125ccクラス、原付二種のファンモデル、ギヤ付き車両というと、これまでホンダが頑張ってきた印象があるが、ここにきてヤマハも125ccファンモデルのジャンルに参戦! 今回は前回紹介したMT-125&XSR125の兄弟モデルとなるYZF-R125と、排気量155ccのYZF-R15をご紹介。ちなみにこのYZF-R15とYZF-R125は、カラーリングのバリエーションも一緒なので車名のロゴ以外、外見的な違いはほぼない。YZF-R25とYZF-R3のようにステップのヒールプレートで見分けるなんてことがしにくいぞ。
目次
維持費が安くてお得なYZF-R125と高速道路も走れちゃうYZF-R15
外見的な違いはほぼないYZF-R15とYZF-R125
YZF-R125
【全長/全幅/全高】 2030×725×1135mm
【ホイールベース】1325mm
【シート高】815mm
【車両重量】 141kg
【エンジン】水冷4ストローク単気筒124cc
【最高出力】15PS/10000rpm
【最大トルク】1.2kg-m/8000rpm
【燃料タンク容量】11L
【変速機】6段リターン
【ブレーキ】F=ディスク、R=ディスク
【タイヤ】F=100/80-17、R=140/70-17
【販売価格】517,000円(税込)
YZF-R15
【全長/全幅/全高】 1990×725×1135mm
【ホイールベース】1325mm
【シート高】815mm
【車両重量】 141kg
【エンジン】水冷4ストローク単気筒155cc
【最高出力】19PS/10000rpm
【最大トルク】1.4kg-m/7500rpm
【燃料タンク容量】11L
【変速機】6段リターン
【ブレーキ】F=ディスク、R=ディスク
【タイヤ】F=100/80-17、R=140/70-17
【販売価格】550,000円(税込)
YZF-R125とYZF-R15のポジション比較
(ライダー:身長172cm/体重75kg)
両車ともシート高は815mmで、当たり前だがまたがってみた印象も一緒。跨り部がしっかり絞られているおかげで足が真下に出しやすく、両足を付こうとすると踵までほぼべったりと足が付く。重さに関しても両車は141kgと一緒でサイドスタンドをはらうためにマシンを起こした時の重さも変わらない。上半身のポジションはYZF-Rシリーズらしく前傾がきつめで、しっかりスポーツライディングするポジションになっている。
YZF-R125
【シート高】815mm
YZF-R15
【シート高】815mm
サーキットデビューにぴったりのYZF-R125 -実走インプレッション-
走り出して感心するのは、やはり7000~7400回転あたりでカムシャフトの吸気バルブ駆動のプロフィールが切り替わるVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーター)の存在だ。この機構は低回転用と高回転用のカムプロフィールを使い分けることで、全域で淀みなく回る性能を求めた機構であるが、この効果が実によく感じられたのだ。
……とは言っても、7000~7400回転でカムが切り替わったからといってエンジン特性が極端に変わるのではなく、その境目は実にシームレスで走らせていて“今変わった!”なんてことを知覚することはない。
まず感じたのは、低速コーナーからの立ち上がりのよさで125ccにしてはトルクが力強いのだ。高回転域重視の125ccクラスにありがちな“スロットルを開けているのに回転が追いついてこない……”なんてことがなく、スロットルを開ければガッツリ加速する。しかも、それだけ低速側のトルクを確保しながら、ホームストレートでは高回転域まできっちり回る。
今回の試乗は千葉の茂原ツインサーキットの西コースで行ったのだが、このコースは全長700mほど、100mちょっとのホームストレートにタイトな低速コーナーを組み合わせたテクニカルなコースになっている。
そんな忙しないテクニカルコースであったのだが、YZF-R125は右へ左へコーナリングするのが非常に楽しく、サーキットデビューにちょうどいいマシンに仕上がっていることがよくわかった。というのも、VVAが入っているとはいえ侵入速度を間違えたり、ラインどりを失敗すれば、それがマシンの挙動にダイレクトに現れる。
排気量による誤魔化しが効かないというか、失速すれば速度回復に時間がかかるわけだが、そんな挙動がYZF-R125はとてもつかみやすい。
そんな“失敗”を反復しながらスムーズにマシンを走らせているだけで、自ずとスポーツライディングのイロハが身に付くというわけだ。そういう意味でYZF-R125はサーキットデビューにちょうどよく、しかもVVAのおかげで高回転側もきっちり伸びるから、バッチリコーナリングが決まれば自ずと気持ちよくなる。
これならスポーツ走行に慣れてきたところで、すぐマシンに飽きてしまうなんてこともないだろう。また、今回はサーキット試乗だけで、公道での試乗は行えていないのが残念だが、このVVAによるエンジンの全域性能をもってすれば、一般道でもストレスを感じることはないはずだ。
YZF-R15は十分高速道路を使ったツーリングができそうだ! -実走インプレッション-
基本的な車体構成はYZF-R125とほぼ同じYZF-R15。排気量が124ccで15psのYZF-R125に対し、YZF-R15は155ccで最高出力は19PS/10000rpm。最大トルクは1.4kg-m/7500rpmとなっている。
両車ともエンジンにはVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーター)を搭載しており、最高出力の発生回転数も1万回転で同じ。馬力に関してはYZF-R15の方が4馬力ほど高い19PSを発揮する。
たった4馬力ほどの違いだが、ミニサーキットを走らせてみるとその違いは歴然だった。ポジション、ブレーキなどの足回り系のパーツなどは一緒とのことで、セパレートハンドル由来の前輪荷重を使ったスポーティな走りができるのも同じなのだが、エンジン特性が全く別なのだ。
YZF-R15には、より大きくパワー重視の52丁のドリブンスプロケットを採用していることもあってだろう、コーナー脱出時などの低速トルクがより分厚くなっており、段違いに加速がいい。
またレッドゾーンは両車1万1000回転からと一緒なのだが、高速側の伸び側もYZF-R15の方が余裕があり、YZF-R125ではレブに当たってしまうような場面でYZF-R15にはまだ余裕がありしっかり加速できる。
まぁその分、パワーで誤魔化してしまうような走りもできてしまうが、それだけYZF-R15の方がパワフルということだろう。たった31ccの違いでここまで違いが出るとはビックリ。アシストスリッパークラッチの効き具合もほどよく、同条件で走ればYZF-R15の方が断然速く走れる印象を受けた。
YZF-R125とYZF-R15の違いで言えば、やはり大きいのが免許区分だろう。YZF-R125は原付二種クラスで免許は小型二輪。他にクルマや大きなバイクを持っていれば任意保険でファミリーバイク特約が使えて維持費も安い。一方、YZF-R15は250ccのバイクと同じ軽二輪で、免許は普通二輪となる。
31ccしか違わないのに維持費用が全然違うとなれば125ccのYZF-R125を選びたくなるものだが、YZF-R15には高速道路走行という大きなアドバンテージがある。今回は残念ながらサーキット走行のみであるが、YZF-R15を選べば高速道路を使って遠くへ出かけられるのだ。
筆者は、VVA機構を搭載した同型エンジンの155ccモデル(WR155R)に試乗したことがある。びっくりしたのは高速走行時の高回転側の伸びだ。
なんと155ccのエンジンであるにもかかわらず、“高速道路をなんとか走る”レベルのパワーではなく、120km/hまでしっかり出せるような高速側の伸びを持っていてびっくりしたのだ。さすがにツインの250ccクラスと一緒とは言えないものの、250cc空冷単気筒とならいい勝負になる感じの走りを155ccエンジンができたのだ。試乗したのはオフロードタイプのモデルだっただけに、このロードスポーツモデルのYZF-R15なら、さらなる快適な高速走行が行えることは間違いないだろう。
ディティール比較
フロントの足回りはブレーキシステムからタイヤまで両車共通。インナーチューブ径37㎜の倒立フロントフォークを装備している。
M字ダクトに吊り目の2眼ポジションランプを採用するなど、スーパースポーツのYZF-Rシリーズらしいスポーティなデザインを採用。
肉抜きされたトップブリッジにセパレートハンドルがレーシー。スクリーンはバブルスクリーンを採用している。メーターはマルチファンクションのLCDタイプ。
メーター内容は両車共通で、レッドゾーンが1万1千回転~なのも一緒。ラップタイプモードが表示されるサーキット走行用の“TRACK”モードと、“STREET”モードで表示が変えられ、トラクションコントロールシステムもON/OFFが可能。
燃料タンクは容量は11ℓ(レギュラー指定)で、WMTCモード値による燃費は、YZF-R125が49.4km/ℓで、YZF-R15が50.2km/ℓ。計算上の航続距離はそれぞれ543.4km、552.2kmと両車500kmを超える。
前後分割式のシートは、タンデムシートがキーで外れる。タンデムシート下には書類が入る程度だが、ライダーシートの下にはETCは収まりそうなスペースがある。タンデムシート下スペースの左右にあるプラスチック製の突起は取扱い説明書によればヘルメットホルダーとのことだ。
アルミ製リヤスイングアームは両車共通。ギヤ比は各ギヤ比、1次減速比までは一緒だが、ドリブンスプロケットの丁数が違い、YZF-R125は52丁、YZF-R15が48丁となっている。
両車ともリヤショックはリンク式のモノショックを採用。タイヤサイズはF=100/80-17、R=140/70-17で、タイヤは両車ともIRCのロードウィナー。
両車ともイグニッションには防犯対策のためのキーシャターを採用。しっかり肉抜きされたトップブリッジがスポーティ。
兄貴分のYZF-R25とYZF-R3は、ヒールガードの形状が違って見分けやすかったが、YZF-R15と YZF-R125に外見上の違いはほぼない。クイックシフターがオプションで用意されている。
サイレンサーの形状は両車共通で、ネイキッドモデルのMT-125とは、サイレンサーカバーやマフラーエンドの形状が異なる。またステップポジションがMT-125とは異なりバックステップ気味になっている。
ブレーキの仕様はリヤに関しては両車とも一緒。フロントがφ282mmディスクローターにバイブレ製片押し2ポットキャリパーで、リヤが片押し1ポットキャリパー。
スイッチボックスは両車共通。右スイッチボックスの“TRIP/INFO”ボタンでトラクションコントロールのON/OFFや、メーターの“TRACK”モード&“STREET”モードの切り替えが行える。“TRACK”モードではパッシング/ライトスイッチがラップタイマーのスタート/ストップボタンになる。グリップ形状&ハンドルエンド、レバーに違いはない。ブラックアウトされたレバーがなんともスポーティ。
ローレット加工が施されたスポーティなタンデムステップ。踵あてはクローズド形状で積載時の荷かけフックとしても使えそうだ。両車にタンデムステップ周りに違いはない。
両車ともテール周りの形状に違いはなく、ヘッドライトやブレーキ周りにLEDを使い、ウインカー&ナンバー灯にバルブを使うのも一緒だ。また両車とも前後のサスペンションに調整機構はないが、リヤショックにはリンク式を採用している。
【画像】YZF-R125とYZF-R15を比較試乗! (68枚)この記事にいいねする