
50ccエンジンを搭載した原付1種のバイクは、2025年11月までに排ガス規制をクリアしないと生産できなくなるが、対応が困難とされている。そこで、100~125ccエンジン搭載車をパワーダウンして新基準原付原付とする案が検討されている(12月21日に承認、下記リンク参照)のだ。
8.7PSのディオ110を3.3PSダウンさせると新基準原付になる
原付1種は2025年11月が期限の令和2年排ガス規制に現行50ccモデルが対応する可能性は低く、エンジン車が市場から消えてしまう状況だという。理由は、マフラー内部で排ガスを浄化するキャタライザーは300℃超で機能するが、50ccでは熱不足で規制クリアが難しいこと。
50ccでは温度上昇に約240秒かかる計算で、HC(炭化水素)の排出が規制値の100mgを超過してしまうのだ。対して、125ccクラスのエンジンは約70秒でキャタライザーが300℃超に達する。このメリットを活かしつつ最高出力を制御するのが新基準原付の方針だ。
新基準原付は最高出力を4kW(5.4PS)以下に制限するが、ピークパワーの制御なので排ガス規制をクリアしつつ加速性能は元のモデルとほぼ同等。ピークパワーが作用する最高速では新基準原付と原付2種で差がつくが、それは50ccと125ccと同様に免許区分で必要な違いとなる。
上記の想定を警察庁が実車で検証したのが最新動向で、既報の通りPCX、リード125、Vision110(ディオ110)、CB125R、C110(スーパーカブ110)を新基準原付仕様にして検証された。レポートはまだ開示されていないが(下記に開示されたレポートを一部追記)、公表された新基準原付のスペックを分析してみたい。
12月21日に警察庁による二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会が開示した報告書案の抜粋。実際に新基準原付に仕立てた車両の走行評価を経て結論が出された。
黄色の部分が既存の原付2種モデルをベースに最高出力を制御して新基準原付化したモデル5車。これを試験官が現行の原付と同様に安全かつ用意に乗ることができるかを確認した。
新基準原付の走行評価は軽量なVision110(ディオ110)がCB125Rと並ぶ難易度「同程度」に。3なので特に問題ないだろうが、スーパーカブ110やPCXの方が易しいとされた。
現行50ccモデルよりも魅力や性能はアップ!?
既存の原付2種を新基準原付にする際にまず注目したいのは車重。最高出力が一律で4kW(5.4PS)以下に制限されるので、軽いほど走りは良くなるはず。スクーターではVision110(ディオ110)が96kg、ミッション車ではC110(スーパーカブ110)が101kgでそれぞれ最軽量だ。
最大トルクは、新基準原付仕様のディオ110は7.1Nmで、原付2種版ディオ110の9.0Nmからマイナス1.9Nm。最高出力が原付2種版から60%に落とされているのに対して、トルクは78%を確保している。50ccのタクトに比べてパワー&トルクで大きく上回っているのだ。
スーパーカブ110は、新基準原付の最大トルクは7.0Nmで、原付2種版の8.8Nmからマイナス1.8Nm。最高出力が原付2種版から64%に落とされているのに対しトルクは79%を確保している。現行のスーパーカブ50に対して、新基準原付版がパワー&トルクで大きく上回っている。
一般用途のディオ110、ビジネス需要も高いスーパーカブ110が新基準原付として存続すれば、現行の50ccモデルが生産終了になっても穴埋めできるだけでなく商品魅力も高まるはずだ。
ディオ110 [HONDA] 走行評価に用意されたVision110は日本ではディオ110として販売されているモデル。国内の原付2種スクーターでは最も安価なのもメリット
タクトベーシック [HONDA] タクトのスペックは3.3kW/4.1Nmで、新基準原付版ディオ110が3.9kW/7.1Nmで上回る。ただし、車重は18kgタクトが軽量だ。
スーパーカブ110 [HONDA] 2022年にキャストホイールとディスクブレーキを装備した110。新基準原付版はスポークホイール時代の装備でコストダウンしてもいいだろう。
スーパーカブ50 [HONDA] 50のスペックは2.7kW/3.8Nmで、新基準原付版スーパーカブ110が3.8kW/7.0Nmで大きく上回る。車重は50が96kgで5kg差しかない。
グローバルモデルがコスト面で有利
性能面では新基準原付が現行の50ccモデルよりも動力性能が高いことが分かったが、原付1種として重要なのは価格面だろう。スクーターでは36万3000円のPCXや32万4500円のリード125を新基準原付にするのはあまり現実的ではない。その点、ディオ110の21万7800円は魅力だ。
ディオ110は欧州ではVision110として販売されており、生産国はベトナム。日本の50ccモデルは、年間2.5万台規模と言われているが、アジア生産モデルは50~200万台規模を見込めるので、グローバルモデルを新基準原付に仕立てるのは、コスト効果が高いだろう。
一方、スーパーカブ110は30万2500円で決して高額ではないが、日本の熊本製作所で生産されているので、ディオ110ほどのコスト効果は見込めない。新基準原付の本命はディオ110に絞られると予想されるが、ホンダ伝統の原付1種版カブは残したいはず。今後の展開に注目だ。
2021年型でフルモデルチェンジしたディオ110。新しいエンジンはロングストローク化しフレームも刷新。新たにスマートキーも採用するが、原2スクーター最安値の21万7800円に留める。
2022年型スーパーカブ110。ホンダの誇る世界一の販売数を誇る大衆車。今回のモデルチェンジで価格は28万500円から30万2500円と2万2000円アップした。
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新基準原付1種は当然白ナンバーですよね?
現状の50㏄原付と同様、白ナンバーの予定らしいです。