普通二輪免許で乗れる現行唯一のハーレーダビッドソン「X350」と、その上級版「X500」が、ついに10月20日から発売された。X350が69万9800円、X500は83万9800円という戦略価格で発表された本作は、多くのライダーが気になるところ。早速試乗したところ、スムーズかつ迫力あるエンジンが楽しく、オールマイティに使えるモデルだった。その一方でハーレーらしさは息づいているのかチェックしてみた!

X350は自然なライポジで、スポーツネイキッドの雰囲気

Vツインでもない、空冷でもない、排気量も小さい、クルーザーでもない……。いわゆる「ハーレーらしさ」とは相反する新型がX350とX500だ。

一体どんな乗り味なのか? 筆者もプレス向け試乗会に興味津々で参加してきた。結論から言えば、2台ともエントリーライダー向けのオールマイティさを備えつつ、濃淡の差はあれど「ハーレーらしさ」を感じ取れるモデルだったのだ。

まず試乗したのはX350。同モデルは、ハーレーダビッドソンジャパンが正規販売するハーレーとしては歴代最小排気量となる。'60年代にハーレーはイタリアのアエルマッキをベースにした100cc以下のモデルを多数投入したが、これを除けば近代ハーレーでは異色のアンダー400なのだ。

そしてX350とX500は、中国の浙江QJモータースが所有するイタリアンブランド=ベネリとのコラボで生まれた。X350のベース車はスポーツネイキッドの302Sだが、フラットトラッカーのXR750をイメージした専用外装を新設計。水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジンは、302Sのボア×ストローク65×45.2mmに対し、70.5×45.2mmにボアアップして排気量を300→353cとしている。

 

フラットトラッカースタイルのX350。ラジエター脇にはウイングレット状のカバーも備える。灯火類は全てLEDだ。前後ホイールは17インチで、φ41mm倒立フォークと対向4ポットキャリパー+ダブルディスクを組み合わせる。

 

実車はコンパクトながら小さすぎず、まさにミドルサイズらしい印象。またがるとハンドルが自然な位置にあり、上体が起きる。一方、ステップはややバック気味で膝の曲がりはきつく、スポーティな印象。車体はそれなりにズシリとした重量感があるものの、取り回しはしやすい。

そしてシートが特徴的。座面が広いため、足を降ろすとシートのカドが立ち、太ももが広がる。足着き性を若干スポイルしているものの、ステップに足を載せればお尻をしっかりサポートしてくれる。

 

写真は同行した170cm&体重65kgのライダー。ハンドルは肩幅より拳1個分ほど外側に開いてヘソ程度の高さがあり、上体が自然に起きる。一方、ステップはバック気味で、ヒザがかなり曲がる。

 

シート高777mm、車重180kgで、車格は標準的なネイキッドスポーツの印象だ。シート幅があり、足が広がるものの、両足がベッタリ接地する。なお165cm&54kgのライダーの場合、爪先立ちとなるが、両足とも着く。

 

X350の並列ツインはフラットで太い低中速トルクが美味

いざ走り出すと、パワフルかつスムーズに伸びるフィーリングに驚いた。極低速からよく粘り、ズオオッーという野太い吸気音とともにフラットに加速していく。3000rpmからトルクが増して、6000rpm前後でさらにもう一伸びし、1万rpm前後まで回る。

 

エンジンはDOHC4バルブ353cc水冷パラツイン。2つのピストンが同時に燃焼する360度クランクで、十分なトルクを持ちながら、クセがなく扱いやすい。

 

最高出力36hp/9500rpm 最大トルク3.16kg-m/7000rpmで、ともにやや発生回転数が低めだ。ちなみに同じく並列ツインで320ccのMT-03は42ps10750rpm、3.1kg-m9000rpm。

 

トルクの出方に唐突感がないので、ラフなスロットルワークもある程度許容してくれる。ビギナーでも扱いやすく、長時間乗っていても疲れにくいだろう。

ワイルドなサウンドも大いに影響していると思うのだが、排気量以上のトルク感だ。それでいてフラットな出力特性なので不安なく、心地よく加速できて楽しい。また、シートが腰下を包むような形状なので、加速でお尻が後ろにズレることもない。

――ハーレーと言えば、Vツインの鼓動感が魅力の一つだが、このX350にはほぼ鼓動感がない。ただし、このクラスでは珍しい360度クランク並列ツインには、単気筒を二つ並べたようなシンプルな味わいがあり、実に昔ながらのバイクらしい。

MT-03やZ400ら同排気量帯の並列ツイン勢は位相180度クランクを採用し、高回転型のシャープな吹け上がりが特色。刺激的なライバルに対し、X350は実に落ち着いた特性を持つ。こうしたクラシカルな味わいと迫力あるサウンドも、私は「ハーレーらしさ」の一つであると思う。X350は360度クランク並列ツインでは苦手な高回転域もしっかりカバーする現代的な要素を持ちながら、しっかり「らしさ」を感じ取ることができたのだ。

 

自然で安定した走り、街乗りからツーリングまでこなす

ハンドリングも素直で安心感が高い。

重心位置が低めで、前後輪が一体になって曲がるネイキッドらしい走りだ。フロントタイヤは120/70ZR17、リヤは160/60ZR17で、KTM790デュークの純正タイヤにも採用されるマキシス製スーパーマックスSTを標準採用する。

やや手応えのあるゴロリとした安定感を持ち、スパッと軽快に曲がる感覚は薄いものの、安心してコーナリングできる。

ブレーキも利くが、初期では唐突感がないので、これも安心感につながる。コーナーの立ち上がりではフラットかつ豪快なトルク特性によって、ストレスなくスロットルを開けられるのも安心感に一役買っている。

 

無理は禁物だが、バンク角も十分確保されている。右46.4度、左43.7度までOKで、ハーレーにありがちなステップをすぐ擦るなんてことはまずない。

 

前後サスはよく動き、路面の衝撃は若干拾うものの、乗り心地は悪くない。さらに前後とも調整可能で、フロントは伸側減衰力、リヤは伸側とイニシャルをアジャストできる。自分でセッティングを見つけるのもいいだろう。

100km/h巡航では6速6400rpm前後となり、エンジンに余裕がある。車体もゆったりと安定感があり、高速クルージングも苦にならない。

ハンドリングが穏やかなタイプなので、さすがに攻めた走りは得意ではないものの、ツーリングの途中で走るワインディングなどでは、分厚いトルクと安定感のあるハンドリングで十分楽しめるはず。

街乗りからツーリングをメインに、峠道まで楽しい。X350は気軽に走り出せて、オールマイティに活躍できる1台だ。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    X500のバックショット、フェンダー歪んでますやん…。
    プレス向けでこのデキではもうダメだ。
    中国製はやっぱりね、っていう宣伝として伝わったわ…。

  2. 匿名 より:

    あーぁ、中国製って言っちゃったよ…

  3. 匿名 より:

    ハーレー自体、一部を除きタイ製造ですからね。
    タイ製造と中国製造、どちらが良いのやら…

  4. 匿名 より:

    ベネリ302SとハーレーX350を比較してみると、フレーム・足回りがほぼ同じパーツで出来とる!
    中華バイクじゃ、しばらくしたら中古車がたくさん出回る事であろう。
    ハーレーブランドを安売りしちゃダメよ。

  5. 大北美紀 より:

    >2つのピストンが同時に燃焼する360度クランクで
    ええ…😅

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