
ベテランライダーの中には、「コロナ禍なってから二輪中古車の価格が高騰中」なんて話題に触れたことがある人も多いはず。では、新型コロナウィルスによる日常生活への影響がだいぶ落ち着いてきた現在、バイクの中古車事情はどのようになっているのでしょうか? 年間約1.6万台のユーザー買い取り査定に携わってきたカチエックスに、最新の動向を教えてもらいました!
目次
そもそもカチエックス(KATIX)とは?
「カチエックス」は、一般バイクユーザーが愛車を売りたいときに、業者との面倒なやり取りやユーザー側の手数料支払いナシで、超簡単に査定と売却決定までの作業ができるインターネットサービス。「バイク比較.com」も運営しているインターファーム社が、「アップス」として2018年にスタートし、2023年4月には「カチエックス」に名称変更されました。
従来のネット一括査定システムだと、申し込みと同時に多数の業者から電話ラッシュが……なんてことも。これに対してカチエックスは、ユーザーがその業者が提示した金額で愛車を売ることを決定するまで、業者とのやり取りは一切必要なく、大きなメリットのひとつとなっています。
査定してもらうときは、所有者の情報と車名や年式や走行距離をはじめとする愛車の現状データを入力して、最低6点の写真をアップロードするだけでOK。情報が届いたカチエックスが、所有者の個人情報が業者にわからない状態で出品し、この情報をもとに複数業者が入札します。
そして最短で翌日には、入札の最高額をカチエックスがユーザーに通知。査定金額交渉などを経てユーザーが売却に納得できた場合、カチエックスが売買契約を代行し、業者が愛車を引き取り、カチエックスが売却金額を入金してくれます。
カチエックスでは、写真や登録情報と現車に差異がなかった場合、引き取り時の減額は一切禁止。査定額に納得できなかった場合、売買契約締結前ならキャンセル料などは不要です。もちろん、引き取り時の陸送費用などもユーザー負担はナシ。つまり、通常の流れならユーザーは完全手数料無料で利用でき、しかもほとんどのやり取りをネット上でできます!
二輪中古車の価格はコロナで上がった!

グラフはカチエックスの落札データをもとに編集部で作成
アップスとして運営されていた時代から、年間約1.6万台規模でユーザーの買い取り査定に携わってきたカチエックス。そんな“二輪中古車相場のプロ”に、ここ最近の日本における二輪中古車市況について教えてもらいました。
「まず基本的な流れとして、コロナ禍に突入したことで、部品調達や物流の遅延、工場の稼働休止などが発生し、新車の供給が遅延またはストップ。一方でバイクは、密を避けながら遊べる趣味として注目されるようになりました。これらにより中古車ニーズが高まり、二輪中古車の販売相場が全体的に高騰。車種によっては新車よりも中古車のほうが高いなんていう状態が1~2年続き、需要増加により買い取り相場も上昇していました」
カチエックスによると、このような状態がとくに顕著だったのは、コロナ禍に入った2020年の夏ごろから、2022年の夏ごろにかけて。中古車は、同じ車種でも1台ずつ状態が異なるため、年ごとの価格差を完全比較することは難しいのですが、例えばカチエックスの全体買い取り相場推移を見てみると、コロナ禍に入って少し経った2020年6月から上昇基調が顕著となり、2021年9月に平均額がピークに。冬に入ってやや下落しますが、2022年も6~10月にかけて上昇傾向にありました。
試しに排気量750cc超の大型クラスも見てみると、サービスが本格始動して間もない2019年前半は成約件数がまだ少なかったことから、たまたま高額買い取りの車両があった2019年4月にこれまでの最高値があるものの、有効なデータと考えられる2020年以降では、やはりコロナ禍に突入した2020年5月ごろから上昇傾向となり、2021年10月に最初のピークに。その後は一度落ち着き、2022年8月には2020年以降の最高値を記録しています。
これらのことから、二輪中古車の買い取り相場価格は、コロナ禍により上昇基調となり、2021年と2022年の夏ごろに山場を迎えていたことがわかります。

グラフはカチエックスの落札データをもとに編集部で作成
現在の中古車買い取り相場は高い? 安い?
これまでのデータを振り返って、「なんだよ、それなら2022年までの間に愛車を乗り替えておけばよかった!」と悔やんでいるユーザーもいるかも。しかしどんなに悔やんでも、過去には戻れません。それに、中古車買い取り相場が高騰していた時期は、新車の入手が難しく、買い取り相場が高かったということは、中古車も高かったということ。もうバイクを降りるとか、セカンドバイクを手放すとかならともかく、メインマシンを乗り替えるには、買い取り金額は理想的でも次期愛車の購入に障壁があったということでもあります。そもそも、いつまでも過去なんて振り返らず、現状に目を向けるほうが有益。そこで、現在の二輪中古車市況についても、カチエックスに教えてもらいました。
「弊社カスタマーサクセス部門などへのヒアリングをまとめると、過去3年間と比べて、2023年は、徐々に新車の供給が需要に追いついているようです。これにより、極端に高騰していた中古車相場もやや落ち着きを取り戻し、中古車買い取り相場もピーク時と比べて下落。とはいえ、コロナ禍よりも前と比べれば、依然として高値傾向です」
先ほどと同じカチエックスの全体買い取り相場推移を見てみると、2023年9月の平均額は、2022年や2021年の同月と比べたら下落していますが、コロナ禍だった2020年の同月比ではプラス。また、750cc超のクラスでも同様です。新車のスムーズな供給が望めるようになり、しかも中古車相場はまだ比較的高い現在は、カチエックスを活用して愛車を売却して新車に乗り替える絶好の機会かもしれません。
2023年になってもまるで落ち着いていない車種も!

カチエックスの落札データを使い2022年9月~11月と2023年6月~8月で比較して上昇率を算出。落札金額が上がっているもの=値崩れしない車種として、編集部がランキングを作成
これまで説明したように、全体の市況感としては、二輪中古車の買い取り相場価格は2023年になって下落傾向なのですが、そんな流れと逆らって、2023年に買い取り価格が高騰している車種もあります。
そこで今回は、2022年の全体買い取り相場推移でピークを記録した9月を含む2022年9~11月期と、最新データとなる2023年6~8月期を比較して、カチエックスでの平均買い取り価格の上昇率トップ5をマークした車種を、「なぜ人気なのか?」という編集部の推察とともに紹介します。今後もまだまだ上がるかもしれないし、すぐに落ち着いちゃうかもしれませんが、いずれにせよオーナーはニヤリとしちゃうかも!?
第1位 ヤマハ・WR250X 150.63%
オフ車のWR250Rと同時開発されたスーパーモタードモデルで、アルミ材とスチール材のハイブリッドフレームに、パワフルな水冷単気筒エンジンを搭載。2017年に生産終了されました。そもそも国内メーカー製モタードは貴重な存在で、その中でもWR250Xはずば抜けて本格派。「こんなモデルはもう二度と発売されないだろう」と言われていて、中古車人気が高まり続けることにも納得です。
第2位 ホンダ・ズーマー 148.09%
シート下のフレームがむき出しになったデザインが特徴的な、若者をメインターゲットに開発された4スト50ccスクーター。別体式デュアルヘッドライトや極太の前後タイヤなど、とにかくユニークな存在でした。排ガス規制強化の影響で2017年に生産終了となりましたが、現在も若者を中心に大人気。とはいえ原付なので、価格的には4→7万円台と約2万3000円の上昇で、それほど大きな差ではありません。
第3位 ホンダ・フォルツァ 144.09%
スクーターブーム終焉から15年近くが経過した現在、なぜここまで上昇しているのかやや不思議。新車のデリバリーは遅れ気味ですが、2023年になって納期は短縮傾向にあるようです。各期とも15台以上の買い取り実績があり、データとしても十分に有効。軽二輪スクーターは通勤で使用する一定数のニーズがあり、日常の足として必須な方々が新車よりもリーズナブルですぐに使い始められる中古スクーターを求めた結果でしょうか……。
第4位 スズキ・アドレスV50 140.98%
49cc空冷単気筒エンジンを搭載したスクーター。2023年現在、原付一種クラスのスタンダードスクーターはラインアップが非常に限られていて、なおかつこのアドレスV50を含めたほとんどの車種が、さまざまな規制強化に対応できず2025年までに生産終了されることも予想されているので、注目度が上がっているのかもしれません。とはいえ、金額的には2022年の1万7000円台から7000円程度のアップ。じつはそれほど大きな差にはなっていません。
第5位 ヤマハ・YZF-R6 139.98%
1999年型から販売されてきた水冷並列4気筒の600スーパースポーツ。日本ではプレストコーポレーションが逆輸入車を取り扱っていましたが、規制強化の影響で2010年型を最後に一時休止されました。モデルチェンジを受けた2017年型から、再び日本でもプレストが販売を手がけましたが、2020年型を最後にこのモデルはレースベース車のみとなり、公道仕様を入手するには中古車を選ぶ以外に手段がありません。中古車高騰にも納得です。
かつての空冷Vツイン400クルーザーやCBR1000RRも熱い!
このように、バイクの買い取り相場は全体としては落ち着きを取り戻しつつありますが、それに逆行している車種も多くあります。ちなみに、2022年9~11月期と2023年6~8月期の比較による上昇率第6~10位には、ホンダ・スティード400(138.16%)、ヤマハ・ドラッグスター400(137.61%)、ホンダ・CBR1000RR(130.51%)、カワサキ・ZRX1200R(124.65%)、ホンダ・CBR1000RR SC57(123.98%)が名を連ねています。
ただし言うまでもなく、中古車の買い取り価格は、相場や人気だけでなく、その個体ごとのコンディションに左右されます。そこで次回は、「バイク高価買い取りのコツ」をカチエックスにお聞きします!
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