5月25日、日立アステモが人とくるまのテクノロジー展で「二輪車コミューター向けADAS(アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム)」を国内初公開。動画による解説も実施しており、そのモデルがADV160だったのだ。

ステレオカメラを追加するだけで自動ブレーキを実現

日立オートモティブシステムズとケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して誕生した日立アステモは、クルマやバイク向けの総合部品メーカーとして様々なシステムを開発している。その一つが、ステレオカメラによる「二輪車コミューター向け衝突被害軽減ブレーキ」だ。

衝突被害軽減ブレーキは、ステレオカメラが危険を検知すると警告表示灯が点滅しライダーに危険を知らせる。さらにライダーのブレーキだけでは衝突が予測される場合、減速アシストシステム(DACS=Deceleration Assist Control System)が作動しブレーキ圧を高めるのだ。

このシステムの特徴は、コンパクトなステレオカメラを備えていること。すでに実用化されているBOSCHのシステムはレーダーを使用しており、前方認識の手段が異なる。また、既存のスクーターにカメラを追加するだけでいいので、実用に向けての障壁は高くはないという。

解説動画の車両がADV160なのはホンダが同社に強い影響力を持つからだが、将来的に125/160ccクラスのスクーターへの搭載を視野に入れているのも理由だろう。

二輪車コミューター向けADAS(手前) [日立ASTEMO] 2022年11月のミラショーで展示したシステムを日本初公開。サイズ感も125~160ccクラスのスクーターだった。

スバルのアイサイトのようなステレオカメラ。カメラ間の幅は10cmほどで前面投影面積はレーダーよりもコンパクトだ。常に前方を向く必要があるので設置場所はヘッドライト付近か。

スマホを凝視していたり居眠りをして全くブレーキ制動されていないと、衝突被害軽減ブレーキが作動する。

ステレオカメラからABSモジュールに状況が伝えられ、前後ブレーキが自動で作動する。

強制減速で前方の障害物に気付いたライダーが、最終的にはブレーキレバーを操作して停止する想定だ。

衝突被害軽減ブレーキは、ライダーがブレーキをかけた際も入力が不十分だと判断すると介入して制動力を高める。

タイでの二輪事故死者の42%を抑止する

日立アステモの狙いは、東南アジアの輪車事故低減で、「強制減速によってライダーの認知を促し、衝突スピードを抑制」することにある。タイでの死亡事故は直進時が70%でそのうち60%が回避行動もせずに亡くなっているというデータもあり、これを抑止する効果がある。

日立アステモの調査によると、タイでの二輪車の死亡事故の70%のうちの60%、つまり全体の42%が直進時にブレーキなど回避行動なしで発生しており、これを抑止することができるのだ。

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