
2000年に世界最速を目指したZX-12Rをリリースしたカワサキは、2006年に進化版のZZR1400を発売。当時最大の1352cc/190PSで「最強」を打ち出していたが、それ以上に4つ目のスタイルがカワサキデザインの方向性を決定付けた名車と言えるだろう。
ZX-12RとZZR1200が再び融合し、原点回帰
最速のスーパースポーツを目指したZX-12Rとツアラーに進化したZZ-R1200から、カワサキのフラッグシップは2006年に再び一台にまとめられた。ネーミングはZZ-R1100の時代と同じように欧州がZZR、北米がZXを名乗るようになり、原点回帰したのだ。
コンセプトもZZ-R1100に近い最高速、スポーツ性、快適性を高次元で融合させた"メガスポーツ"路線を踏襲。トータルバランスにおいて「最強」を追及したオープンクラスキングとしてZZR1400(北米名:ZX-14)をリリースした。
「ZX-10R、ZX-12R、ZZ-R1200という3本柱でも、どの1台を取りあげても中途半端になっているのではないか。ZZRを愛するファン、つまりカワサキ製バイクがもつ魅力の中核である部分を愛してくれているファンに、より満足してもらえるモデルを提供したい。それがニューZZRの姿でした」(商品企画スタッフ)。
最も重視されたのはトップパフォーマンス。サーキットでの最速はZX-10Rに任せ、よりオールマイティで快適な「最強」マシン。しかし、時にはZX-10Rさえ置き去りにしてしまうような動力性能を目指し、1352ccという異例の大排気量が与えられたのだ。

ZZR1400(2006年) [KAWASAKI] ZX-12Rのアルミモノコックフレームを踏襲し、新設計1352ccエンジンで190PSのパワーを獲得。日本でもマレーシア仕様が逆輸入で販売された。

スーパースポーツを目指したZX-12Rとは異なり、ZZRらしい安定感のある重心の低さがスタイリングにも表れている。特に0-400m加速を重視する米国向けのフォルムとも言える
おどろおどろしさを打ち出したカワサキイズムの新潮流
ZZR1400は、「圧倒する迫力、存在感。美しさよりも、近寄りがたい凄み」をデザインのテーマとし、デザイナーは"おどろおどろしさ"をスケッチに表現した。特徴的なのは4つ目のヘッドライト+左右ポジション灯の6灯フェイスだ。
「初期に書き上がったのが、センターにプロジェクターを置きそのサイドにマルチリフレクターを配置した横3列。さらに同時期に進行していたZX-10Rがプロジェクター左右2灯にポジションランプを配した4灯デザインになったので、ニューZZRはさらにその上を行く総6灯にしよう、と。
フラッグシップの堂々とした存在感を表現するために、ロー/ハイビーム時ともシンメトリーで、ロービームで4灯、ハイビームでは6灯すべて点灯します」とデザイナーは語る。
同様に商品企画担当者は、「カワサキというブランドは、ハードコアである、というスピリットを貫き通しました。最速、最強、男臭さ、頑丈さ、重厚さ。だからニューZZRは、決してスマートにソツなくまとまってはいけない」と、現在に至るカワサキイズムの新潮流を打ち出したのだ。

ZZR1400発表時に公開されたスケッチ。お寺の門の左右に立っている仁王像(金剛力士)の4つの目をヘッドライトで表現していることが分かる。「最強」のコンセプトをこの目力に込めたのだ。

ZZR1400のデザインはクレイモデルを傍らにデザイナーと設計者、それにクレイモデラーが意見をぶつけ合う形で行われた。開発スタートの頃は直線的なシェイプだったようだ。

デザイナーによると「開発スタートから2年が過ぎた頃、スタートの頃とは似ても似つかぬデザインに仕上がった」ZZR1400。サイドカウルのZをイメージさせるエアアウトもユニークだ。

サイドカウルのルーバーラインは、ラジエターを通ったあと、熱気となって立ち上る空気の流れを効率よく排出するためのガイドラインで、これもZZR1400のデザインを引き立てている。

ハイビーム時は全6灯が光るヘッドライトがZZR1400の最大の特徴。「サイドミラーに写るやいなや、道を譲り、見送ることになる」と当時のプレスリリースで説明されていた。
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