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油冷エンジンの採用で水冷比27kgも軽いVストローム250SXが誕生!

Vストローム250SXのカラーリングは3色で、右からグラススパークルブラック、パールブレイズオレンジ、チャンピオンイエロー。
近年、アドベンチャーバイクモデルのVストロームシリーズに力を入れるスズキが、車検のいらない250ccクラスにVストローム250SXを8月より市場投入。これによりスズキのVストロームシリーズは、5系統7機種という世界最大のアドベンチャーバイクファミリーを形成するに至った。排気量順に列記すれば、Vストローム1050とDE、Vストローム800DE、Vストローム650とXT、Vストローム250。それに今回登場したVストローム250SX。新型のVストローム250SXは価格的にみて末弟という立場になる。だが、この新型の登場で250ccクラスには、水冷ツインのVストローム250と、油冷シングルのVストローム250SXの2機種が併売となるわけだが、そのキャラクターがどう分けられているのか? その辺りがVストローム250SX購入にあたっての1番のポイントになりそうだ。
1. コンパクトながらVストロームシリーズらしい迫力あるスタイル

カラーリング:パールブレイズオレンジ
【全長/全幅/全高】 2,180mm/880mm/1,355mm
【車両重量】 164kg
【軸間距離】 1,440mm
【最低地上高】205mm
【販売価格】
569,800円(税込)
実車を目の前にすると同じ排気量帯でありながら、水冷ツインのVストローム250に対してかなりコンパクトな印象を受ける新型Vストローム250SX。油冷シングルエンジン由来のスリムさがこのコンパクトな車格の秘密だが、それでいて尖った嘴(クチバシ)のビークデザインやしっかりタンデム走行性能や積載性を考慮したテール周りのつくりなどがアドベンチャーバイクらしい風格をかもしだしている。日本仕様だけのオリジナル装備であるセミブロックパターンのタイヤが、このアドベンチャーらしい無骨さにさらに拍車をかけている。ちなみにこの新型Vストローム250SX、価格は水冷ツインのVストローム250比で77,000円ほど安く設定されているのもポイントだ。
2.アップライトなポジションで膝まわりも楽チン

【シート高】835mm オフロード走行を想定し最低地上高を205mmも確保したことでちょっとシートは高め。
172cm/75kgの体格で両足をつこうとすると4cmほど踵が浮く足着き性となった。ただし、装備重量164kgの車体は軽く起こしやすいので、それほど足着き性に関してネガティブさを感じない。足着き性に関して秀逸なのは、サイドスタンドには足をかけるための突起が2つ設けられていること。足着きの具合に合わせて出しやすい方が選べるようになっている。

-25mmのローダウンシートも用意。手前が835mmのノーマルシートで奥が-25mm低いローダウンのシート。
835mmとちょっと高いシート高が購入時の懸念材料になりそうなVストローム250SXだが、オプションとして約25mm座面が下げられるローシート(25,520円/税込)も用意されている。体感的には1~1.5cmほど踵の浮き具合が減る印象で、妙にアンコが少なかったり、膝の曲がりが窮屈になるような不具合は感じない。ただローシートの印象はかなり個人差がありそうなので、試乗車のある販売店でこの辺りは実際にまたがって確かめてみてほしい。
3.Vストロームらしくロードセクションも軽快 -実走インプレッション-
試乗にあたってはまず水冷ツインのVストローム250に乗ってフィーリングを確認してから、新型Vストローム250SXの試乗を行なった。乗り換えてまず最初に感じたのは車体の軽さだ。水冷ツインのVストローム250は、大容量17ℓタンクに3パニア積載の拡張性など、その車体の重さを武器に安定性を高めているようなところがあったが、新型Vストローム250SXは引き起こしから軽く、走り出してみるとヒラヒラと軽快なハンドリングが楽しめるようになっていた。
試乗前はフロント19インチ化&セミブロックパターンタイヤの採用でハンドリングが相当鈍重なのでは? なんて思っていたのだがこれは嬉しい誤算。ワインディングを走っても楽しいところに非常に舗装セクションに強い“Vストロームらしさ”を感じる。フロント19インチ化によるネガティブ要素は極低速Uターン時にハンドリングがやや重たく感じるくらいのものだ。
油冷エンジンで稼いだ軽さのおかげでひらひらしすぎてしまうところを、フロント19インチホイールと長めの軸間距離でアドベンチャーバイクらしい安定感を出したという印象だが、これがなかなかよくまとまっていて、ワインディングも楽しいのだ。
エンジンに関しても、水冷ツインのVストローム250よりも非常に元気に感じる。水冷ツインのVストローム250は発進から中低速にかけてスルスルと伸びていくようなトルク感がやや希薄なエンジンフィーリングであったのに対し、この新型Vストローム250SXはなかなかパンチの強い加速をしてくれる。
とくに発進から中低速域にかけては、持ち前の車体の軽さも加わって力強い加速感が味わえる。試乗にあたってはかなり勾配のきついワインディングで試乗を行うことになったが、ギヤさえ落とせばしっかり加速する。水冷ツインのVストローム250の弱点がしっかり克服されている印象なのだ。
250ccクラスに、同じVストロームシリーズが2台も登場させてどうするの? なんて思っていたが、大荷物を積んで遠くへ出かけるようなロングディスタンスな旅が得意な水冷ツインのVストローム250と、軽量コンパクトで普段使いもしやすい新型Vストローム250SXで、そのキャラクターはしっかり分けられているのを感じた。
4.オフロード スタンディングもしやすく -実走インプレッション-
新型Vストローム250SXと、従来からの水冷ツインVストローム250の明確なキャラクターの違いとしては、新型Vストローム250SXはオフロード走行性能の高さも挙げられる。まぁ、高いと言っても純然たるオフロードバイクのような走破性ではなく、あくまで“アドベンチャーバイクとしては”という但し書きが付いてしまうが、それにしても水冷ツインVストローム250とは大きく異なる方向性をしっかり打ち出してきた印象だ。
というのも水冷ツインVストローム250は、その扱いやすさのおかげでフラットダートくらいならなんとか走れないこともなかったが、ロードセクション重視のセッティングがなされたABSが標準装備化されてしまってからは、ちょっとダートセクションが走れるとはなかなか言いにくくなってしまった。
ところが新型Vストローム250SXでは、ダートでもしっかり使えるABSが組み込まれて制動に不安がないほか、最低地上高も205mmを確保したことで物理的なオフロードでの走破性が大幅アップしている。
しかも、コンパクトな車体はスタンディング走行時の応答性もよく、オフロードバイクの乗り方をすればしっかりとオフロードバイクの動きをしてくれるからとても扱いやすく感じる。水冷ツインVストローム250が“なんとかフラットダートを通過できる”という性能だったところから、“フラットダートを積極的に楽しめる”くらいまでにオフロード性能がアップしている。
また、そのオフロードセクションの扱いやすさに拍車をかけるのが油冷シングルエンジンだ。中低速のトルクが太く歯切れのいい押し出し感があるおかげで、リヤタイヤを空転させての方向転換やちょっとしたギャップを使ってのフロントアップもお手の物。これは水冷ツインVストローム250ではなかなか難しかった動きである。250ccのVストロームシリーズのどちらにするかで悩んでいる場合、ちょっとでもオフロード走行に興味があるなら新型Vストローム250SXを選んでおくといいだろう。
5.ディティール

【エンジン形式/排気量】水冷4ストDOHC単気筒/249cc【変速機構】リターン式6段変速【最高出力】26ps/9300rpm【最大トルク】2.2kg-m/7300rpm
ジクサー250シリーズと同じ油冷単気筒249ccエンジンを搭載。このVストローム250SXが搭載する油冷単気筒エンジンの特徴は、冷却媒体をクーラント液ではなくエンジンオイルとすることで、冷却水、オイルポンプ、ラジエターといったパーツがなくなり、水冷エンジンに比べてとても軽くコンパクトなエンジンが作れること。実際、水冷ツインのVストローム250に比べて27kgもの軽量化が行えているのはこの油冷単気筒エンジンによるこころが大きいという。

【フロントタイヤサイズ】110/90-19【フロントブレーキ】片押し2ポット/ディスクφ310mm

【リヤタイヤサイズ】140/70-17【リヤブレーキ】片押し1ポット/ディスクφ240mm
水冷ツインのVストローム250が前後17インチホイールなのに対し、新型のVストローム250SXはオフロード走行も考慮しフロントホイールを19インチ化して差別化している。Fストローク120mmを確保するとともにタイヤも日本仕様はブロックパターンが強めのタイヤをチョイス。ブランドはマキシスのマックスプロアで、内部構造とタイヤパターンをVストローム250SX用に専用設計している。またブレーキのABSもオフロード走行を想定した遅め介入を行うタイプで、実際、滑りやすい砂利道で安心して使える仕様になっていた。リヤホイールの軸上ストロークは143.7mm。

ジクサーシリーズとは異なるメーターを採用。表示内容はスピードメーター、タコメーター、ギヤポジションインジケーター、時計、燃料計、エンジン回転インジケーター、オイルチェンジインジケーター、オドメーター、トリップメーター、平均燃費計、瞬間燃費計、電圧計など。レッドゾーンは1万回転からとなっている。

Vストロームシリーズのアイコンである“ピーク(嘴)デザイン”は、80年代のパリダカ全盛期のDRジータにルーツにそのルーツがある。ヘッドライトのLEDユニットはジクサーシリーズと共用。メーターサイドには2V5AのUSBソケットを備えている。

セパレートタイプのシートは、ライダー&タンデムシートともに十分な厚みがある。インドでの二人乗り事情も加味して快適性にはかなり拘ったとのこと。グラブバー兼キャリアも標準装備されている。タンデムシート下にはETC車載器+αくらいのスペースがあり、タンデムシート裏側にはヘルメットホルダーも。

テールまわりは二人乗り時の快適性のために大きめとするも、カウルのカラーリングを工夫することでコンパクト感を演出している。灯火類の光源はウインカー以外はタマ切れの心配のないLEDを採用している。

ジクサーシリーズと同じデュアルテールエンドを採用し、エキゾーストパイプの取り回しも下回し。それでありながら205mmという大きな最低地上高を確保。水冷ツインのVストローム250の最低地上高160mmに対し、45mmもの余裕があることになる。スイングアームはジクサー比で48mmほど伸ばされ、軸間距離は95mmプラスの1440mmとした。

燃料はレギュラーで容量は12ℓを確保。WMTCモード値による燃費は34.5km/ℓ。ワンタンクの航続距離は水冷ツインのVストローム250(546km)には敵わないものの、計算上414kmとかなりロングレンジを誇る。

オフロード走行を想定し、ラバーパッドは取り外せるようになっている。秀逸なのは2箇所の突起を設けたサイドスタンドで、体格に合わせて使いやすい方が選べるようになっている。
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