現代のスクーターにつながるファミリーバイクというジャンルを切り開いたのが、ホンダが1976年に発売した「ロードパル」だ。女性をメインターゲットとしたこのロードパルは大ヒットモデルとなり、各メーカーが追従モデルを投入したことで「HY戦争」と呼ばれたバイク業界の激しい競争の引き金ともなった。

「ラッタッタ」の愛称で親しまれた、元祖ファミリーバイク

「ラッタッタ」という呼び名が、ファミリーバイク全体を指す言葉として使われていた時代がある。この「ラッタッタ」という言葉はロードパルのテレビCMで、当時世界的に人気のあったイタリア人俳優ソフィア・ローレンが「ラッタッタ」という掛け声と共に軽快にエンジンをかけるシーンに由来している。このCMの効果もあり、ロードパルは大ヒットし、他社からもヤマハのパッソルをはじめとしたロードパルを追従するモデルが次々に発売された。

女性へのミニバイクの需要を掘り起こした

ロードパルのターゲットは明確に女性であり、スカートのまま楽に乗り降りすることができるミニバイクとして開発された。フレームのメインチューブを低くすることで乗り降り性を良くし、ミッションは2速のオートマチックを採用していた。ホンダには実用車として不動の人気を誇っていたスーパーカブがあったが、乗り降りのしにくさなどから女性からは敬遠されていたのである。

また、スーパーカブのキックスターターも女性にとってはエンジンがかけにくく、その問題もロードパルは「タップスターター」という新兵器も用意した。このタップスターターはキックペダルを数回踏むことでゼンマイを巻き、そのゼンマイの力を解放することでエンジンを始動するという、言わば「ゼンマイ式セルフスターター」であった。エンジンは分離給油方式の2ストローク単気筒で、49ccの排気量から2.2PS/5,500rpmの最高出力と、0.37kg-m/3,500rpmの最大トルクを発生した。このスペックは決して高性能では無かったが、日常的に買い物などで使用するにはちょうどよい設定だったと言えるだろう。

ターゲットの拡大を狙った派生モデル

ロードパルのヒットは新たなユーザーを開拓し、1977年に投入された「ロードパルL」では走行中に自動的にゼンマイを巻き上げ、ボタンを押すだけでエンジンを始動することができる「クイックスターター」を採用してより楽に運転できるようになった。さらに1978年には「パルホリデー」と「パルディン」という、若者をターゲットにした派生モデルが発売された。パルホリデーがロードパル同様に低いメインチューブを持ったフレームを採用していたのに対して、パルディンは細身で軽快なトライアングル構成のフレームを採用することでよりスポーティな印象に仕立てられていた。また、ライトとメーターを独立式とし、ライディングフォームの自由度が高いセミロングシートやブロックパターンのタイヤなどを採用することでスタイリッシュなレジャーバイクに仕上げられていた。


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「ロードパルL」から採用された「クイックスターター」を装備する、空冷2ストローク単気筒のパワーユニット。

ロードパル(1976)主要諸元

・全長×全幅×全高:1,545×600×985mm

・ホイールベース:1,050mm

・最低地上高:120mm

・車重:44kg

・エンジン:空冷2ストローク単気筒 49cc

・最高出力:2.2PS/5,500rpm

・最大トルク:0.37kg-m/3,500rpm

・燃料タンク容量:2.0L

・クラッチ形式:湿式自動遠心シュータイプ

・ブレーキ:F/R=ワイア式リーディングトレーリング

・タイヤ:F/R=2.00-14-4PR
・価格:5万9,800円(1976年)

パルディン(1978)主要諸元

・全長×全幅×全高:1,545×610×985mm

・ホイールベース:1,050mm

・最低地上高:120mm

・車重:52kg

・エンジン:空冷2ストローク単気筒 49cc

・最高出力:2.2PS/5,500rpm

・最大トルク:0.37kg-m/3,500rpm
・燃料タンク容量:2.5L

・クラッチ形式:湿式自動遠心シュータイプ

・タイヤ:F/R=2.00-14-4PR
・価格:7万9,000円(1978年)

元祖ファミリーバイク「ロードパル」と、派生モデル「パルディン」画像ギャラリー (14枚)

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