccオンロードツアラーのジャンルですが、「免許をとったら北海道も九州も、とにかく遠くを走りたい!」というビギナーライダーには魅力的なカテゴリー。そんな気分でバイクを探す方にはぜひ、一度ゼルビスにまたがってみてほしいと思います。

発売当時は「マイナーバイク」だったゼルビスだが、その特性にほれ込んだライダーも沢山。バイクに何を求めるかは人それぞれながら、質実剛健なゼルビスの魅力がピタリとハマるライダーにとっては、無二の相棒になる。
1991年型ゼルビス250主要諸元
・全長×全幅×全高:2095×720×1160mm
・ホイールベース:1430mm
・シート高:770mm
・車重:172kg
・エジンン:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ 249cc
・最高出力:36PS/11500rpm
・最大トルク:2.6㎏-m/8500rpm
・燃料タンク容量:16.0L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/80-17、R=130/80-17
・当時価格:48万9000円
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2回不動車にして2回生き返らせて、現在は3回目の永眠中です。
近々復活に挑戦予定、メデタク2度有ることは3度あるになるか
悲しみの3度目の正直になるか、がんばろっと
この記事読んで決めました。
VTシリーズですが、カウル以外は割とVTR、CB400SFを軸に、互換(流用)が可能。
キャブのメンテナンスが気にならなければ、一度乗ってみてもよいと思う。