
取材協力:レッドバロン
一時はすべてのメーカーが取りそろえていた、400ccクラスの直列4気筒ネイキッド。このカテゴリーでヤマハから発売されていた代表モデルが「XJR400」だ。カワサキ・ゼファーからやや遅れて登場した空冷ネイキッドながら、スポーティーな特性で高い人気を集め、その後は装備や仕様をバージョンアップした「XJR400R」として2007年まで生産された息の長いモデルだ。今なお高い人気を誇る本機の初期型、その細部をチェックする機会を得たので紹介したい。
クラシカルなゼファーではなく、スポーティーなCB-1を範としたネイキッド
1989年にカワサキから発売された「ZEPHYR」によって、90年代初頭はネイキッドブーム真っ盛りとなった。それまでのスペックブームで重視されたレースシーン譲りの最新技術や、ハイスペックなパワーといった点以上に、クラシカルな味わいのあるモデルにも注目が集まるようになったのだ。そんな中、ヤマハが1993年に発売したのが「XJR400」だった。
XJR400[ヤマハ]1993年登場のネイキッドスポーツ。スポーツフィーリングを追求した独特のスタイルは多くのファンを生んだ。
そのネーミングのベースにある「XJ400」は、1980年発売のヤマハ400cc初の直列4気筒モデル。確かにスタイルは少し似ているが、XJR400はけしてレトロさを目指したモデルではなかった。開発時にはホンダ「CB-1」やスズキ「バンディット400」を参考にしたとされるが、いずれも最新技術を尽くし、セパレートハンドルも装備したスポーツネイキッド。XJR400もこれらを踏まえ、オイルクーラーが標準装備された、最高出力は53ps/11,000rpmを発揮する新設計エンジンを採用し、さらにあえて「トルクの谷」を感じられる味付けを加えた、高回転域を楽しめるスタイルとなっている。
そんなスポーツ志向はブレることなく、発売翌年にはオーリンズ製リアショックを特別装備する「XJR400S」が登場。さらにゼッケンプレートタイプのショートカウルを備えた「XJR400RII」、そしてオーリンズサスとブレンボ製キャリパーを標準装備する「XJR400R」も発売され、スタンダードのXJR400は1996年モデルを最後に「R」へ一本化された。やる気溢れる「R」の装備からもわかる通り、XJR400のスポーティーな味付けを強化する側面で進化を続けたのだった。その後は2007年まで生産が続き、長寿モデルとしても、またヤマハ空冷400の代表として、現在でも多くのファンに親しまれている。
新設計の直列4気筒エンジンは53PSを発揮。迫力あるスタイルは大人気を呼び、XJR400Rへ進化を遂げてゆく。
足付きやハンドリングはネイキッドらしくフレンドリー
今回取材したのは、XJR400の中でも最初期のスタンダード仕様。スポーツ性にこだわった設計とはいえ、跨ってみると足つきは良好で、アップライトなバーハンドルにも自然に腕が伸びる。シート高770mmという数値は、400cc直列4気筒の中でも最も有名な「CB400SF」の755mmに比べればやや高いが、不安定感はまったくない。車体重量も178kgと標準的で、引き起こしや取り回しにも気負わない、とてもフレンドリーなフィーリングを感じさせる。
モデルは身長170cm、体重65kg。シート高は770mmで、400ccネイキッドとしては標準的。足つきも良好だ。
53PS/11,000rpmを発揮するエンジン。ヤマハにはこれ以前にも空冷4気筒エンジンがあったが、XJRでは新設計となる。
装備面では、ハイパワーのエンジンを支えるスポーティーなものを揃える。フロントサスペンションにはインナーΦ41mmの大径フォークを採用し、リアショックはツインながらリザーバータンクつき。ホイールは前後17インチで、リアには当時クラス最大レベルのワイドタイヤを装備。ブレーキは前後ともにディスク、特にフロントは298mmの大径フローティングディスクをダブルで備え、異形2ポッドのキャリパーで高い制動性能を発揮する。リアブレーキキャリパーも下付きで、こちらもフローティング風だ。
さらに外装パーツはサイドカバーやチェーンガードまでアルミ製となっており、ボルトもしっかりクロムメッキされた高級感あふれる仕上げ。エキゾーストは4on1の集合スタイルをとり、2、3番のエキパイを連結し排気脈動を下げる試みが施されている。18Lの直線的なシルエットのタンクはニーグリップ部分をえぐりこまれ、レトロなティアドロップ型とは一線を画した造形。「このタンクがカッコイイ!」というファンも多い。
先述のとおり、XJR400はネイキッドブームの中でも追及したスポーティーな特性で大ヒット。そして1996年を最後に、よりスポーツ性を重視したXJR400Rに集約され、スタンダードモデルはラインナップを終了した。しかしその人気は衰えることなくXJR400Rは2007年まで販売が続き、今また注目が集まる400cc空冷ネイキッドの中で価値を高めている。
XJR400(1993)主要諸元
・全長×全幅×全高:2,075×745×1,080mm
・ホイールベース:1,435mm
・シート高:770mm
・車重:175kg
・エンジン:空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 399cc
・最高出力:53PS/11,000rpm
・最大トルク:3.5kg-m/9,500rpm
・燃料タンク容量:18.0L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/70-17、R=150/70-17
・価格:¥579,000(1993年)
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