21インチホイールの“何処でも行ける”オールラウンドアドベンチャー

トランザルプとは、“トランス”と“アルプス”を語源にした造語。つまり“アルプス越え”という意味だ。

CRF1000Lアフリカツインに遅れること7年。近年のアドベンチャーバイクブームを受けて、ついにトランザルプまでもが復活することになった。しかも、オフロードでの走破性を考慮したフロント21インチホイールを採用し、しっかりオフロード走行できるようなキャラクターに設定してきたところがポイントだ。

車名が“トランザルプ”であることで、前作を知るライダーの中には“オンロードメインのアドベンチャーモデルでしょ?”なんて感じでハナから決めてかかる人が多いが、このXL750トランザルプはしっかりダート走行を想定したアドベンチャーバイクに仕上がっている。

21インチホイールが与えられたオフロード重視スタイル

ホワイトを基調に青と赤のストライプ風のグラフィックを入れたデザイン&ゴールドホイールは、87年に登場した初代トランザルプ(XL600Vトランザルプ)のイメージ。足回りには、フロント21インチホイール&リヤ18インチホイールのオフロード寄りのプロファイルで、最低地上高も210㎜を確保している。

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カラーリング:ロスホワイト
【全長/全幅/全高】2,325mm/840mm/1,450mm
【車両重量】208kg
【軸間距離】1,560mm
【最低地上高】210mm

【販売価格】1,265,000円(税込)

21インチホイールアドベンチャーの中では抜群の足着き性

【シート高】850mm

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シート高850mmと、一般的なネイキッドモデルよりはシート高が高いものの、アドベンチャーバイクとしては低めに設定。ただ無理やり下げた感はなく、膝の曲がりに変な窮屈感はない。172cm・75kgの体格で踵が4、5cm浮く程度で、しっかりと母指球で支えられる。

【ローシート】820mm

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純正比-30mmでシート高720mmになるローシート(3万3660円)もアクセサリーとして用意されている。単にシートを低くするだけでなく、跨ぎ部の形状も工夫されており、踵が3cm程度浮くまでに足着き性が良くなった。

ロードセクションが走りやすい!

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ホンダの750ccクラスのラインナップには、すでにクロスオーバーコンセプトのNC750Xが存在している。このNC750Xは、アドベンチャーバイクの雰囲気を纏ってはいるものの、その中身はロードバイクである。その分、このXL750トランザルプはしっかりオフロード寄りのキャラクターに寄せてくるんだろうな? ……なんて思いながら試乗を開始したのだが、思いのほかロードセクションでの走りがよくてびっくりしてしまった。

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まず驚かされたのは車体の軽さだ。数値のうえでは16ℓの燃料満タン状態で209kgと決して取り立てて軽いというわけではないのだが、サイドスタンドを払おうと車両を起こそうとしてみると、足着き性がいいこともあり思ったよりも軽く感じたのだ。

アドベンチャーモデルにありがちな変な腰高感がないとでも言おうか。見た目こそアドベンチャーバイク然とした迫力ある車格だが、走り出してしまえば、ヒラヒラと走りは軽やか。

アドベンチャーバイクというと、車格が大きいが故に、狭い場所での発進停止やUターンではかなり気を使うモデルが多い。ところがこのXL750トランザルプは気負うところが一切なく、250ネイキッドと同じ……というのはいささか言い過ぎだが、一昔前の400ccネイキッドぐらいの感覚で扱えてしまうくらいの気軽さがあるのだ。両側42°のハンドル切れ角も相まって、Uターンも軽々で拍子抜けしてしまったくらいだ(笑)。

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またトランザルプらしく、ワインディングも走ってみたが、極低速走行同様フロント21インチホイールのアドベンチャーとは思えないくらいの軽やかな走りにも感心させられた。通常、フロント21インチホイールのオフロードテイストの強いバイクは、車体に強い遠心力のかかるロードセクションが苦手な場合が多い。そんなマシンではコーナーを攻める気にならないものだが、XL750トランザルプとなら、峠も軽やかに走れてしまうのだ。

走行モードは、「スポーツ」、「スタンダード」、「レイン」、「グラベル」、変更可能な「ユーザー」の5種類だが、一番スロットルレスポンスが元気な「スポーツ」で走ると結構ワインディングを攻め込める印象だ。まぁ、トルクコントロール(ホンダのトラクションコントロール)やABSといった電子制御を搭載しているから……という安心感もあるが、思いのほかスポーツできるのだ。

アドベンチャーバイクでのダートデビューにちょうどいい!

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ロードセクションでの走りに気を良くしたところで、走行モードを「グラベル」にしてダートセクションへ入ってみる。

「グラベル」モードは言ってみれば“初心者安心モード”である。トルクコントロールが、極力リヤタイヤのスリップを抑えるような制御を行なってくれるおかげでものすごく安心感がある。

感心させられたのは、一番ナーバスになる発進停止あたりの出力制御の作り込みの部分。極低速では、トルクコントロールが効きすぎて進まないのも困るが、リヤタイヤがずりっと空転するのも怖いモノである。
XL750トランザルプは、この極低速域で極力リヤタイヤのスリップを抑えながらもしっかり進むような制御を行なってくれるおかげで、とにかく砂利の上での安心感が強いのだ。

近年、オフロード色強いモデルやオンロード性能を重視したモデルなど、色々なアドベンチャーバイクが登場している。その中でXL750トランザルプは、“最もダートデビューしやすいアドベンチャーバイク”という今までなかったポジションにはまり込んだ感じである。

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次に走行モードを各種設定の変更可能な「ユーザー」を選択、トルクコントロール(トラクションコントロール)をOFFにして、ABSも、リヤタイヤの制御がオフになる「ABS OFF」にしてスロットルをワイドオープンしてみる。

結論から言えば、“思いのほかよく走る”というのが正直な印象だ。流石に速度レンジを上げると、足回りなど色々足りない部分は見えてくるが、このバイクは、CRF1100Lアフリカツインではなく、XL750トランザルプなのだ。

わかりやすい例を出せば、ヤマハのハイスペックオフローダーのWR250Rがアフリカツインなら、トランザルプは低速セクションが得意なセローという感じ。より速度レンジの高いオフロード走行を楽しみたいなら、XL750トランザルプではなく、もっとフロントフォークの太いCRF1100Lアフリカツインを選んだ方がいい。

試乗を終えた感想を言えば、XL750トランザルプは、“最も敷居の低いアドベンチャーバイク”という感じだ。アドベンチャーバイクでのダート走行はベテランライダーだけに限られたものと思われがちだが、XL750トランザルプは、そんなアドンチャーバイクでのダート走行をものすごく身近なものにしてくれる。アドベンチャーバイクで林道ツーリングデビューしてみたいという人には2023年現在、最適のモデルがこのXL750トランザルプと言えよう。

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ディティール

高速走行では、スクリーンの避風性の高さと静粛性に驚かされた。オプションにはハイスクリーンやディフレクターもある……が、残念ながらクルーズコントロールシステムの用意はオプションにもない。

高速走行では、スクリーンの避風性の高さと静粛性に驚かされた。オプションにはハイスクリーンやディフレクターもある……が、残念ながらクルーズコントロールシステムの用意はオプションにもない。

 

フロント21インチスポークホイールを採用。倒立フロントフォークはφ43㎜でストロークは200㎜を確保。200㎜のストロークはライバルと比べると多くはないが、フラットダートくらいならしっかり走れるようちゃんと作り込まれている。

フロント21インチスポークホイールを採用。倒立フロントフォークはφ43㎜でストロークは200㎜を確保。200㎜のストロークはライバルと比べると多くはないが、フラットダートくらいならしっかり走れるようちゃんと作り込まれている。
【フロントタイヤサイズ】90/90-21
【リヤタイヤサイズ】150/70R18

 

フレーム&エンジンはロードモデルのCB750ホーネットとベースを共用(国内未導入)。トランザルプはアップライトなポジションのため、ハンドルポストがかなり高め。フロントフォークはショウワ製SFF-CAで減衰力調整機能はないが、15段のプリロード調整機能を装備。

フレーム&エンジンはロードモデルのCB750ホーネットとベースを共用(国内未導入)。トランザルプはアップライトなポジションのため、ハンドルポストがかなり高め。フロントフォークはショウワ製SFF-CAで減衰力調整機能はないが、15段のプリロード調整機能を装備。

 

新設計の754cc270度パラレルツインはロードモデルのCB750ホーネット(国内未導入)共用。270度パラレルツインらしい、歯切れのいい野太いサウンドが低回転から高回転まで楽しめ、音質はアフリカツインの野太いサウンドに近い。フレームに関しても補強はしているがベースはCB750ホーネット一緒とのこと。<br>【エンジン形式/排気量】水冷4ストSOHC並列2気筒/754cc<br>【変速機構】リターン式6段変速<br>【最高出力】91ps/9500rpm<br>【最大トルク】7.6kg-m/7250rpm

新設計の754cc270度パラレルツインはロードモデルのCB750ホーネット(国内未導入)共用。270度パラレルツインらしい、歯切れのいい野太いサウンドが低回転から高回転まで楽しめ、音質はアフリカツインの野太いサウンドに近い。フレームに関しても補強はしているがベースはCB750ホーネット一緒とのこと。
【エンジン形式/排気量】水冷4ストSOHC並列2気筒/754cc
【変速機構】リターン式6段変速
【最高出力】91ps/9500rpm
【最大トルク】7.6kg-m/7250rpm

 

燃料タンク容量は16ℓ(レギュラー仕様)。WMTCモード値による燃費は22.8km/ℓで計算上の航続距離は364kmと十分。白、赤、青のグラフィックは初代トランザルプを想起させる。

燃料タンク容量は16ℓ(レギュラー仕様)。WMTCモード値による燃費は22.8km/ℓで計算上の航続距離は364kmと十分。白、赤、青のグラフィックは初代トランザルプを想起させる。

 

アフリカツインと“ほぼ共用”というアルミスイングアームを採用。タイヤはミシュランのカルーストリートを履く。オフロード走行をそれなりに意識した装備だが、ロードセクションでの走りもなかなかいい。ツーリングに使いやすいバイクに仕上がっている。

アフリカツインと“ほぼ共用”というアルミスイングアームを採用。タイヤはミシュランのカルーストリートを履く。オフロード走行をそれなりに意識した装備だが、ロードセクションでの走りもなかなかいい。ツーリングに使いやすいバイクに仕上がっている。
【フロントブレーキ】片押し2ポット/ダブルディスクφ310mm
【リヤブレーキ】片押し1ポット/ディスクφ256mm

 

フロント21、リヤ18インチで、ストロークはそれぞれ200、190㎜を確保。リヤショックには7段階式のプリロード調整機能も備えるが、工具要らずのダイヤル式ではなく、付属の車載工具による調整式となっている。減衰力調整機構は備えていない。

フロント21、リヤ18インチで、ストロークはそれぞれ200、190㎜を確保。リヤショックには7段階式のプリロード調整機能も備えるが、工具要らずのダイヤル式ではなく、付属の車載工具による調整式となっている。減衰力調整機構は備えていない。

 

上下対応クイックシフターはオプション設定。タッチは「ソフト」、「ミディアム」、「ハード」の3種類から選べる。この他、アクセサリーにはアルミパニアケースやアンダーガード、センタースタンドも用意。

上下対応クイックシフターはオプション設定。タッチは「ソフト」、「ミディアム」、「ハード」の3種類から選べる。この他、アクセサリーにはアルミパニアケースやアンダーガード、センタースタンドも用意。

 

5インチフルカラーメーター。ライディングモードは5つ。「スタンダード」に対し、スロットルレスポンスが元気な「スポーツ」、逆にダルな「レイン」。オフロード初心者用の、「グラベル」に加え、“出力”、“エンジンブレーキ”、“トルクコントロール(トラクションコントロール)”、“ABS”といった電子制御のレベルが変更可能な「ユーザー」がある。

5インチフルカラーメーター。ライディングモードは5つ。「スタンダード」に対し、スロットルレスポンスが元気な「スポーツ」、逆にダルな「レイン」。オフロード初心者用の、「グラベル」に加え、“出力”、“エンジンブレーキ”、“トルクコントロール(トラクションコントロール)”、“ABS”といった電子制御のレベルが変更可能な「ユーザー」がある。

 

XL750 TRANSALP(2023)主要諸元

・全長×全幅×全高:2325×840×1450mm
・ホイールベース:1560mm
・シート高:850mm
・車重:208kg
・エンジン:水冷4ストローク並列2筒SOHC4バルブ 754cc
・最高出力:91PS/9500rpm
・最大トルク:7.6kg-m/7250rpm
・燃料タンク容量:16.0L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=90/90-21、R=150/70R18
・価格:126万5000円

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