スズキがジャパンモビリティショーに発表した「e choinori(イーチョイノリ)」。開発者によると、ガソリンエンジン版の元祖「チョイノリ」より重量が軽く、シンプルな変速機の導入も検討しているという! 気になる市販化や価格についても直撃してみた。

電動アシスト自転車のユニットを流用した電動チョイノリ

10月25日に開幕したジャパンモビリティショー(一般公開は同28日から)で、スズキが電動コミューターの参考出品車「eチョイノリ」を世界初披露した。

チョイノリは2003年に5万9800円という衝撃価格で発売されたスクーター。通勤通学や買い物など近距離の移動に機能を絞って、リヤサスすら持たない車体で価格破壊を実現した。時を越えて、その電動版として甦ったのが「eチョイノリ」だ。

 

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2003年にデビューしたチョイノリは、OHV2バルブの49cc空冷単気筒を搭載し、最高出力2.0psを発生。部品点数は30%、ボルトやナット類は50%削減され、当時の一般的なスクーターより40%もの軽量化を果たし、乾燥重量は39kgに過ぎなかった。

 

既出の情報によると、車体は旧チョイノリをベースにパナソニックサイクルテック製の電動アシスト自転車用モーターユニット+バッテリーを搭載。このシステムはジャパンモビリティショーで同時に初公開された電動モペッドの「e-po」と同様だ。

バッテリーはシート下に露出し、その下にモーターを搭載。そのため、シート下に収納スペースを確保しているのも特色だ。

 

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丸みを帯びてどことなくユーモラスなデザインは先代と同様。前後ブレーキは先代と同じくドラム。明かされたスペックは以下のみ。■全長1500mm 全幅600mm 全高1015mm シート高680mm タイヤサイズ前=80/90-10 後=80/90-10

 

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ヘッドライトやウインカーはLED化され、現代的な表情に。フロントカバーはホーンのスリットを「e」を変更にするなど微妙にリファインされている。タイヤは原付スクーターに標準採用される例が多い台湾メーカーDURO製D39。

 

先代の衝撃的なイメージとコンセプトを踏襲したかった

気になるポイントを開発者に聞いてみた。

 

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同時開発されたeチョイノリとe-poのワーキングチームを取りまとめたスズキ・技術企画グループの津島寿夫さんにお話を伺った。

 

――チョイノリを復活させた理由をお願いします。
「理由は色々あります。先代チョイノリが出た時のあの衝撃的なイメージと、 誰が見てもわかりやすいキャラクターを使わない手はないということです。
考え方の部分では、先代チョイノリは「小・少・軽・短・美」を目指して作ったモデルです。機能に特化し、最低限の機能を現実化しました。そのコンセプトが今回のeチョイノリと一緒だったので、踏襲しました」

――電動アシスト自転車のユニットを採用した理由は?
「バッテリーユニットとアタッチメントは全てパナソニック社製の電動アシスト自転車と全く一緒です。電動アシスト自転車は普及率が進んでいますが、中でもパナソニックはシェアがあります。ご家庭で電動アシスト自転車を持ってる方は、バッテリーも持ってらっしゃる。

そして軽量化を目指したかったのも理由です。電動アシスト自転車のバッテリーは簡単に取り外せて運搬できます。また、ご家庭で充電するサイクルが既に出来上がっていますよね。それをeチョイノリで流用できる所に大きなポイントがあります」

――車重は軽いのですか?
「従来のチョイノリからエンジン、マフラー、タンクなどを取り外して、今回のモーターとバッテリーの重さを比べたところ、断然こちらの方が軽かったです。なおかつ、ガソリンタンクの部分が収納スペースになるメリットもあります」

――どんなユーザーがターゲット?
「基本的に田舎のご年配の方をメインターゲットにしています。地方に行くと、まだツーサイクルのスクーターに乗っておられる方がかなりいます。まだまだ乗れるんですけど、近所のガソリンスタンドがどんどんなくなっている。

そういう方たちは毎日、郵便局行ったり、病院行ったりされているわけです。次に乗るものを考えた時に、どうしても『今まで乗っていた馴染みのあるバイクに乗っていきたい』という意見が非常に多かったのです。

電動化によって、お年寄りでも持てるぐらいの重さで、家でも充電ができる。これはメリットです。もちろん家から5~10km圏内で、通勤通学、買い物に使うことも可能です。

――5~10km圏内が一つの割り切ったポイント?
「そういうことをテーマにしないと、機能的に割り切れないところがいっぱい出てきます。すると、どんどん高い製品になってしまうので、割り切っています。それがまさにチョイノリのコンセプトと同じだったのです」

 

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バッテリーはシート外側のこの位置に。先代と同様、ステップボードはフラットで広く、居住性が高い。

 

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パナソニック製の電動アシスト自転車用モーターをバッテリー真下に配置。駆動方式はチェーンドライブだ。

 

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収納スペースは底面にくぼみがあり、半キャップヘルメット程度は収納できる。バッテリーで積載性が確保しにくい電動コミューターで、こうしたスペースはありがたい。

 

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テールライトとリヤウインカーも新作のLED。シートと車体側にロック用と思われる穴が設置されている。これはチョイノリになかった装備だ。

 

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スズキブースに展示されていたバッテリーの活用例。USB端子の別売オプションで使えばスマホなどの充電も可能だ。

 

変速機で動力性能をアップできるようジャトコと研究中

――原付一種は上限30km/hですが、電動アシスト自転車のユニットを原付一種スクーターに使用して、動力性能は確保できるものなのですか?
「そのレベルの性能は当然目指しております。もちろん最高速を狙おうとすると中低速落ちたり、坂を上らなくなる問題が出てきます。そこでジャトコさん(注・自動車用CVTで世界トップシェアメーカー)とリヤホイールに装着できるトランスミッションを考えております。それはeチョイノリのコンセプトにマッチした廉価でシンプルな構造を目指しています」

――トランスミッションはやはりオートマですか? それともマニュアル?
「本当はお話したいんですけど、今お答えすることは難しいです」

――単純に電動アシスト自転車のユニットを載せるだけではなく、変速機で加速性能や登坂性能も確保していくということですね。では、車体に関して、チョイノリからの変更点は?
「基本的に多くはチョイノリと一緒です。灯火器は新しくなっていますが、イメージを変えたくなかったので、デザインはほぼ変えていないです」

――航続距離、現時点での価格や発売時期は?
「今は言える段階ではありません。ただ、基本的に全部頑張ってはいます。今の電動バイクは奢っていく方向に進んでいますが、初心に帰って、元々のチョイノリが目指した考え方を大事にしなきゃいけないと考えています」

 

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後輪にはJatco(ジャトコ)のマークが。展示車には変速機構が組み込まれておらずダミーのようだが、市販版ではここに搭載される?

 

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エンジン版チョイノリ初期型の距離計を省略したメーターを採用。文字盤には50km/hまで表示され、速度警告灯とウインカー用インジケーターランプがある。

 

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スロットルはエンジン版のワイヤー式ではなく電気式に変更。グリップ内側のみ捻ることができるタイプだ。

 

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左ハンドルにはリヤブレーキとウインカー、ホーンスイッチが。金属製ホルダーが昔懐かしい。

 

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身長177cm&体重63kgのライダーだと、さすがに車格はコンパクト。とはいえ自然な位置にハンドルがあり、ステップボード自体が低いため、ヒザの曲がりは緩やか。ハンドルの根元とヒザはギリギリ空間がある。シートの座面は十分広く、スポンジにも腰感があった。

 

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680mmの低いシート高とスリムな車体で、両足がベッタリ接地。取り回した印象も軽く、誰でも扱いやすいだろう。

 

[まとめ]ターゲットも装備も非常に具体的、市販化は期待大!

インタビューを終えて、かなり具体的に開発が進んでいる印象を受けた。「5~10km圏内に特化」「地方のお年寄り」「軽さを追求」などターゲットが明確で、展示車両も完成度が高く、市販化は現実味がある。

割り切ったコンセプトで、まだ普及が進んでいない電動バイク市場に再びチョイノリが旋風を巻き起こすか。市販化の続報に期待したい!

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    ミッションも自転車の内装3段で良いのでは

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