1978年に発売された並列6気筒エンジンを搭載したCBX(1000)に続くモデルとして企画されたホンダの最新鋭6気筒モデルをご存じだろうか。未発売のため正式な車名はないが、ここでは仮に「CBX900」として紹介したい。

本田技術研究所員を対象にしたコンテスト作品

並列6気筒エンジンを搭載したモデルは「6気筒カフェレーサー」として考案されたCBX900と呼ぶべきモデルで、900cc並列6気筒エンジンを搭載している。メカニズムは現代的な水冷DOHC4バルブだが、空冷風のフィンが設けられておりネオクラシックコンセプトが見て取れる。

考案されたのは2016年で、本田技術研究所で開催されていた「自分の欲しい夢バイクコンペ」にエントリーされ、その投票結果からクレイモデルとして立体化されたという。3Dの画像は、意匠登録用に公開されたもので実際にこれと同じ形の実車が存在していたのだ。

このCBX900の狙いは、「創業者の夢に経緯と感謝を込め、伝説的なRC166を最新技術で昇華」したもの。実際、エンジンの外観はRC166を再現しており、前傾のシリンダーやカムカバー、クラッチカバーの形状などがそっくり。同様にバックボーンフレームも踏襲している。

これに往年のグランプリレーサー風のロケットカウルを装着してカフェレーサースタイルに仕立てられている。マフラーは3-1-3の左右出しで、RC166同様の6本出しサイレンサーが圧巻。1978年のCBX(1000)以来の6気筒900は、現在に至るまで発売されていない。

CBX900(2016年) [HONDA] 仮にCBX900と名付けたデザインスタディモデル。CGだけでなくクレイで立体化された。水冷並列4気筒DOHC4バルブ900ccを想定したエンジンを搭載した。

RC166(1966年) [HONDA] 空冷並列6気筒DOHC4バルブを採用し、249ccで60PS以上/18000rpmを発揮した。カムギアトレーンに4本カムシャフトの精巧なエンジンは技術力の証だ。

真横のシルエットもRC166のようにタンクからシートカウルまで一直線に伸びるシルエットを再現。タンデムステップが装着されていることから二人乗りも想定されていたようだ。

RC164の4気筒ではヤマハに対抗できず1964年終盤からRC165で6気筒化し、1966年にタイトルを奪還したRC166。1960年代のホンダ世界GP参戦を象徴するモデルだ。

まるでヘッドライトがついていないようなロケットカウルは2011年のRC-Eの発展型と思われる。RC-Eではアッパーカウルのダクト内に小型ヘッドライトが仕込まれていた。

バックミラーはカウルの内側にマウントされているようだ。6本出しマフラーは左右対称に3本ずつ並んでおり、後方からでも6気筒エンジンが分かるようにしている。

前後17インチと思われる現代的な足まわりを装備したカフェレーサースタイルは2022年に発売したホーク11に通じているかのようだが、開発リーダーは同一人物と言われている。

市販された国産並列6気筒モデルは2台

ホンダの並列6気筒エンジンは、1978年に量産車としては世界で初めてCBX(1000)に搭載された。モデル名CBXの「X」は、フラッグシップモデルとして究極のCB、という意図で命名されている。1981年型ではフルカウルやモノサスを採用した。

翌1979年には、カワサキが水冷並列6気筒のZ1300を発売。こちらはCBXの1047ccに対し1286ccの排気量で大きく上回り、105PSのCBXに対し120PSを発揮して対抗した。Z1300はシャフトドライブ採用でツアラー色が強く、コンセプトは異なっていた。

Z1300は1983年にボイジャーとしてフルドレスツアラーに進化したのに対し、CBXはツアラーに進化したものの1982年型で終了。一方、ホンダが1975年に発売したゴールドウイングが、1987年末に水平対向6気筒1520ccエンジンに進化したことで、6気筒モデルとして最終的に勝ち残った。

6気筒エンジンは、レースのように規定された排気量で出力アップを図る際は優位となるが、市販車では重量とコストが増すため最上級ツアラー以外では定着しなかった歴史がある。CBX900が発売されなかった理由は、ここにあるだろう。

CBX(1978年) [HONDA] カワサキのZ1に対抗するため、ホンダは1974年のGL1000に続いてCBXをリリース。エンジン幅はCB750フォアよりも狭く、41.5度のバンク角を確保していた。

Z1300(1979年) [KAWASAKI] 当時ツアラーとしてアメリカで定着していたGL1000に対抗するためZ系の頂点を占めるロングツーリングモデルとしてZ1300をリリースした。

GL1500(1988年) [HONDA] 低重心と縦置きクランクシャフトの直進安定性の高さからバイクと相性のいい6気筒エンジンは水平対向だった。日本でも初の750cc超として発売された。

STRATOSPHERE(2005年) [SUZUKI] 東京モーターショー出品のストラトスフィア。カタナ風の外観に並列6気筒1100ccエンジンで、コンセプトはCBX900に近い。こちらも市販には至らず。

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