
ホンダの400cc並列4気筒シリーズの中でも空冷400Fは、別格の人気を誇っている。その元祖はCB400フォアで型式はCB400F。この血統は、1980~1990年代に数々のマンガや映画に登場したことから世代や時代を超えて愛される名車になったのだ。
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映画「ホットロード」のCBR400FとCB400Fはウエマツが実車に再現した
「ホットロード」は1986~1987年に別冊マーガレットに連載された少女マンガ。湘南を舞台にした暴走族少年と家族に問題を抱えた少女のラブストーリーは、現在でも名作に数えられる少女マンガの金字塔で、2014年には能年玲奈さん主演で映画化されている。
この作品で、暴走族「THE NIGHTS(ナイツ)」の特攻から後にリーダーになる春山が乗っていたのが写真のCBR400F。ビートのテールカウルにマフラーはモリワキフォーサイトでカスタムしている。これはマンガの原作通りの仕様となり、絶版車専門店「ウエマツ」が再現したものだ。また春山は、ナイツのリーダーになった際に前リーダーからCB400フォアも受け継いでおり、ウエマツはそれも製作。リーダーのCB400フォアはタンクに傷が入っており、そのディテールまで再現している。
▲映画に登場した春山のCBR400Fはマンガと同じ仕様でカスタムしている。ロケ地の湘南で撮影された写真には背景に江の島が写っている。
▲春山が受け継いだCB400フォア。純正にはないカラーリングで貴重なタンクにあえて傷をつけサビさせているのもリアルだ。
CB400フォアは、1974年末に発売。従来のCB350フォアの後継機として排気量を408ccに拡大し、750、550を含めた4気筒シリーズの末弟として俊敏さを売りにしたモデル。しかし、翌1975年に免許制度が改正され、わずか8ccの差で大型に分類されてしまったことから、1976年に中型免許対応の398cc仕様を発売した。大型免許が狭き門だった時代の最初の400cc並列4気筒モデルで、後に訪れる4気筒全盛時代の原点と言える存在だ。
1983年末に発売されたCBR400Fは、他社が水冷エンジンに移行しつつある中で空冷の限界を追求して前身のCBX400Fから10PSアップの58PSを達成していた。高性能を表すため車名に初めてCBRの名が付けられたことでも有名だ。当初はネイキッドスタイルで発売されたが、徐々にレプリカブームが加熱し、1984年にはハールカウルのエンデュランス、1985年にはフルカウルのF-3も発売された。
ちなみに、この2台の間に発売されたCBX400Fは、X=究極を意味するネーミングが与えられたモデルで1981年末に発売。400cc並列4気筒モデルはすでにカワサキのZ400FX、ヤマハXJ400が先行していたが、それら圧倒するためDOHC4バルブエンジンだけでなく、シャーシにも世界初のインボードディスクブレーキやリンク式リアサスペンションを投入し、爆発的なレースブームを巻き起こした。
▲CBX400Fが登場した名作はたくさんあるが画像がなく、こちらはWebike会員「圭チュンチュンさん」が昔乗っていたCBX400F。1982年の映画版「ハイティーン・ブギ」でマッチこと近藤真彦さんが乗っていたのが有名だ。
後にも先にもホンダの空冷400Fはこの3車種しかなく、それぞれ当時のトップモデルだったことがカリスマ的な人気の理由だ。免許制度改正後は、大多数のライダーにとっての最高峰は400ccであり、その中でも先進の4気筒で最高レベルの性能を発揮していたことが大きい。国内において1970年代がCB750フォアやZ2の時代だったとすると、1980年代前半はホンダ空冷400Fの時代だったと言えるだろう。
▲これは「爆音小僧」十六代頭のCB400フォアを講談社とウエマツがコラボして再現した車両。「特攻の拓」の続編「爆音伝説カブラギ」の主人公・鏑木阿丸のフォアで、拓ではマサトが乗っていたもの。マンガの世界では特にCB400フォアの存在感が大きい。
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