
スズキがジャパンモビリティショー2023に電動のe-choinori(e-チョイノリ)を出品することを明らかにした。ここでは、その基になった2003年の初代チョイノリを振り返ってみたい。
写真:ミヤシーノ樹脂製のカムシャフトにビックリ
チョイノリは2003年2月に発売されたスズキの原付スクーター。そして、20年後の現在に電動化されたe-チョイノリがジャパンモビリティショーでデビューする。ベースになったエンジン版チョイノリは、税抜5万9800円で発売された超低価格車だったのは有名な話だ。
2003年は、4月に日経平均株価がバブル後最安値を記録したデフレ時代。そんな中、スズキは鈴木修会長の「排気量1cc当たり1000円」という理想を実現するチョイノリを開発した。しかも国産車ながら中国生産のホンダトゥデイ(税抜9万4800円)を下回っていた。
スズキがとった作戦は徹底的な合理化で、まず従来のスクーターより部品点数を約30%、ボルト&ナット類を約50%削減した。塗装工程を省略するため着色樹脂を使用した上で6色のカラバリを設定。エンジンにはめっきシリンダーを採用し40%の軽量化を果たした。
凄いのはカムシャフト及びカムスプロケットが金属ではなく樹脂製だということ。この攻めに攻めた合理化がチョイノリを名車たらしめていたのだが、初期型はこれが摩耗することから後期型では対策されている。攻めすぎと言えるくらいやり切った執念のモデルなのだ。

チョイノリ(2003年) [SUZUKI] e-チョイノリのベースなったエンジン版。単に安価なモデルというだけでなく同年のグッドデザイン賞を獲得しており可愛らしいスタイルも特徴だ。

エンジンはベルトコンバーターのCVT無段変速を採用しつつチェーンドライブとしている。見ての通り、後輪にサスペンションはなくリアまわりはリジッドマウントだ。

浜松の工場で組み立てられるチョイノリのエンジン。国産車として低価格を実現することを追求した。エンジンは強制空冷式でもない空冷単気筒OHV2バルブを採用している。

エンジンのカムシャフト&スプロケットを交換している様子。赤丸で囲んだのが新旧パーツでカムが摩耗するとバルブリフト量が減ってしまうためパワーが出なくなってしまうのだ。

燃料タンク容量は3Lだが、ちょい乗り用途でかつ76km/Lの低燃費を実現していたので不足はなかっただろう。タンクキャップにはキーが付いている。

スピードメーターは50km/hまで刻まれており、性能は~45km/h程度だったという。このメーターは後期型の距離計付きだが、初代では距離計も省略されていた。
2003年型チョイノリ主要諸元
・全長×全幅×全高:1500×620×975mm
・ホイールベース:1055mm
・シート高:680mm
・車重:39kg(乾燥)
・エンジン:空冷4ストローク単気筒OHV2バルブ 49cc
・最高出力:2PS/5500rpm
・最大トルク:0.3kg-m/3500rpm
・燃料タンク容量:3L
・変速機:Vベルト無段変速
・ブレーキ:F=ドラム、R=ドラム
・タイヤ:F=80/90-10、R=80/90-10
・当時価格:5万9800円(税抜)

e-choinori(イーチョイノリ) [SUZUKI] 原付1種の電動スクーター。灯火類はLED化され、ホーンのスリットが「e」に変更されているが、ボディは基本的にエンジン版チョイノリと共通だ。
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