発表されるや注目を集めているカワサキ・Z650RS。先行するZ900RSに対して、パラレルツインの649ccエンジンを搭載したミドルクラスのマシンですが、やや小さく軽い車体スケールや、トルクフルなツインのエンジン特性はZ900RSとは一味違うモデルとして期待が持たれています。
現行車のカワサキツインとして人気なのはW800ですが、スポーツ指向ではないネオクラシック。ではZ650RSのエンジンもそんな乗り味重視のもの? というと、けしてそんなことは言えないことはカワサキの各ツインモデルを見れば一目瞭然。中型屈指のスポーツマシンであるニンジャ400やニンジャ650を筆頭に、過去にはGPZ400Sなどのミドルクラスのスポーツツインにこだわりを持ってリリースし続けてきています。
GPZ400S、EX-4……ミドルツインの隠れ名車
公開されているスペックによれば、Z650RSは総排気量649cc、DOHC4バルブ2気筒のエンジンを搭載。シート高は820mmとZ900RSと大差ないものの、187kgの車体重量は215kgのZ900RSよりも30kg近く軽量。このエンジンと車体のコンパクトさは、過去のミドルツインの名車のイメージとピッタリ重なります。そのルーツといえるツインの筆頭は、1986年発売のGPZ400Sでした。
GPZ400Sはその発売2年前に登場したGPZ900Rのダウンスケールモデル。しかしエンジンは「GPZ900Rのエンジンをカットした」とも言われる50PS/10500rpmの水冷パラレルツインを搭載。このことから「ハーフニンジャ」とも呼ばれていました。ほぼ同時期に発売された4気筒のGPZ400Rの影に隠れがちでしたが、逆に言えば同クラスのミドルスポーツモデルで並べてしまえるほど、カワサキはミドルツインに自信を持っていたともいえます。
名車の影に珍車あり。EN400/バルカン400のコンセプトは現代にこそ映えるか!?
扱いやすさと実用性から支持を受け続けたミドルツインですが、ここからは「おやおや?」という変わり種……EN400/バルカン400を紹介します。実は、GPZ400Sよりもデビューが1年早く、Z650RSの本当のご先祖といえる存在なのです。
アップハンドルにバックレストつき段付きシートといったシルエットこそ、映画『イージー☆ライダー』のキャプテンアメリカ号のような、クラシックなチョッパーデザインであるにもかかわらず、パラレルツインのDOHCである45PS/8500rpmのエンジンを搭載。足回りは剛性のあるキャストホイールで、スポーツエンジンをそのままチョッパーに乗せてしまった、という非常に個性的なスタイル。そしてこのエンジンを50PSに強化して搭載したのが後のGPZ400Sなのです。
ところが1980年代後半には、Vツインエンジン、低いシート、パワーよりも鼓動感を重視した本格的なクルーザーモデルが続々と登場し、スポーツエンジン・クルーザースタイルのいわゆる「ジャメリカン」は姿を消していきます。このような時代の逆境の中で登場したEN400/バルカン400は、1994年まで仕様を変更しながら生産が続いたものの、水冷Vツインエンジンのバルカンに交代して生産終了。しかしスポーツモデルのエンジンを搭載したクルーザー、というコンセプトは現代でも魅力的です。
最後に、カワサキツインの中でも珍車中の珍車・Z750ツインをご紹介します。1976年に登場したW1系の後継機にあたるモデルですが、DOHCヘッドの新設計エンジンを持ちZ1/Z2に準じるスタイルはまさにZ650RSの原点と言えるモデルでしょう。Z650RSのプロモーションムービーには空冷Z650との2ショットもあり、ザッパー(=Z650)の再来と言われていますが、本来ならZ750ツインの再来とも言えそうです。
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