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オフロードライダー待望のKTM2015年モデルがいよいよ登場!
年々進化の目覚ましい、KTMのオフロードモデル。モトクロス世界選手権でも輝かしい成績を残し、日本のメーカーを押しのけてシェアを大きく拡大している。
特に近年人気が高まってきたエンデューロレースの会場では、多くのユーザーがKTMのモデルを選んでいる。
それは毎年進化する幅広いラインナップ、特に軽量でトルクフルなエンデューロ向けの2サイクルモデルを未だにリリースしている数少ないメーカーだからであろう。
そこでモトレポートでは、KTMジャパン並びにKTM代理店によって開催された試乗会にウェビックスタッフが参加した際のインプレッションをご紹介させていただくことにする。試乗した台数が多いので、数回に分けてご紹介することをご了承いただきたい。
試乗会当日はあいにくの天候となったが、そのハードなコンディションだからこそ確かめられる性能を感じることができた。試乗コースは、近年盛り上がりを見せているエンデューロレースシリーズ「JNCC」の開催会場ともなる爺ヶ岳スキー場で、我々は主にエンデューロモデルを試乗させていただいた。
「これからエンデューロを始めよう」「次のステップとしてバイクを乗り換えたい」というライダーに参考になるようなインプレッションをお届けできればと思う。
エンデューロモデル
2015年のKTMエンデューロラインは、フルモデルチェンジではなく2014年モデルを更に熟成させた仕様となっている。カラーリングの変更だけではない細かな部分での改良は、更にマシンを良くしていこうという「READY TO RACE」の精神を力強く感じた。
外装はプラスチックに直接印刷する「イン・モールド製法」によって、ステッカーの剥がれや、洗車時の破れなどを防止しており、フレームの色も2015年モデルからEXCスタンダードモデル、SIXDAYSモデル両方ともにKTMオレンジカラーとなった。
適度なしなり感のあるクロモリ材がメインフレームに採用されており、アルミフレームの車輌とはまた違った乗り味となっている。
リアショックはWP製のPDSショックアブソーバーをリンクレスでマウント。リアタイヤから伝わる感触をダイレクトにライダーに伝え、リンク機構を障害物にヒットすることがない設計となっている。
フロントフォークは全車48mmのインナーチューブ径を持つWP製フォークで、高剛性のトリプルクランプにマウントされており、トリプルクランプはEXCスタンダードモデルは鋳造製、SIXDAYSモデルは鍛造削り出しが装着されている。
エンジンもキャブレターセッティングや、パワー特性の見直し、各部ガスケットやシール類の改良と、耐久性の向上や、軽量化もあわせて実施されている。世界では2割ほどだが、日本国内では7割のユーザーが選ぶEXC SIXDAYSモデル。スタンダードモデルから更にREADY TO RACEを目指し、実践的で機能的なパーツが多く投入されているのが特徴だ。
フロントフォークは更に上位モデルのフォークが採用され、マシンのホールド感の高い専用のキャメルシート、エンジンプロテクターやケースガード、フロントディスクガードといったガード類と、リアブレーキペダル破損防止のセーフティーワイヤーなど、そのままエンデューロレースに参加できる仕様だ。
そして2015年のSIXDAYSモデルは世界最大のエンデューロレースであるISDE(インターナショナル・シックス・デイズ・エンデューロ)の開催国であるアルゼンチンの国旗カラーをモチーフにしたオリジナルグラフィックが採用された。淡いブルーとオレンジカラーが非常に美しく、今までにないオフロードバイクのカラーを演出している。
KTM 125EXC(2サイクル) 新車・中古車をさがす
KTM 125EXC SIXDAYS(2サイクル) 新車・中古車をさがす
半乾燥重量で約94kgとKTMのエンデューロモデルとして最軽量の車両となる125EXC。
サイズもスマートであり、跨った瞬間からその軽さを感じることができる。
シート高は960mmと決して低くはないが、その軽さから安心感があり、女性でも取り回しやすい車両となっている。
始動はEXCモデルとしては唯一キックのみの設定だが、エンジンは転倒しても掛かりやすく、軽量な車体を目指した125ccのモデルとしてはデメリットに感じることはない。
キャブレターはKeihinのPWK36Sを採用し、ジェッティングパーツに困ることもないはずだ。
走り出してすぐに感じるのは低速での力強いトルク感だ。アイドリング付近でもエンストすることなく進み、開け始めからトルクで前に押し出すようなトラクションを感じることができる。そのまま開け続けるとさすがに低中低速域では、上位モデルほどのパワー感はなかったが、その上の回転数から2サイクルらしいパワーが弾け出てくる。
特に登りのセクションなど、高回転に入れてしまえば十分なパワー感で、グイグイと登っていくことができる。上位モデルと同様の太さを持つ48mmのフロントフォークは剛性感も高く、ラフなブレーキングでも、しっかりと作動してくれる安心感があり、軽量な車体も相まって不安を感じることなくハードな路面に突っ込んでいくことができる。そして一番軽さが際立つコーナリングは、タイトコーナーでクラッチを切って、立ち上がりで一気につないでいけば、非常に軽快に回ることができる。この軽さと、低速でのトルク感は、ウッズやテクニカルなロックセクション、下りの多いコースなどでは上位のモデルに比べて大きな武器になるはずだ。
2サイクルに乗りなれており、かつ適切にギアを選べるライダー、小柄でとにかく軽い車両が良いというライダーには良い選択肢ではないだろうか。
125EXCはSIXDAYSモデルのみが日本に導入されるが、チャンバーにはカーボンのパイププロテクター、樹脂製のエンジンプロテクターが装備されるなど、即レースに出られるほどの装備が施されたモデルに仕上がっている。とくに足回りの作動性のすばらしさはSIXDAYSモデルの特徴だ。
KTM 200EXC(2サイクル) 新車・中古車をさがす
むかし国内でエンデューロが盛んに行われていた頃に、各メーカーがラインナップしていた200ccという排気量の2サイクルトレール車。その当時とは比べ物にならない進化を見せている200EXCだが、ふと懐かしさを覚える排気量だろう。125EXCと同じ車格ながら、一回り大きな排気量のエンジンは、ごく低回転から中域までトルクフルで、軽さもあいまってフロントアップも容易だ。パワーの出方も自然で、ビギナーにとっても乗りこなしやすいモデルといえるだろう。半乾燥重量は99.5kgと125EXCと比べるとやや重くなっている。またSIXDAYSモデルの設定がないので、どちらにするか迷うユーザーも多いことだろう。
走り出す前にすばらしいと思ったのは、セルスターターの採用だ。125EXCにはその設定がないので、セル付きの2サイクルモデルとなると200EXCか、250EXCのどちらかとなる。
エンジンの性能はすばらしく、マディーのコースに出ても、そのパワーでぐいぐいと進んでいく。とくにアクセルの開け始めからの扱いやすさは125EXCよりも上で、タイトなコーナリングでもクラッチを当てずともアクセルを開けてクイックに曲がることが出来る。
サスペンションは、SIXDAYSモデルほどではないもののしっかりと減衰が効いており、不安感は皆無だ。この排気量になると高回転でのピーキーさは出てくるが、長い上りのセクションなど、心強いパワー感につながるはずだ。ある程度の回転数からでもしっかりと加速していけるトルク感は125と異なり、はっきりと乗りやすく感じ、初級から中級のライダーには間違いなくお勧めできる1台だろう。
タイヤサイズも250EXCよりも一回り小さい120/90-18インチで、125EXCと同サイズとなっている。140サイズよりも比較的リーズナブルになるので、レースユーザーにとっては嬉しい。当然レースだけでなくファンライドとしての相棒としても最適な1台となるのではないだろうか。
KTM 250EXC(2サイクル) 新車・中古車をさがす
KTM 250EXC SIXDAYS(2サイクル) 新車・中古車をさがす
国内KTMモデルとしては2サイクル最大排気量となる250EXC。
軽さとパワーを両立させ、リアタイヤも140とそのパワーをしっかりと受け止める足回りだ。ロングコーナーでアクセルを開けていくと、しっかりと加重を掛けても外へ外へとはじき出されるようなパワー感は、2サイクルならではの吹けあがりだ。
2015年モデルでの改良点も多く、エンジンは排気バルブの特性が更にトルク重視の特性となり、低回転は厚いトルクで、そのまま高回転まで一気にパワーが立ち上がる。バッテリーも更に小型化され、エンジンカバー類のガスケットも密閉性の高いものに見直されている。
250という排気量であるが、とにかく軽くパワフルでアクセルを開けながらクラッチを繋いでいくだけで、フロントが浮き上がる。
KTMの全モデルに共通するクロモリフレームはしなやかで、アルミフレームの国産モトクロッサーとは明らかに異なる「しなり感」があるのがわかる。ビギナーライダーにとってフレームがバイクの挙動を適度にいなしてくれることで疲労が少なく感じられるはずだ。
2サイクル250ccのパワーで登りは爽快の一言だが、高回転域でちょっとでもラフなアクセル操作をすれば、リアタイヤが前に出るようなパワーがでてくるので、ラフなアクセル操作は厳禁。
エンジンブレーキはほとんどないので、積極的にリアブレーキでコントロールする必要がある。
これぞ2サイクルエンデューロマシンだ。
KTM 250EXC-F(4サイクル) 新車・中古車をさがす
KTM 250EXC-F SIXDAYS(4サイクル) 新車・中古車をさがす
4サイクルのEXC-Fシリーズの中で、もっとも軽く、もっとも小さい排気量となる250EXC-F。
ケーヒン製のフューエルインジェクションを採用し、低回転から高回転までよどみないパワーを発揮するエンジンに仕上がっているマシンだ。
車体のサイズはコンパクトで自分の股下にタンクがあるようなポジションだ。これはEXCモデル全車に言えることであるが、足つきに関しては決してよいとはいえない。960mmのシート高となるので、一度跨って確かめてみるのが良いかもしれない。
走り始めると路面がマディであっても、するすると前に進むトラクションの良いエンジン特性で、モトクロッサーの250SX-Fとは異なりエンデューロ向きにセッティングされていることが分かる。高回転までしっかりとパワーが続き、唐突なパワーの出方もなく、実に扱いやすい。実は一番初心者向きな車輌は250EXC-Fかも知れないと思うほど懐の広いマシンだ。
古くから250ccのエンデューロモデルというと市販のトレール車を改造したモデルが多く走っていた時代があったが、エンデューロ専用のしっかりした足回りと軽量な車体、パンチがありつつもコントローラブルなエンジンといった確実な進化は、もはや遠回りせずにこのバイクを一番に選んでしまっていいと言えるだろう。きっとバイクと共に上達していけるはずだ。