2023年11月下旬、BMWのR1300GSの試乗会が伊豆で開催された。
そんな耳よりニュースに飛びついたのが、愛車R1200GSでツーリングも林道も楽しんでいるウェビックプラスの中村。
今回のフルモデルチェンジで一体、GSはどこまで進化したのか?
最強旅バイクの実力を思う存分、楽しんできた!

フルモデルチェンジでもコンセプトは変わらず

 

今回のR1300GSは、2013年に水冷化されたR1200GSのデビューから約10年ぶりのフルモデルチェンジとなる。ボクサーエンジンがシフトカムになったR1250GSも圧倒的な存在感を放ち続け、アドベンチャーバイクの絶対王者として君臨し続けてきた。そんなGSがフルモデルチェンジを果たした。

新型R1300GSには「PACESETTER」(日本語訳:常に道を切り拓く存在)というキーワードが与えられ、今後のGSの未来を担う存在。2023年6月にはボクサーエンジンを搭載したGSが100万台を突破するなど、もはやBMWモトラッドにおいて「GSなくしてモトラッドはない」と言われるまでのモデルである。そう聞くと、今回のフルモデルチェンジにおける開発陣の気合も伝わってくる。

2023年11月下旬に開催された試乗会では、冒頭で最新GSのトピックスとして以下の3点が説明された。

1. コンパクト化されたGSの遺伝子
2. 軽量化
3. 複雑さの軽減

じつは、モデルチェンジのごとにGSは年々、重くなっていたという事実があったようだが、今回のモデルチェンジで軽量化&コンパクト化に舵を切ったというのだ。

ボクサーエンジン×テレレバー×パラレバーというGS独自の基本構成は変えずに改良を加え、走破性や快適性の向上を目指し、ひたすらダイエット! 結果、従来型(欧州モデル)からマイナス12㎏を達成している。

すごいのは軽量化だけではない。その副産物なのだろうか、コンパクト化も徹底的に推進された。GSなのでパッと見は大きく見えるが、またがってみると意外とコンパクトだ。

そのため、小柄の人でも乗りやすくなっており、今まで体格を理由にGSをあきらめていた人にも大きなチャンスと言えるだろう。BMWはこの点を明確に打ち出しており、多くの人に乗ってほしいというメッセージが伝わってくる。

3点の目の複雑さの軽減というのは、電動化が進んでもシンプルな操作を目指したというもの。スイッチ類が複雑になりがちなものだが、直観的に分かりやすくしているという。

今回のフルモデルチェンジで90%以上のパーツが変更を受け、まさに大刷新のGS。果たして、ライバルはここまで最新機能を投入できるのだろうか。差は広がるばかりだろう。

結論を先に言ってしまうと、最新GSは「誰にでも優しい史上最強の旅バイク」であることを強く感じさせてくれる1日となった。

一体、GSの何が変わったのか?

R1300GS

 

さて、今回のフルモデルチェンジのハイライトのほんの一部をお届けしよう。

【R1300GSの注目ポイント】
・90%以上のパーツが刷新
・コンパクトになった新型ボクサー・エンジンを搭載
・最高出力は従来型と比較して9PSアップ(136PS→145PS)
・大幅な軽量化を達成(欧州仕様は従来型249㎏→237㎏と12㎏軽量化)
・テレレバーとパラレバーが進化
・業界初の電子制御式ダイナミック・サスペンション(DSA)
・新デザインのLEDヘッドライトを採用
・ハンド・プロテクターに統合されたウィンカー

ツーリング仕様
・走行時と停車時に車高を自動調整する車高制御機能
・前後のレーダーセンサーを活用したライダー支援機能 ※アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や 衝突警報(FCW)、車線変更警報(SWW)など

変更点を挙げようとしても、今回のフルモデルチェンジは変更点だらけ。とても収まり切らないので主要なものに絞って記述してもこれだけある!

ほかにもリチウムイオンバッテリーやタイヤ空気圧センサーが採用された(いずれもSTDモデルでの投入)など、気になる点もあるが、それらは枝葉の部分。ツーリング仕様は電動スクリーンも採用されており、これも魅力的だ。

 

最新GSは3タイプ用意されており、モデルごとに多少設定が違うが、ツーリング仕様がもっとも装備が充実している。ツーリングライダーなら、迷わずツーリングモデルがいいのではないか。それぐらい快適で最新鋭の電子デバイスが搭載されている。

試乗インプレ

これは19インチのハンドリングではない!

 

R1300GSに乗り込んで、わずか30秒。

エンジンの鼓動感がどうのとか思う暇もなく、ホテルの敷地にあるひとつ目のゆるいカーブだった。愛車であるR1200GSと、ハンドリングがあきらかに違う・・・。最初は戸惑った。「ゴロン」ではなく、「シュッ」とタイトなのだ。R1200GSもR1300GSも同じフロント19インチ。でも、コイツはまるで17インチのような軽快感がある。

ほどなく郊外のワインディングに入る。この頃には当初の違和感は薄れ、むしろR1300GSの走りに慣れてきていた。フロント19インチというのは、17インチと比べて狙ったところをトレースしないというか、大回りしている感覚が多少あるのだが、コイツは17インチのようなクイックなハンドリングを楽しませてくれる。

これはビッグネイキッドなどオンロードバイクに乗る人からすれば、いたって普通に曲がってくれると捉えていい。

アドベンチャーバイクのフロントタイヤは21、19、17と、この3パターンが主流であるが、17インチを履いているモデルはアドベンチャーモデルでもロード寄り。一方、21インチはオフロード寄りでコーナー時のハンドリングはどこかもっさり感がある。そして、19はその中間。

昨今のビッグアドベンチャーはオンロード寄りのハンドリングがトレンドのような気がしていたが、GSは17インチを履いているような錯覚を覚えさせるハンドリングを実現していたというわけだ。

もともと、ワインディングマシンとしても優秀だったGSシリーズだったが、最新型はさらに上をいってくれた。

テレレバーが劇的進化! わだちが全然怖くない!

 

ハンドリングというか乗り味については、もうひとつ言いたいことがある。

BMWは、GSを含めRシリーズの重量車にはテレレバーという機構を採用しており、これが路面追従性を高めてくれていた。このテレレバーはテレスコピックフォークとは異なり、操舵と衝撃吸収という2つの役割を分担させている。今回、このテレレバーに改良が加わり、ただでさえ従来型も衝撃が少なく安定感が高かったのに、さらに快適性が向上している。

結果、道路のちょっとしたわだち(自分はこれが大嫌いだ!)を乗り上げても、衝撃が全然こない。積極的に荒れた路面を選んで走ってみても、あの「ガツン」とした衝撃はずいぶん控え目な印象だ。これはスゴイのひと言だった。

年々速くなるGS。今回のコイツも速いぞ!

最高出力も9PSアップされ、低・中速域では実用域でのトルクが大幅に向上しているという新型ボクサー。たしかに、まぎれもなくパワフルになっている。とくに、走行モードをレインからロード、そしてダイナミックに変えていくと、やっぱり強烈。ボクサーエンジンならではの逞しさは健在だった。今回の試乗会は悪路での低速コースや公道でのワインディングが中心だったため、高速道路での走行は試せていないが、きっと快適に違いない。

一方で気になったのが、あのボクサーならではの味わいがやや希薄化したかもしれないといったこと。自分がオヤジになったからこそ感じることかもしれないが、R1200GSが空冷から水冷にモデルチェンジしたとき、当初、自分は受け入れられなかった。「速すぎる」「牧歌的な雰囲気がない」と感じたものだ。水冷化され速すぎたR1200GSにも慣れ(結局、自分は水冷のコイツに乗っている)、R1250GSのシフトカムに乗った時はトルクフルで豊かなエンジンが「新しいけど懐かしい」みたいな印象だった。

今回は試乗時間が短かったせいもあり、こればかりは1000kmぐらい乗ってみないと分からないが、ボクサーエンジンならではの味わい深さは果たして・・・。

かつてないほどフレンドリー。これなら足が着く!

身長170cmの自分の場合、両足だとややツンツン状態ではあるが、腰をずらせば片足ベッタリになる。

これまでGSでは足着きでさほど困ったことはないが、ツーリングタイプの場合は自動車高調整機能が付いており、乗車時のシート高は820mm。発進時は標準の850mmになるという優れもの。エンジンをかけまたがっていると、自動で車高が高くなってくるのも実感できる。これは、すごい!

なお、この機能によりローダウンサスの設定は廃止となっている。

 

ここまで進化? ライダーアシスト機能がスゴイ!

主なライディングアシスト機能
SWW – レーンチェンジウォーニング (車線変更警告)
レーン・チェンジ・ウォーニングは、後方の交通状況を監視し、車線変更時の危機的状況をライダーに知らせる役割を担っている。

FCW – 前車衝突警告
FCW(フロント・コリジョン・ワーニング)は、走行中に起こる危機的状況を警告し、ライダーがそれを認識して対処するのをサポートする追突警告システム。この機能は追突警告とブレーキ・サポートに使用される。

ACC – アクティブクルーズコントロール
ACCは、クルーズ・コントロールと車間距離制御を組み合わせたシステムで、ライダーは好みの速度を設定し、先行車との距離を保つことができる。

今回、あらためて驚かされたのは新たなライダーアシスト機能だった。もちろん、これまでのモデルも時代の先端技術が搭載されているのがGSの常であったが、今回もやっぱりすごい。

今回の試乗会はグループで走行したが、ここでしっかり体験することができた。ほかのライダーに接近すると、あるいは接近されるとミラーの三角部分がオレンジ色に光り、注意を促してくれるのだ。これがけっこう目立つ。初めは驚いたが、これはすぐに慣れるだろう。なお、ミラーだけでなく、ディスプレイ上で表示もしてくれる。

ツーリングではどうしても集中力が切れる瞬間もあるため、これらの注意喚起はライダーにとって非常にありがたいものだろう。

今回は高速道路の走行ができなかったためDCC(ダイナミッククルーズコントロール)やACCを体験することができなかったが、これらもいつか試してみたい。

ディテール

ここでは、筆者・中村が気になったディテールを紹介。細かいところも変更が行われており、快適性はさらに向上している。

まとめ「GSの魅力って、なんだろう」

 

今回は変更点が非常に多く要所のみをピックアップした形となってしまったが、乗ってみて感じたことは「やっぱりGSはすごい!」ということ。

こんなに乗りやすくて、どこでも行けて、それでいて電脳化されているのだから、ツーリングライダーなら一度は乗ってみてほしい。GS乗りである自分も非常に気になっている。

今回試乗したツーリングモデルは電子制御が満載で、林道走行に重きを置く人以外にはこれが一番おすすめである。しかし、317万9000円~と価格も目を見張るものがある。

R1200GS&R1250GSを所有する乗換組にとってはパニアケースを別途用意する必要があるし、ウインカー内蔵ハンドガード、レーダーの搭載など、以前よりもひとコケ(立ちゴケ含む)の費用が高くなっていそうだ。試乗後「新型GS、いいじゃん」って思ったのは確かだが、この価格にひるんだのも事実である。

GSが作り上げた世界観

そこで、同じように感じた方にひとつだけ言っておきたいのは、「GSはただのバイクではない」ということだ。

GSは、ツーリングをただ快適にしてくれるだけではない。

GSに乗るまでオフロードに興味を持てなったが、GSは林道やキャンプなど自分の知らない新たな世界を教えてくれた。

これまで自分の中で「冒険」と呼べるようなツーリングをしたことがなかった。

しかし、GSという乗り物は、快適性能やアシスト機能が充実しているため「挑戦してみたい」という気持ちが生まれてくるのである。その点、自分はずいぶん助けられたと思う。そして、今回の軽量コンパクト化も恩恵があるはずだ。

また、BMWモトラッドとディーラーはGSイベントに積極的なので、これに参加すればGSの世界観をきっと体験できるはずだし、GS仲間もできるはずだ。

GSという製品が素晴らしいのはもちろんだが、GSが持つ世界観を楽しめる場も用意されることでGSというバイクは成り立っている。ライバルを突き放しているポイントであり、これこそがGSの強さなのだとつくづく思う。

自分のR1200GSは現在、走行距離が6万kmちょっと。まだまだ現役で走れるから、自分が乗り換えるのはまだまだ先になりそうである。

BMW・R1300GS(2024年型)主要諸元

エンジン:空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ1300㏄
最高出力:145PS/7750rpm
最大トルク:15.19kg-m/6500rpm
全長×全幅×全高:2212×1000×─mm
ホイールベース:1518mm
シート高:850mm
車重:237kg(日本国内国土交通省届出値、燃料100%時では250kg 。スポーツサスペンション装備:260kg、アダプティブビークルハイトコントロール装備:258kg)
燃料タンク容量:約19L(リザーブ容量:約4L)
ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
タイヤ:F=120/70 R19、R=170/60 R17

価格&タイプ

スタンダード仕様
WN2L :レーシングブルーメタリック/ ¥ 2,843,000
WDN2 :ブラックストームメタリック/ ¥ 2,866,000

GS Sport 仕様
WN2L :レーシングブルーメタリック/ ¥ 2,971,000

ツーリング仕様
WN4D:アウレリウス・グリーン・メタリック/ ¥ 3,368,000
WN2L :レーシングブルーメタリック/ ¥ 3,185,000
WDN2 :ブラックストームメタリック/ ¥ 3,179,000

※いずれのモデルもETC2.0車載器を標準装備

R1300GS写真ギャラリーへ (31枚)

 

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    GS好きが書いたGS賞賛記事。BMの提灯持ちみたいで面白くない。もっと中立的な人の辛口インプレが欲しい。

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