ホンダが2021年のブランニューモデルとして投入したGB350/S。このモデルが画期的なのは、「気持ちよさ」を全面に打ち出していること。開発の指標には数値化できる「性能」が掲げられることが常だが、GBは180度異なる方向性を追求しているのだ。

GB350/Sには気持ちよさを実現するために新たな技術が投入され、それは試乗してみてもはっきりと感じられるものだった。ここでは、そのインプレッションとメカニズムについて紹介したい。

気持ちいいバイクって一体どんなの? その答えがGB350/Sにあった

今回GB350に試乗するにあたって、開発責任者の山本堪大氏は「GB350は市街地での日常シーンから気持ちよさ全開です」と語っていた。かつてホンダの開発者がこのように気持ちよさをアピールすることはなかったのだが、実際GB350に乗ると、ドンピシャでこれを体現していた。

GB350の開発陣は、バイクの気持ちよさとは何かを突き詰めてエンジンの「鼓動」に行きついた。そして鼓動=心地よい振動+排気サウンドと定義し、パワーユニットの開発に落とし込んでいる。この狙いは、明確に感じられるほどに分かりやすくGB350/Sに具現化されており、乗れば誰でも味わいがすぐに感じられるはずだ。

発進の際に「ド、ド、ドド、ドドド」と加速していく時や、シフトアップした際に一度落ちた回転を上げていく時はもちろん、巡行しながらでも明確に鼓動が感じられ、気持ちいい。ずっと走っていたくなるバイクとはまさにこのことだな、という仕上がりなのだ。

また、ホンダが打ち出した鼓動の定義に排気サウンドがあるが、これも歯切れがよくトルクの立ち上がりと連動して耳に入ってくるので、心地よい振動+排気サウンド=鼓動としているのが、走っても納得できるのだ。


▲4月に発売されたGB350。空冷シングルの昔ながらの超シンプルなレイアウトを現代の技術で完成させたネオクラシックモデル。インドではハイネスCB350として一足先に発売され、3月末時点で1.8万台を売り上げている


▲7月15日に発売のGB350Sは、スポーティなライディングポジションや装備とした追加仕様。エンジンやフレームはスタンダードと共通だ

GB350/Sが凄いのは、0~100km/hまでずっと気持ちいいところ

そして感心したのが、GB350/Sはバイクに乗っている時間の全てで気持ちよさが感じられること。これはかなり重要なことで、巷で鼓動感が強いと言われているモデル、または鼓動感が強そうなモデルでも、実際に鼓動が気持ちよさに直結するエンジン回転域が、低速のわずかな領域にしかなかったりする場合もあるからだ。

開け始めのピンポイントでは気持ちいい鼓動が感じられるが、速度が乗ると微振動を発生させながら苦しそうに回るエンジンもあったりする。筆者の中ではSR400がこれにあたる(SR400の良さももちろんあるが後述)のだが、GB350は公道で走行する0~100km/hの速度域の全てで、気持ちよく走れるワイドレシオのミッションを採用している。

GB350にはタコメーターは存在せず、厳密に回転数をモニターしながら走行することはできない。そこでホンダに質問したところ、GB350/Sの5速100km/hは4000rpmだった。1500rpmくらいから実用域でトルクピークは3000rpm、4000rpmでも分厚いトルクと鼓動が感じられるおいしい領域なので、街乗りからツーリングまでずっと気持ちよさを味わいながら走ることができることが分かる。

また、レブリミットは6000rpmでシフトアップを引っ張るとすぐに上限に当たってしまうが、そこまででも不快な振動は発生しないので、高速道路での100km/hプラスアルファでの巡行も気持ちいいはずだ。さらに、アイドリング回転がかなり低く抑えられているので、信号待ちでも「ド、ド、ド」と心地いいサウンドに包んでくれる。


▲ショートストロークが当たり前の昨今にボア70mm×ストローク90.5mmのエンジンは異例と言える設計。3000rpmで3.0kg-mのトルク値はSR400を超えている


▲旨みがあれば雑味もあるものだが、ホンダは雑味のみを取り除くためメインシャフト同軸バランサーを開発。高周波の2次振動や1次振動を抑え込み爆発トルクだけを感じられるようにした

狙って作られたテイスト系モデルと、自然発生的なテイストモデルの違いとは

GB350のメカニズムを知ると気持ちいいとは具体的にこういうことだなと納得。これぞテクノロジーの力を見せつけられた形だ。だが、GB350と同じ方向性のテイスト系バイクは世の中に少なからず存在し、どれもが狙って作られた訳ではない。

例えばSR400の空冷シングルのベースとなったXT500は、パリダカールラリーで優勝したり前身の「ロードボンバー」が鈴鹿8耐に参戦したりと、テイストとは無縁の目的で開発されていたりする。また、SR400自体もライトウェイトスポーツを標榜して誕生した経緯を持っており、鼓動による気持ちよさを感じるために生み出されたモデルではないのだ。

GB350に試乗後にSR400に試乗する機会を得たが、これまで気にもしなかったバンドルにビリビリ伝わる2次振動に驚いた。だがそれは決して不快な訳ではなく、これもSR400の味わいなんだなと気付かされることにもなったのだ。1978年のデビューからほぼ変わらぬ姿で支持されてきたSR400にとってはこれが当たり前なのであり、43年前と同じ乗り味を受け継いでいることが価値と言えるのだ。

一方で、現代に新たに生み出されたGB350が気持ちよさを徹底的に研究し、GB350に落とし込むのも筆者は正解と考える。テクノロジーの力でより洗練させたピュアな鼓動の味わいを、新車で買えるようにしてくれたことに素直に感謝したい。


▲ファイナルエディションの一世代前の型に試乗。最終型と細かい違いはあるが基本は同じ。SR400ならではのテイストは体にしみ込んでおり、馴染みの店の定番メニューのような安心感がある

2021年型GB350/S主要諸元

・全長×全幅×全高:2180×800×1105mm/2175×800×1100
・ホイールベース:1440mm
・シート高:800mm
・車重:180kg/178kg
・エジンン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 348cc
・最高出力:20PS/5500rpm
・最大トルク:3.0kgm/3000rpm
・燃料タンク容量:15L
・変速機:5速リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=100/90-19、R=130/70-17/150/70R17
・価格:55万円/59万4000円

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