
ホンダは、スクランブラースタイルの新機種として、2023年5月にCL250とCL500を発売開始。このうち、普通二輪免許で乗れて車検登録の必要がないCL250は、初登場以来5年連続で軽二輪クラスのトップセラーとなっているレブル250に匹敵する人気となりそうな気配です。CL250のヒットを足掛かりに、250~400ccスクランブラーブーム再燃の可能性も……ということで、スクランブラーの歴史や近年のメジャーなモデルを紹介します!
目次
国内メーカー製スクランブラーの歴史はとても長い!?
スクランブラーは、本格的なオフ車やモトクロッサーなどがまだ存在していなかった1960年代以前に、未舗装路で競われたレースで使われていたバイクがルーツ。その当時は、オンロードバイクをベースに、アップマフラーやタイヤの換装など最低限のカスタムが施されていました。
スクランブルレースを発祥とするこのカテゴリーは、すぐに市販車にも波及。例えばホンダは、1962年にドリームCL72スクランブラーというモデルを発売しています。

1962年1月に発売されたホンダ・ドリームCL72スクランブラー。1960年11月に発売されて人気となったロードスポーツモデルのドリームCB72スーパースポーツがベース
その後、ホンダはこのCLシリーズのラインアップ拡充にかなり力を入れ、1970年にはCL50/70/90/125/135/175/250/350/450を市販。また、他社もスクランブラーを製品化していました。ところが1970年代になると、オフロード走行性能を追求したトレールバイクが台頭。これにより、市販スクランブラーは姿を消します。
そんなスクランブラーの世界観が、再び少し注目を集めるようになったのは、日本で空前のレーサーレプリカブームが去り、ネイキッドブームも一段落し、ファッション性も追求したストリート系カスタムモデルの人気が高まっていた1990年代後半のこと。
1997年、ホンダは原付一種クラスでベンリィCL50を発売し、ヤマハはセロー225WEをベースにしたブロンコを導入しました。さらに1998年、ホンダはより大きな排気量を持つCL400を新発売。しかしやや時代が少し“早すぎた”のか、これらのバイクはいずれも短命に終わります。

「ロードスポーツバイク」として1998年9月に発売されたホンダ・CL400。オートデコンプ機構を備えた397cc空冷単気筒エンジンは、キックのみの始動方式でした
2000年代はスクランブラーよりもトラッカー
1990年代後半から日本で隆盛したストリート系カスタムカルチャーは、スクランブラーではなくトラッカーブームに発展。これを受けて国内メーカーは、気軽にカスタムできる250ccクラスにトラッカー系モデルを投入していきます。
トラッカーとは一般的に、デコボコがないオーバルコースを周回するフラットトラックレースで使われるマシンのことを指しますが、その歴史は非常に長く、またカスタムカルチャーにおいて解釈に幅広さも加わり、結果的に現在では多くの車種が“トラッカー系”としてまとめられています。
国内メーカーがかつて市販していたメジャーなトラッカー系には、2000年に登場した本格派フラットトラッカースタイルのホンダ・FTRや、1920年代に英国で発祥したとされるグラストラックレースで使われたマシンをモチーフとしていたスズキ・グラストラッカー、このグラストラッカーをベースによりフラットトラックマシンの雰囲気に近づけた2001年発売のグラストラッカービッグボーイ、2002年に発売されたカワサキ・250TRなどの軽二輪モデルがあります。
ここに挙げた車種は、いずれも途中で環境規制適合化などの改良を受けながら10年以上もラインアップされていました。

2002年2月に発売されたカワサキ・250TR。「フリースタイル・ストリートバイク」がコンセプトで、249cc空冷単気筒エンジンを搭載。初代は34万9000円と価格も手頃でした
ドゥカティによって一気に注目度が再上昇
2006年にはトライアンフが、865cc空冷バーチカルツインエンジンを搭載したその名も「スクランブラー」という車種を発売するなど、完全に消滅したわけではなかったものの、長年にわたり日本だけでなく世界的にもマイナーな存在となってきたスクランブラーカテゴリー。
しかし2014年、ドゥカティがその世界観を取り入れながら自由なイメージを持つ新生スクランブラーシリーズを発表し、翌年から市販化したことで、多くのライダーに再びスクランブラーカテゴリーが知られていくことになります。

2016~2020年のわずか5年間だけラインアップされたドゥカティ・スクランブラーSixty2。399cc空冷Lツインエンジンを搭載し、フロントサスペンションなどの仕様も803cc仕様と違っていました
2016年、ドゥカティは日本市場にスクランブラー Sixty2を導入。前年から展開されていたスクランブラーシリーズの空冷Lツインエンジンの排気量は803ccですが、Sixty2は399ccで、日本の普通二輪免許でも乗れるスクランブラーとして注目を集めました。残念ながらSixty2は、2020年限りで生産終了。
しかし普通二輪免許で乗れるスクランブラー系のバイクは、2023年になってむしろ充実傾向にあります。そこで以下に、“普通二輪免許で乗れる最新スクランブラー”をいくつかを紹介しましょう!
普通二輪免許で乗れる最新スクランブラー×4選
気軽さが魅力の新たな人気モデル候補:ホンダ CL250
2023年5月に日本での発売が開始された、スクランブラースタイルのニューモデル。開発ベースはクルーザーのレブル250で、シートレールをCL専用化したスチール製フレームに249cc水冷単気筒エンジンを搭載しています。前後ホイール径は19/17インチで、溝が深いラジアルタイヤを装着。アップタイプマフラーは音質にもこだわって設計されています。
スクランブラーの世界観を未来的に:ハスクバーナ スヴァルトピレン401
スウェーデン発祥で、2013年からはオーストリアのKTMと同じグループに属するハスクバーナ。スウェーデン語で「黒い矢」を意味するスヴァルトピレン401は、KTMの390デュークをベースに開発され、2018年から市販されています。搭載されているエンジンは373cc水冷単気筒で、最高出力44馬力を発揮。軽量な車体との組み合わせで、運動性能を高めています。
軽二輪クラスの“黒い矢”もある:ハスクバーナ スヴァルトピレン250
2020年型でスヴァルトピレンシリーズに追加されたのが250。前後ホイールがアルミキャスト仕様となるなど(401はワイヤースポーク)細部に違いはありますが、基本的な車体設計は401と共通化されています。248.8cc水冷単気筒エンジンは、最高出力31馬力を発揮。WP製の前後サスペンションやバイブレ製のブレーキなどで、こちらもスポーティにまとめられています。
英国の名門がアンダー400スクランブラー市場参入!:トライアンフ スクランブラー400X
2023年6月28日、英国トライアンフが2024年の最新モデルとして待望の中型セグメントとなるスクランブラー400X(とスピード400)を発表しました。エンジンプラットフォームから新設計され、398cc水冷単気筒エンジンは40馬力を発揮。スクランブラー400Xは前後19/17インチのアルミキャストホイールを履いています。2023年7月にインドで先行発売され、2023年末には日本市場にも導入開始予定です。
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