【普通免許&165cmの外車インプレ】BMW「CE04」意外な取り回しのよさにビックリのEVスクーター

2022年に発売されたBMWの「CE04」は、未来的なデザインが印象的な新型EVスクーターだ。大排気量クルーザーやスポーツモデルが人気のBMW発ながら、CE04は普通二輪免許で運転できる出力のマシン。今回はこのCE04に試乗するチャンスがあったので、印象をレポートしていきたい。

大きくて重い！　クルーザーみたいだけど大丈夫！？

BMWが発売したEVスクーターでは2モデル目となるCE04。コンセプトモデルとして発表されていた「Concept Link」が発展した、近未来的なデザインを持つマシンだ。モーターはベルトドライブであり、回生ブレーキや4種類の走行モードを搭載し、航続距離を重視したエコランからアグレッシブなスポーティーな走行まで、様々なシチュエーションに対応できる機能を持つ。クルーズコントロールも搭載しているほか、アダプティブヘッドライトやシートヒーターといったハイクラスな装備も採用し、ラグジュアリーなEVスクーターとして注目されている。

BMW「CE04」

【全長/全幅/全高】2285mm/855mm/1150mm
【車両重量】231kg
【軸間距離】1675mm

【販売価格】1,950,000 円〜（税込）

第一印象はとにかく「大きい」そして「重そう」。イメージはスクーターというよりクルーザーに近く、ホイールベースは1675mmもある。この数値はリッタークラスのツーリングモデルとどっこいといったところで、スクーターで同じサイズ感を持つのは、スズキ・ジェンマ(1690mm)くらいだ。車体重量も231kgもあり、こちらも中型スクーターとしてはかなりヘビー級。これはボディ下部に大型のリチウムイオンバッテリーを搭載しているためだ。

実際、サイドスタンドを払って引き起こす際にはかなり重量を感じた。押し歩きでも同様にスルスルと動いてはくれない。重心が低くふらつきはないのだが、街中でバイクを降りて駐車スペースを探す……といったシチュエーションは苦手な雰囲気。

ところが跨ってみると、意外にも足つきは一般的なビッグスクーターによく似て、不安はあまりなかった。両足を出すとカカトは浮くが、しっかり体重をかけて支えることもできる。これも低重心の恩恵かバランスをとるのも簡単だ。さらにバックギアが採用されているため、切り替えしなどの際には力をいれずにバックが可能。大きな見た目を裏切る、軽やかな取り回しだ！

取り回しはさすがに重いが、またがってしまうと不安はなし。車体幅も細く、足が開いてしまうこともない。

足つきは指先が接地する程度。このまま歩くことはできないが、バランスは崩さないレベルだ。

シート幅があるため、片足をあげても完全な接地はできなかった。

TFT液晶メーターは、スタートスイッチを押すとバッテリー残量を表示する。走行中も残量は確認可能だ。

バックギアはワンプッシュで作動。重い車体の取り回しもラクラク。

当たり前だがイグニッションスイッチはなく、スイッチを入れるとすぐに走行可能になる。モーターの出力は31kw（42PS）と、250ccクラスのエンジンと同じくらいだが、最大トルクは62Nm（6.32kgf-m）という、大型スポーツバイクに匹敵するパワーを発揮するため、最初は「RAIN」モードで操作感を確認してみた。走り出すと車体の重量を感じられないスムーズさで加速。15インチの前後小径ホイールながら、直進はとても安定している。それでいてタイトなコーナリングも、普通のスクーターと変わらないイメージでくるりと回れるのだから驚いた。アップライトなハンドル位置や、車体の重量バランスが優れているということもあるのだろう。とにかく、まったく違和感がない！

慣れてきたところで走行モードを変更。CE04は「ECO」「RAIN」「ROAD」「DYNAMIC」の4つの走行モードが設定されており、「RAIN」「ECO」はスロットルのレスポンスや回生ブレーキの動作がマイルドに設定されている。対して「ROAD」「DYNAMIC」では存分にそのポテンシャルを発揮することができるという。実際に「RAIN」では別段250ccクラスのビッグスクーターとあまりパワーやブレーキの動作に差を感じなかった。ところが、「DYNAMIC」モードにした途端にその性格は変貌！　異様な加速性能だ。正直、これほど加速の鋭いマシンに乗ったことはないというくらい。それでいてエンジンの激しいサウンドやトルクの谷などはまったくなく、独特の高音を上げつつ路面を蹴ってくれる。最高速は公称120km/hということなので、高速道路も問題なく走れるだろう。

特徴的なのはEV特有の回生ブレーキで、アクセルオフと同時にリアブレーキが大きく制動される挙動は、エンジン車に慣れた身ではなれるのに少し時間がかかった。「RAIN」モードではエンジンブレーキ程度の効き具合なのだが、「DYNAMIC」では本当にガツンと効く。その分アグレッシブな走行が可能になるというわけで、安全性も極めて高いといえる。

0-50km/h加速は2.6秒と発表されており、実際に素晴らしい速度の乗り方をみせた。街乗りでパワー不足を感じることはないだろう。

余裕のトルクからくる軽快さは、車体の大きさを全く感じさせない。重さとホイールベースから、直進安定性が高いのも嬉しい。

ディテール

灯火類はフルLEDで、ヘッドライトは4眼のLEDとリムライトを装備。

テールライトはウィンカー一体型となり、とてもスッキリしている。

モーターの駆動力はベルトドライブで伝達。重量パーツを集中させることで、高いバランス感を獲得している。

リアサスペンションはシングル。調整は段階的なプリロードのみとなる。この点はもっとこだわれると嬉しいところ。

多機能ながら、スイッチボックスは極めてシンプル。また、グリップヒーターが標準装備されている。シートにはシートヒーターも。

左側スイッチボックスには、モードセレクトスイッチやバックスイッチが集中。

グローブボックスにはスマートフォンを接続&収納できるスペースと、充電コネクタがおかれている。ハンドル下の始動スイッチはキーレス。

利用面でのハードルはまだ存在するも、性能面では文句なし！

そんな素晴らしい走行性能をみせてくれたCE04だが、航続距離は130km、満充電まで4時間を要するため、基本的にはシティコミューターとしての利用が想定されている。また充電アダプタは普通充電（J1772）のみで、急速充電（CHAdeMO）は利用できないことも長距離利用には少し不安な点となる。家庭での充電には付属の専用充電器を使用できるのだが、単相200V電源が必要であるため、一般家庭では追加の工事も必要となるだろう（ケーブルは5mで、バッテリー脱着は不可）。また車両価格は195万円と、同クラスのエンジン搭載スクーターに比較すると100万円ほども高級だ。

このため、CE04を利用しやすいのは通勤通学用途で、かつEV車両を既に所有している（充電器を同一規格で使用可能）ユーザーとなる。ワインディングや高速道路が楽しそうな、スポーティーな特性を備えたマシンだけに、この航続距離の課題は残念。とはいえ、ガソリンエンジン機以上の運動性能は、特にEVの乗車経験がないライダーにはぜひ1度体験してほしいと思う。それほど未来感のある走り心地なのだ。

またBMWは更なるEVの新型として、小型化&軽量化を進めたコンセプトモデル「CE02」が公開されている。11kW（原付二種相当）の出力で、重量は120kgというMTBライクなコミューターだ。こちらの発売に関する情報は未発表だが、若年層に向けたストリートマシンという位置づけから、実用面、価格面でのハードルが下がることを期待したいところ。EVマシンの進化には、まだまだ目が離せない！

充電用には普通充電（J1772）コネクタのみを装備。充電スポットは多いが、まだ満充電にはかなりの時間がかかるのも事実だ。

充電器はBMW製EVに共通しているが、家庭での充電には電設工事が必要となるため、新規設置にはややハードルとなる。

既に発表されているCE02は、EVを更にカジュアルに扱えるモデルとなりそうだ。詳報に期待したい。

CE04（2023）主要諸元

・全長×全幅×全高：2285×855×1150mm
・ホイールベース：1675mm
・シート高：800mm
・車重：231kg
・定格出力：15kW（20PS）
・最高出力：31kW（42PS）/4,900 rpm
・最大トルク：62Nm/0–4,900rpm
・WMTC航続距離：130km
・ブレーキ：F＝ダブルディスク、R＝ディスク/自動電力回生
・タイヤ：F＝120/70 R15、R＝160/60 R15
・発売価格：195万円～

情報提供元 [ BMW MOTORRAD ]