
各地で大盛況の中開催を終えた2023年のモーターサイクルショー。そのロイヤルエンフィールドブースには、ひと際大きなインパクトを放つカスタムマシンがあった。コンチネンタルGT650をベースとした、そのマシンの名は「Royal Enfield-改」。ロイヤルエンフィールドが初めて日本のビルダーである「AN-BU Custom Motors」に製作を依頼した記念すべきマシンだ。
AN-BU Custom Motorsによる「ストリートで走るレーサー」
名古屋を拠点としてカスタムバイク、カスタムパーツの製作を行っている「AN-BU Custom Motors」の藤田浩一氏によって手掛けられた「Royal Enfield-改」。その実車両は3月17日から開催された大阪モーターサイクルショーで世界初公開された。クラシカルなネイキッドスタイルのカフェスポーツである「コンチネンタルGT650」をベースとしているが、フルカウルとアシンメトリーなヘッドライトが目立つ、耐久レーサースタイルに大きくその姿を変えている。

大阪モーターサイクルショーにて世界初公開となったAN-BU Custom Motors製「Royal Enfield-改」。1960年代のカフェレーサーをモデルとしたコンチネンタルGT650をベースとし、80年代風の耐久レーサースタイルへ生まれ変わらせた。

「ショーバイクは好きではない」とロイヤルエンフィールドのインタビューに答える藤田氏が追求したのは、「ストリートで、人が跨ってカッコいい」レーサースタイル。AN-BUが送り出すカスタムマシンに一貫しているスタイルだ。

まず目に入るのはフルカウルと、耐久レーサースタイルを決定づける左右非対称のヘッドライト。このスタイルはAN-BU得意のデザインで、アルミ製の武骨なガードが印象的。また、カウルもよく見るとカーボン繊維がうっすらと透けている。
アルミ叩き出しの細いタンクやテールカウル、カーボン製のフルカウルはいずれも70~80年代に活躍した耐久レーサーのオマージュ。このスタイルを実現するためにフレームは一部変更されている。外装パーツはその質感にもこだわられ、アルミパーツは無塗装、カウルはあえてカーボン繊維が目立たないよう、マットブラックのペイントが施された。これは日常の中でついたヤレ感を楽しめる仕上げともいえ、ピカピカでキズ一つないミントコンディションのマシンは、街中で自然に走るスタイルではないというフィロソフィの表れだ。
もちろん性能面でも見かけ倒しではない。レース参戦も行う藤田氏により見直された足回りは、フロントフォークにカヤバ製Φ38mmを選択し、トップブリッジ、ステムもこれに合わせた削り出しのワンオフ。リアショックはYSS製に換装された。またブレーキキャリパーは前後ともにブレンボ製。しかし、絶妙な「チープ感」を演出するために、ハイスペックなスペシャルパーツばかりではなく、あえて国産パーツを使用した箇所もあるという。そんな細かなこだわりが込められた1台なのだ。

外装の仕上げはストリートを走るマシンらしく、ヤレ感が残されている。わざとらしさを廃し、実戦的なスタイリングを実現した。

エンジンはほぼ見えないが、エキゾーストパイプのレイアウトやデザインはこだわられ、緻密に調整されている。アンダーカウルから飛び出し、トグロを巻くスタイルは迫力。エキゾーストの低音を強め、トルクを稼ぐために管長を増加させつつビジュアルのインパクトも狙ったワンオフ。

「ストリートで走るレーサー」であるためナンバープレートも取り付け。クローズドコースやイベントだけがカスタムマシンのフィールドではないというフィロソフィの表れだ。よく見ればナンバープレートの横に、極小サイズのウィンカーも取り付けられている。
ロイヤルエンフィールド×カスタムビルダーが作り出す想像力の極致
インド発のメーカー、ロイヤルエンフィールド。1901年から今に至るまでオートバイの製造・開発を続ける、世界で最も古いオートバイブランドだ。もちろん現行モデルは相応のモダナイズを果たしているが、そのラインナップには水冷エンジン搭載モデルがひとつもなく、シンプルでレトロな風格あるマシンが揃っているあたりは、やはり「世界最古のブランド」らしいプライドを貫いている。
そんなクラシックなマシンに許された楽しみが、思い通りのカスタムを自由に施せること。美しいエンジン造形を活かした魅力を追求することもできるし、レース参戦のためにあらゆる工夫を盛り込むこともできる。国産の名機「SR400」やハーレーダビッドソンのヘリテイジモデルで広がっているような、想像力を活かせるカスタムベースとしても注目されているのだ。今後もロイヤルエンフィールドによる、カスタムシーンの盛り上がりに期待していきたい。

「Royal Enfield-改」のベースとなった「コンチネンタルGT650」。'60年代のカフェレーサーをモチーフにしたスタイリングはもちろん、排気量648ccの空冷OHC並列2気筒エンジンは造形も美しく、カスタムベースとしても注目のモデル。しかしメーカー製のカラーやパーツも充分に魅力的。写真のモデルはカスタムメイドのようなクロームメッキのタンクを持つ「Mister Clean」で、このままのモデルを購入可能。
参考:コンチネンタルGT650主要諸元
・全長×全幅×全高:2119×745×1067mm
・シート高:820mm
・車重:212kg
・エンジン:空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 648cc
・最高出力:34.9kW(47.5PS)/7,150rpm
・最大トルク:52.3Nm/5,150rpm
・燃料タンク容量:12.5L
・変速機:6速マニュアル
・ブレーキ:Front=φ320mmディスク/ABS Rear=φ240mmディスク/ABS
・タイヤ:Front=100/90-18 Rear=130/70-18
情報提供元 [ Royal Enfield ]
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