2023年8月に発売された、ホンダ初の一般ユーザー向けEVスクーター「EM1e:(イーエムワンイー)」。脱炭素の世界的な動きの中で、企業向けEVスクーターを以前から販売しているホンダが満を持して投入する新型モデルだ。「ガチャコ」による交換可能なバッテリーも話題を集めた。

とはいえ、今年の法改正による特定原付の規制緩和などによって、既に世間には電動モビリティが数多く走り出している。電動キックボードやペダル付きのモペッド、3輪車モデルなどそのスタイルも様々だ。そんな群雄割拠の中に現れたEM1e:が、どういったキャラクターなのか、使い勝手はどうなのか、実際に試乗してみた。

ホンダ発EV、29年目にして初の国内一般向けスクーター「EM1e:」

ホンダのEVスクーターの歴史をさかのぼると、1994年に発売された「CUV-ES」が市販第1号となるが、価格や性能は日常レベルで扱えるものではなく、ごく少数の販売で終わった。しかしホンダはEVスクーターの開発をやめてしまったわけではなく、2010年にはベンリィをベースとした「EV-neo」が登場。2018年には、初めて脱着充電が可能なバッテリー・モバイルパワーパックを搭載する「PCX-ELECTRIC」が発売された。現在では「BENLY e:」「GYRO e:」「GYRO CANOPY e:」がビジネスユース向けにラインナップ。ホンダはこれ以降も、2025年までに10種類以上のEVラインナップを登場させる計画を発表。さらに2040年代には完全なカーボンニュートラル達成を標榜している。「EM1e:」は現行EVの4車種目にして、初の一般ユーザー向けモデルとしてこの計画に加わったモデルなのだ。

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サイズ感はごく普通の「原付スクーター」そのもの。重心も低く引き起こしもラクラク

EM1e:の最高出力は1.7kWで、カテゴリーは原付一種クラス。インホイールモーターによる最高速度は45km/hとなり、車体重量は92kg、シート高は740mmと、スケール感は「ジョルノ」や「ダンク」と同じくらいで、「50cc」クラスの存在感そのまま。跨ってみても、足つきは両足べったりで引き起こしも軽々。もちろん押し歩きをしても、重い感覚はまったくない。「EVはバッテリーが重い」というイメージがあったのだが、これはすっかり裏切られた印象だ。

※筆者:身長165cm、体重50kg

走り出すと驚きの快適性!カウルのこすれまでも抑えられた静けさ

走行時には通常モードと、モーター出力を抑える「ECOMモード」の2種を選択可能だが、とりあえず通常モードを選択。メインスイッチは見慣れた物理的なキーだが、セルスターターの位置の始動スイッチを押すことで走り出せるようになる。このタイミングまでは、普通の原付に乗っているのと何も変わらない気分だったが、スルスルと加速を始めたフィーリングは明らかにガソリンエンジンのスクーターよりもパワフル。出足は50ccクラスを超えた感覚で、時速30kmに到達するまでの加速スピードも速い。これはEVならではの強力なトルクがもたらす恩恵だ(なんと90Nmを発揮。数値だけならアフリカツイン並み…もちろん、エンジンと特性が全く違うので比べても仕方ないが)。

私有地でさらに加速すると、最高速度は48~9km程度まで伸びた。少なくとも原付一種として、パワーや速度の不安感はまったくないといえる。そして面白いのは、「振動も音もほとんどない」という点。これについては試乗前に、開発メンバーから「特に静穏性にこだわり、こすれや振動もできる限り減少させた」ということを聞いていたが、ここまでなくなるものとは思わなかった。外装パーツがカタカタ触れ合ったり、足回りがゴトゴトと鳴ったり、サスペンションがきしんだり……といった、ありがちで当たり前の音が一切ないのだ。モーターは「ヒュイーッ」という高い作動音を出しているが、その音も非常に小さい。この感覚は電動アシスト自転車に近いのだが、しっかりした足回りは路面の凹凸も拾わないので、不快な揺れも感じない。まるで「前方へ動くイス」だ!

「ECOMモード」を選択すると、パワーが大きく制御され、速度は30km程度で頭打ちとなり、加速感もやや鈍る。しかしその分航続距離が大きく伸び、通常30~40km程度の走行距離は、最大53kmまで伸びるという。片道10キロ程度の道のりなら、なんら不安なく行って帰ってこれるだろう。またユーティリティとしてはUSB充電ソケット、シート下収納も備えるため、買い物や通勤通学での使い勝手は、従来の原付一種モデルと変わらないといえる。

この未来感、一度は体験してほしい! お得な補助金もあってハードルは高くない

原付一種並みのサイズながら、エンジン車には実現できない静穏性を獲得しているEM1 e:。「脱炭素」のスローガンに向けて用意されたエコマシンという雰囲気は全くなく、むしろより高度な快適性を追求した新たなモビリティといえる楽しいモデルだった。既に海外メーカー製等、多数のEVモデルが身近に出現してきているが、この高品質感は、今までの技術の蓄積を発揮しているホンダならではのものだろう。EVバイク未体験というライダーにも、ぜひ一度は触れてみてほしい! この完成度を見ると、よりパワフルで使い勝手のいい原付二種、小型二輪モデルの発売も楽しみになるが、EM1 e:の原付二種化の計画はないということで、モビリティショー2023にも登場した新モデルにも期待したくなった。

さらに注目したいのは価格面。EM1 e:は車体15万6200円、バッテリーと充電器をすべて含めると29万9200円で販売されている。この価格だと原付一種クラスでは割とお高い。しかし国のCEV補助金、東京都はさらに補助金を用意しているため、実質価格はかなり下がる(東京都ではトータル約5万9000円が補助される!)。補助金はタイミングにより変動や条件もあるが、新車購入時の強力な助けになるのは間違いない。EVデビューの第一歩としては、かなりおススメできそうだ。

EM1 e:のディテールと装備

EM1 e:(2023)主要諸元

・全長×全幅×全高:1795×680×1080mm
・ホイールベース:1300mm
・シート高:740mm
・車重:92kg
・原動機:交流同期電動機 0.58kW
・最高出力:1.7kW(2.3PS)/540rpm
・最大トルク:90Nm(9.2kg-m)/25rpm
・一充電走行距離:53.0km
・ブレーキ:F=ディスク、R=リーディングトレーディング
・タイヤ:F=90/90-12 44J、R=100/90-10 56J
・価格:29万9200円

【画像】もはや原付じゃない!?ホンダEM1e:はまったく新しい乗り味の「未来バイク」画像ギャラリー (27枚)

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