
スペイン・マラガで開催されたBMWのニューモデル海外試乗会で用意されたのが、R nineTの後継機にあたるR12 nineT。
パッと見の印象ではあまり変わっていないように見えるかもしれないが、フレームや外装などは違うため、まさにフルモデルチェンジ並み!
一体、どんな変貌を遂げたのか、モーターサイクルジャーナリストの鈴木大五郎さんによるレポートをお届けしよう。
R nineTがフルモデルチェンジされ、モデル名はR12 nineTに!
R12がクラシッククルーザーという位置づけに対し、R12 nineTはクラシックロードスターにあたる
伝統的BMWの空冷ボクサーエンジンを搭載したネイキッドモデル。R nineTは革新的なマシンを好むBMWにとってはかなり意外なモデルであった。電子制御をほとんど持たないシンプルなマシンは、過去を知らない多くのライダーにとっても逆に新鮮に映り人気を博した。そのR nineTが10年ぶりにフルモデルチェンジされ、モデル名もR12 nineTと変更された。
パッと見た印象は従来モデルから大きな変更はないものの、スタイリングの要となるガソリンタンクが変更されるだけでなく、細かいディティールにも手が加えられている。
もともとが同社のレジェンドモデルであるR90をモチーフとしただけあって、イメージを大きく変貌させることはご法度であるが、そのなかでよりライダーフレンドリーでフィット感の高いパッケージングとなっている。
フレームはツーピースのボルト留めだったものがワンピース構造となり、剛性も高められているという。また、リアショックのマウント方法が変更となり、乗り心地の向上とスポーツ性能が高められている。
存在感があり、良い意味でちょっと手強そうな雰囲気とは裏腹に、車体はコンパクトで足つき性も悪くない。
従来モデルよりタンクがショート化され、乗車位置が前方に移動。結果的にハンドル位置が手前に来ている効果も大きいだろう。
新型R12シリーズの目玉は新開発の「チューブラーブリッジスチールスペースフレーム」。フレームを一体化することで軽量化も実現
クラシックロードスターの名にふさわしいパワフルなエンジン
エンジンを始動。ブリッピングで車体がグラリと傾くトルクリアクションがこのマシンはまだまだ味わえる。
R nineTから基本的には変更されていないとのことであるが、排ガス等の対応に合わせてセットアップを変更。またエアークリーナーボックスも改良され、若干トルクフルになっているとのこと。
熟成されたフラットツインの出来栄えは、あらためて素晴らしいと感じさせるものである。環境問題は致し方ないものの、余計なことはして欲しくないほどの完成度の高さを誇っている。
低回転域からパワフルであるだけでなく、独特の鼓動感やサウンドがあり、数値にあらわれない気持ち良さが味わえるのがこのマシンの人気の秘密でもあるだろう。それでいて、開けていった際のパワフルさは、初めて乗った人であれば必ずや驚くであろう意外さである。
ライディングモードはレイン、ロード、ダイナミックの3種類。
エンジンのキャラクターだけでなく、トラクションコントロールの介入具合も適正化される。また、その選択方法も多くのモトラッドモデル同様の、ジョグダイアルを用いて簡単に設定できる方式となった。さらに、新型はアップ&ダウン対応のオートシフターがあらたに装備され、快適性も高められている。
重心の低さからくる安定感と安心感。大柄なマシンが多いBMWのラインナップのなかではコンパクトで手に余らない安心感がある。サスペンションのストローク量は短めで、これは本来快適性やスポーツ性はスポイルされる方向ではあるものの、これが手の内感にもつながっている。
その安心感にサポートされ、コーナーリングも忖度なしに楽しめる。とくにライディングポジションの変更によって、リヤのトラクションを感じるとともに、フロント周りのフィードバックも感じやすい設定だ。
ショックマウント方法の変更もあり、従来モデルよりもあきらかに乗り心地が良くなっているし、シートもスタイリングだけを考えた作りとはなっていないところはさすが旅バイクを作り慣れているBMWといったところだ。
その他、よく効くブレーキやそれをサポートするABS、トラクションコントロールなど、しっかりと現代の高水準なライダーアシスト機能が備わっている。
乗っているだけで豊かな時間が流れていく。これこそが、このマシンがもっとも大切にしているパートであるだろう。
伝統を受け継ぎつつ、末永く作って欲しいと願うばかりなのであった。
伝統的空冷フラットツインエンジンは基本的にR nineTから変更はないが、ユーロ5+への対応と同時にセットアップも変更。アップ&ダウン対応のオートシフターを標準装備
BMWモトラッドおなじみのジョグダイヤルを採用。グリップヒーターはもちろん標準装備される
フレーム変更によってリアショックのマウント方法が変更。やや突き上げ感が強かった従来型に対し、快適性と同時に運動性も向上。ユニット自体はザックス製で圧側ダンパーとプリロードが調整可能
キャストホイールが標準となるが、スタイリングにマッチしたスポークホイールもオプション設定される
アルミタンクは後端部が細く短いデザインでフィット感が向上。タンク下部からストレートにつながるラインがこだわりポイントだ。容量は2リットル減の16リットルとなる
スイングアームは片持ちタイプでシャフトドライブも内蔵。BMWモトラッド独自のパラレバーが採用され、リヤの安定感に貢献する
従来モデルよりヒップポイントは前よりとなり、ハンドルも近いコンパクトな設定
ライダーの身長は165cm。シート高は795ミリと低めであるが、シート幅がやや広めのため数値のイメージより足つきは良くないが、重心の低さで不安要素は少ない
R12 nineT欧州仕様主要諸元
・全長×全幅×全高:2130×870×─mm
・ホイールベース:1511mm
・シート高:795mm
・車重:220kg
・エンジン:空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ1170cc
・最高出力:80kW(109PS)/7000rpm
・最大トルク:115Nm(11.73kg-m)/6500rpm
・燃料タンク容量:16L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
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