
2021年5月、日本自動車研究所の高速周回路で、TRICK STAR(トリックスター)が「超マックススピード走行会」を開催した。全長5.5kmの周回路は、180km/hで2コーナーを立ち上がりストレートエンドでは余裕で最高速に達する国内随一のコース。ここでトリックスター代表の鶴田竜二氏と、一般ライダー代表としてWebikeスタッフの楠山が新型ハヤブサとH2SX SE+で比較テストを実施。自然吸気のエンジンとスーパーチャージャー付きではどう違うのか? 300km/h領域で見極めた。
目次
ターボもウワサされた新型ハヤブサは9PSダウンで復活、しかし速さは健在
「世界最速」のバイクと言えば1999年の初代ハヤブサのイメージが強い。速度リミッターが装備されていなかった2000年までの間にハヤブサを超えるモデルが現れなかったことから、最後の300km/hオーバーのモデルとしてライダーの記憶に残っているのだ。
しかし、現在は最高速は300km/h上限で横並び。しばらく進化を止めていたハヤブサを加速力で上回るモデルは多数あるのが現実となる。そんな時代に4年ぶりに国内復活を果たした新型ハヤブサは、最高出力を従来の197PSから9PSダウンの188PSで発売された。エンジンは、排気量アップなどせずに徹底的な部品の見直しでロスを削減しつつ、令和2年排出ガス規制に対応している。
新型ハヤブサは、最高出力を落とす一方で低回転から高回転に至る常用域のトルクが大幅にアップしており加速力が向上。また、高回転パワーが重要となる最高速は空力性能を向上させることなどで従来通りとしている。現在は300km/hを超えるまでのパワーは必要ないので、出力配分を規制対応や低中速に振るなど、従来とは異なる考え方で開発されているのだ。
また、いたずらにエンジンを変えなかった分で開発コストを抑え、その分を足回りのアップデートや電子制御の開発に充てている。これらの成果で税抜き200万円を切る価格を実現した。
▲1339ccという大鑑巨砲のハヤブサに対し、カワサキは2015年から998cc+スーパーチャージャーという選択をしH2は231PSを叩きだしている。写真右のH2SXシリーズはツアラー路線で200PSだ
▲新型ハヤブサのデザインコンセプトは「The Refined Beast (凶暴さを制す知性)」とし洗練度が増した。サイドカウルのメッキパーツからマフラーへつながるラインはスピードの流れを表現
▲効率と耐久性を向上させたエンジン。新設計の燃焼室、カムプロフィール、電子制御スロットル、 エキゾーストシステムにより、低中速域の出力とトルクを向上させながら排出ガス規制に対応
【鶴田竜二のインプレ】ハヤブサは従来型を凌駕、人車一体の空力は超高速でも切り返し自在
ハヤブサの1340ccの排気量からくるトルクフルな加速は健在でした。新型はそれがアップデートしていて、従来型に比べて1段高いギアでも同等くらいの加速をします。それくらい懐が深くなっているという印象を受けましたね。スペックだけでは、新型はさほどエンジン性能が上がってない印象を受けますが、乗ってみるとパワーアップしているようなフィーリングですし、図太いトルクで加速も素晴らしいですね。
動力性能だけではなくH2SXと比べるとウインドプロテクションがすごくいいんです。ハヤブサは人車一体化しやすいフォルムになっていて200km/h以上で車線変更しても空気抵抗をあまり受けずにきれいに狙ったラインをトレースできます。H2SXは風が体に当たりにくいのですが、車体とライダーの一体感で言えばハヤブサの方が上です。最高速を狙うなら空力はハヤブサですね。
H2SXは、動力性能はもう言うことないですね。コーナーから直線に向かって最高速に繋げるまでの加速感、吹け上がりはスーパーチャージャーと組み合わさって抜群の動力性能を発揮しています。そしてすごくいい乗り心地なんですよね。足回りはほどよく柔らかくラグジュアリーで、それでいてしっかりスポーツできるようなセミアクティブサスが機能を果たしています。
▲ヤングマシン誌などで高速周回路で何度もテストを繰り返した鶴田竜二氏。2019年にはボンネビルで電動バイクのワールドレコードを打ち立てている“ミスター最速”
自然吸気とスーパーチャージャー、どっちがいい?かというと…ハヤブサはもうトルクの塊。高回転までトルクで持って行ってしまう。それくらい余裕がありつつ豪快な加速感がある印象ですね。排気量が大きく、極低のトルク感、それこそ2000rpmからぐぐっと路面を蹴り出す力というのはとても力強い感じがしました。
H2SXは、1000ccですがスーパーチャージャーがついているので加速しようと思うとしっかりついてきます。トルクというより加速感、伸び感がレスポンスよく、車体を押しだす力が感じられました。エンジンの回転がスーパーチャージャーによって小気味よくどこからでもレスポンスよく付いていくる感じですね。どちらのバイクもパワーが感じられるのですが、キャラクターが全く違います。
▲「高速域で楽なのはH2SX。バンクを高速で走っていてももうこんなに出ているんだ?というくらい自分が思ったよりも速度が速かったりします。それでいて疲れないのがいいですね」(鶴田)
【Webike楠山のインプレ】H2SXのスーパーチャージャーの加速はちょっと強引なくらい鋭い
オーバルの立ち上がりから6速全開で加速しました。H2SXの方がウインドプロテクションが優れていて車体が安定している感じがしましたね。チラチラとメーターを見ながら299km/hになるんですけど、そこまで何も起きないですね。300km/hの世界が平和でした。恐らくアップライトなポジションに大きなスクリーンがついているおかげでしょう。
対してハヤブサはジェット機に乗ったような吸い込まれる加速感が怖くて、それでメーターを見ても280km/hくらい。もっと出てるかと思いきやこれは意外でしたね。
H2SXは1000ccのスーパースポーツに比べるともう一段加速が鋭い感じです。ちょっと強引なくらいの加速をする感じで結構早く300km/hに到達しました。ハヤブサもスタビリティはいいのですが、スポーツもツーリングもできて軽快に感じられたH2SXに印象が残った試乗でしたね。
▲新型ハヤブサを試乗するWebikeスタッフの楠山。初めての高速周回路でも「バンクを4速200km/h前後で抜け、直線を4-5-6速全開で300km/hまで加速しました」と満喫した様子
▲QSATRZの鶴田氏によるデータを解析すると新型ハヤブサの最高速は300.56km/h。0-100km/hは3.1秒(緑●44m地点)、0-400m加速は10.2秒(白●235.59km/h)だった。100㎞/hまでの極低加速が凄い
▲QSATRZの鶴田氏によるデータを解析するとH2SXの最高速は298.30km/h。0-100km/hは3.6秒(緑●57m地点)、0-400m加速は10.3秒(白●225.61km/h)だった。100㎞/h以降の伸びが鋭い
2021年型ハヤブサ主要諸元
・全長×全幅×全高:2180×735×1165mm
・ホイールベース:1480mm
・シート高:800mm
・車重:264kg
・エジンン:水冷4ストローク並列4筒DOHC4バルブ 1339cc
・最高出力:188PS/7000rpm
・最大トルク:15.2kgm/7000rpm
・燃料タンク容量:20L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=190/50ZR17
・価格:216万7000円
▲身長176cmのハヤブサのライディングポジション。ハンドルは従来型より12mm近づいたが高速性能を引き出す空力を狙っているので前傾気味だ
▲体重72kgで足着き性はご覧の通り。重心は低めだが運動性は高い
2020年型Ninja H2SX SE+主要諸元
・全長×全幅×全高:2135×775×1260mm
・ホイールベース:1480mm
・シート高:820mm
・車重:262kg
・エジンン:水冷4ストローク並列4筒DOHC4バルブ 998cc
・最高出力:200PS/11000rpm
・最大トルク:14.0kgm/9500rpm
・燃料タンク容量:19L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=190/55ZR17
・価格:244万2000円
▲身長176cmのH2SX SE+のライディングポジション。ハヤブサと比べるとツーリング性能を重視した楽なポジションでスクリーンも高い。これで300km/h出せるのはスーチャーのなせる技だろう
▲体重72kgの足着き性はご覧の通り。シート高は820mmとハヤブサよりも20mm高いが、排気量がひと回り小さいためか足着き性は変わらない
▲トリックスター主催の超マックススピード走行会は5月3日に開催されたものを記事化。すでに第2回が7月11日に開催済み。次回は年末頃を予定しているので気になる方は HP をチェック
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