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XSR700(688cc)
オーナー:バトライダーさん
ウェビックコミュニティに投稿されているMYバイクを毎週1台紹介するこのコーナー。今回紹介するモデルはヤマハ「XSR700」、オーナーは「バトライダー」さんです。
ヤマハが2016年に放ったスポーツヘリテイジXSR700は、当初海外のみでの販売で、日本での正規導入は2018年からでした。パワーユニットはストリートファイター・MT-07と基本設計を共有する688cc水冷並列2気筒で、不等間隔燃焼(クロスプレーン)270度クランクのCP2エンジン。トルクフルで様々なシチュエーションに噛みあい、フルカウルスポーツYZF-R7、マルチパーパスのテネレ700でも採用されているものです。多くの兄弟機の中で、XSR700のスタイリングは極めて特徴的。丸目ヘッドライト、シンプルなシングルメーターを採用しつつ、エンジンの主張が強いメカニカルさや、モダンなスポーツマシンらしいショートサイレンサーなど、単なるレトロデザインとはちょっと違う姿をしています。それでいて電子制御はほぼなく、ハイテク満載の最新技術マシンでもありません。
そんなXSR700を「上がりのバイク」にするべく乗り込まれている「バトライダー」さんは、「パラツーの270度クランクのエンジンを載せたミドルクラスで、そつのない利便性を求めるなら某社のNC750X一択でしょう」と、利便性にはやや難ありという印象。「不人気なのは仕方ないです」とまで言うほど、実用性の高さではMT-07にも軍配が上がるようです。
しかし、便利で快適、優しくて実用的なマシンではないからこそ、「純粋に乗ってて楽しい、そして面白いのがXSR700です。本当に「気負わず」乗れます。そういうのを求めてる人にはお奨めできます」という、不自由を愛するライダー的コメントもいただけました。3000文字以上で綴られたその魅力について、XSR700が気になっているライダーはぜひ読んでいただきたいインプレッションです。

峠のスポーツマシンとしても、街中のコミューターとしても楽しめるXSR700。ミドルスポーツの特徴と魅力をハッキリと表すマシンです。

レトロスタイルの外装に対し、メカニカルなエンジンのアンバランスはオーナーをして「この不完全さが、不思議な魅力を醸し出してます。さすがGKデザインさんの仕事」と評するもの。
<MYバイクコメントより>
■購入動機・用途・比較車種
還暦ジジイの「上がり」バイクとしての購入です。
実は2年前に、長年連れ添った'92 K100RS 4V Anniversaryから、'21 CRF250 Lに買い替えて、上がりのバイクにしようと思ってました --もう歳だしサンダル代わりの小さいのでいいやと--。でも、大っきいのばかり乗り継いできた私には小さく軽いCRFはONでもOFFでもどんな無茶な走り方しても怖くないので、かえって事故を起しそうで、また大きい方に戻ってきたという前振りがあります。
XSR700は経験者の〆の1台として、そして若い方の最初の大型としても秀逸です。何よりもに「気負わず」下駄として扱える点はCP2を搭載した車種の中ではピカイチだと思います。今回、購入比較対象となったMT07やTenere700も見て、試して素晴らしいなと思ったのですが、いかんせん立ち姿が美しすぎて候補から脱落していきました。
CP2搭載と言う点ではタイミング的にFantic Caballero 700も日本に入ってきたところだったのですが、お値段とアフターサポートを考えると、これじゃ下駄じゃなくSantoniの革靴になってしまうと思い、これも没です。
実はこの時点までXSR700は全く購入候補にも入らずで、今度はサウンドで魅了してくれるMT09と、どこか懐かしいスタイルを纏ったXSR900が候補として浮上してきました。どちらも試してみて素晴らしいと思ったのですが、やはりこれらも立ち姿が完成されすぎで落選です。
CP2のエンジンフィールは好きなのになぁと悶々としていると、今まで気にもとめていなかったXSR700という車種があることを思い出しました。で、よくよく観察してみると回顧主義を煽ったマーケティング戦略も、わざとらしい未完成なデザインも何故かいじらしく見えてきて「ま、コイツでいいか。」と購入に至った次第です。
■長所
腰上クラシカル、腰下メカニカルで、パーツだけを見ていけばどれもイケメンです。しかし、全体をみれば絶妙にアンバランスに外しているというか不完全。でもこの不完全さが、不思議な魅力を醸し出してます。さすがGKデザインさんの仕事。このセンスには脱帽です。
それに、都内でもまったくと言っていいほど他人と被らないあたりは、不人気車種の鏡だと高く評価できます(褒めてるんですよ)。
見た目の賛否はともかく、CP2は官能的なパワーユニットです。低回転で転がす時も、アクセルを開けて一気に加速させる時も、それなりの速度で巡航する時も、高速コーナーやタイトなコーナー、どんな乗り方、走り方をしてもこちらの要求に応えてくれるだけでなくとても官能的です。
188Kgという車重も絶妙で扱いやすい。ちょっと停める、押し引きするといった降りた後の事が下駄バイクでは重要です。特に私みたいに歳を食うと、筋トレしようが何をしようが年々衰えていくことは身をもって感じているので、軽さは正義と受け止めます。
835mmというシート高も、ヒラヒラ感の源であると考えれば許容できます。腰高でアップライトなポジションを活かし、肩の力を抜いてハンドルに力を入れず、背中を少し丸めて体幹で「後ろ乗り」を意識すればどんなコーナーも思いのままに駆け抜けられます。足は開かず、ニーグリップを外さず腰で曲がるというヤツです。乗り方が既にヘリテイジですね(笑)。こうして乗ってやればハンドリングはいたってニュートラルで、妙なクセは見せません。いわゆる「ハンドリングのYAMAHA」を堪能できます。ノーマルタイヤのロード5も、サスペンションも、相当な無茶をしなければ与えられた仕事をキッチリこなしてくれるので必要にして充分だと思います。
重いと言われるクラッチですが、細工のされた今どきのクラッチからすれば確かにこれもヘリテイジ仕様。でも、本当に重たいクラッチや切れないクラッチを経験してきた世代には「まぁ、こんなもんだろ」の範囲でしょう。
■短所
YAMAHAは趣味として「楽しむためのバイク」を作ることに重きを置くメーカーです。だから、そつなく何でもこなす実用性は最優先されていないと考えるのが吉です。
ご存知のように皆無だと言われる積載性はこれに起因するものです。見方によっては短所かも知れません。でも、段ボール箱やシートバッグをタンデムシートにくくりつけて走れる程度の懐の広さは備えています。荷かけフックすら用意されていませんがなんとかなります(笑)。
XSR700はあえて作り込まず、標準でシートレール後半をぶった切り仕様にできるようボルトオンにしたり、最初からセパハン用の抉りをタンクの両サイドに設けてたり、オーナーの自己表現を尊重しようという姿勢が見え隠れします。だから、積載のような実用性も適宜オーナーがニーズに応じて工夫してくれと言うことだと理解してやってください。
GKデザインさんの絶妙に凝って煮詰めたデフォルト・スタイルが気にくわないなら、徹底的にカスタマイズして楽しめというのがYAMAHAさんの意図でしょう。欧州におけるスクランブラー教やカフェレーサー教の勃興を見れば、それはよく分かります(あくまでも個人の感想です)。
なお、車載工具はトレーから外して袋にいれてしまえば、イニシャル調整用のフックレンチが入ってる箇所に奇麗に収まります(イニシャルは一度決めてしまえば、始終調整するものでもないので携行しない前程です)。ETC等をシート下に入れるのにトレーを外した場合はこの方がスマートに車載工具を持ち運べます。このスペースには標準のスパナやアーレンキーを、工具メーカーのちゃんとしたものに替えてもギリギリ収まります。
■これから買う人へのアドバイス
パラツーの270度クランクのエンジンを載せたミドルクラスで、そつのない利便性を求めるなら某社のNC750X一択でしょう。メットインだし優秀な風防もついてるし、ETCだって標準装備ですよ。高速使って日帰り東阪往復とか、23区内耐久お買い物ラリーとかする「必要」があるなら、私だって間違いなくNC750Xを選びます。お値段だって燃費だって懐にすきま風を吹き込ませない良心を備えてるんですから。
だけど、利便性や実用性だ追いかけても楽しくないんです。
単車なんて夏は暑い、冬は寒い、雨降れば濡れる、掃除は面倒、そもそもが不便な乗り物です。それでも不思議とその不便さを愛おしく思えるから、今もまだ古い単車にも人気があり、不便さを立派に継承した(笑)単車が新しく生まれてくる。もちろん不便さを軽減し、利便性を高めた製品も生まれ更に進化しながら支持も得ていますが、以外なほどに「不便」な製品の人気に陰りは見えません。
XSR700はETC2本体ですらシート下に収めるのに苦労します。XSR700のエンジンに火を入れられるのは、YAMAHAさんのこの潔さを認め、不便さを愛せる人なんだと思います。
XSR700が不人気なのは仕方ないです。姉妹のMT07は、純正ででキャリアやパニアシステムが用意されていますから。YAMAHA好きで、CP2好で実用性に重きを置くなら間違いなくMT07でしょう。同じフレームとエンジン脚回りとはいえ、初めからXSR700とは土俵が違います。
XSR700が気に入ったならシート高に躊躇せず跨がってみてください。食わず嫌いは勿体ないです。足つき性はセロー250と同等です。足を下ろした時のステップ位置も良いです。腰高な分、着座時にMT-07よりも下半身がリラックスでき、アップライトなポジションと共に生まれる乗車姿勢の余裕は評価に値します。
そして、どこか懐かしい姿を纏ってるので威圧感がないのも嬉しい点です。ちょっとそのあたり停めておいも目立たない。目立つのが苦手な人、普段着でさらりと乗りたい人にもお奨めです。
街中で下駄にするもよし、夜に紛れて首都高を回遊するもよし、高速で距離を稼いでその後ワインディングを走り込んで戻ってくる余裕すら与えてくれます。純粋に乗ってて楽しい、そして面白のがXSR700です。本当に「気負わず」乗れます。そういうのを求めてる人にはお奨めできます。
XSR700のユーザーレビューを確認

XSR700/YAMAHA Webikeユーザー評価(2024/02)
オーナー平均満足度3.95
評価人数:238人
新車平均価格:106.03万円
中古車平均価格:83.74万円
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