▲photo by Atsushi Sekino

【カワサキ W800】
ディテール&試乗インプレッション

2016年のW800ファイナルエディションで途絶えていたWシリーズが、最新の排ガス規制のユーロ5に適合して2019年に復活! 2020年の今年はついにWシリーズの王道であるフロント19インチホイールのW800が復活。元初心者向けオートバイ雑誌編集長の谷田貝 洋暁が試乗してみた。

※撮影モデルは2019モデルでカラーリングが“メタリックダークグリーン”で、エンジンガードのオプションが装着されている。

1. どんな場所でもどんなスタイルでも似合うスタイリング

【全長/全幅/全高】2,190mm/790mm/1,075mm
【車両重量】226kg
【軸間距離】1,465mm
【最低地上高】125mm

ワイヤースポークホイールにツインショック、左右2本出しのキャブトンタイプマフラーなど、黎明期のオートバイを連想させるクラシカルなデザインでまとめ上げられたW800。見た目は古めかしいが、インジェクションにABS、ETC2.0を標準装備するなど中身は最新で安心して乗ることができる。

【販売価格】
メタリックオーシャンブルー:1,100,000円

※撮影モデルはメタリックダークグリーン

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2.レトロにしては低めのハンドルポジション

【シート高】790mm

650だった初代ほどではないが、サイドカバーが左右に張り出しており、足が少し広げられる印象がある。ただし790mmと元々シート高は低めなので、身長172cmの体格だと踵までしっかりと付けられる足つき性だ。上半身のポジションは、一文字タイプのバーハンドルのおかげでやや前傾ぎみ。プルバックハンドルが採用されたW800ストリートよりも、スポーティなポジションが設定されている。

3. 街乗り、旅にダートまで、オールマイティな走行性能

重厚感を増して復活したW800

2016年にファイナルエディションとして生産が終了していたWが、ユーロ5の規制に適合して見事に復活を果たした。しかも、アップライトなポジションのW800ストリート、セパレートハンドルのW800カフェ。深みのある塗装やグリップヒーターなどの上級仕様が施されたW800と、2020年からは3種類のバリエーションモデルを備えての堂々復活。今回紹介するW800は、先代と同じ19インチホイールを装備した、シリーズ中一番オーソドックスなモデルである。

先代に一番近いスタイルのW800。ユーロ5に適合した以外はそれほど変わっていないのだろうな? そんな先入観を持ったまま、またがってみたのだが、これが大間違いだったことに気づかされる。まったくというか、全然味付けが違うのである。まず第一にエンジンをスタートさせると、エキゾーストノートが随分野太くなった印象を受けた。バーチカルツインにふさわしい重低音の効いたサウンドになっており、走り出してみるとそんな音の効果も多分にあるのだろうが、中低速のトルクアップを果たしているような印象すらある。実際、仕様諸元を見てみれば、ピークパワーや最大トルクの数値こそほとんど変わってはいないものの、最大トルクの発生回転数が2500回転から4800回転へと移行している。新生Wとして生まれ変わるにあたって、なんらかのエンジンキャラクターの変更が行われているいることは確かなようだ。

しかし、もっと驚かされたのは車体の方だ。エンジンだけでなく車体の走行フィーリングも思いのほか変わっているのだ。端的に言えばエンジン同様に走りのキャラクターに重厚感が増した印象だ。先代のWはどちらかというと軽快感のある素直なハンドリングだった記憶があるが、新生Wは重めのハンドリングで直進性も強められている。誤解を恐れずに言えば結構クセがある。実際、コーナリングではわずかにオーバーステアな味付けがされているようで、セルフステアリグを効かせながら曲がっていくと、ハンドルがわずかに内側へと切れ込んで行く。ただそれも極端に乗りづらいという訳ではなく、うま~く“味付け”レベルに収められている。生まれ変わった令和のWは、ゆったりとしたハンドリングという個性を与えられて復活したのだ。

実際、何が変更になったのだろう? 仕様諸元上は、軸間距離もキャスター角もトレール量も一緒なのだが? ...よくよく旧型と新型を見比べてみれば、フロントフォークのボトム形状が変更されていたり、タイヤの銘柄も変わっている。

このWシリーズには、650時代から何度となく試乗しているが、そのオールマイティ具合に毎度感心させられる。低速から扱いやすいエンジン特性は、街乗りや通勤で使いやすく、空冷とはいえ773ccの排気量があれば高速走行だって十分こなす。しかも、クラシカルなスタイリングのためのスポークホイール&19インチフロントタイヤという組み合わせのおかげで、ダートへ持ち込んだってそこそこ扱いやすい。通勤からツーリングまで幅広い用途で使えるのがこのWシリーズの良さなのだ。

4.ディティール メーター&灯火器

【表示項目】
スピード/エンジン回転数/時計/燃料警告灯/オドメーター/トリップメーター×1

左右2連の指針式アナログメーターを装備。右はエンジン回転系でレッドゾーンは7000回転域から。左は速度計で下部には小さいながらデジタルパネルを装備し、時計、オドメーター、トリップメーターが2連メーターの間にあるボタンで切り替えられるようになっている。燃料周りは警告灯のみで、点灯時の燃料残量数は3.8リットル。

5.ディティール 走行性能

・バーチカルエンジン

【エンジン形式/排気量】空冷4ストローク OHC4バルブ並列2気筒/773cc
【最高出力】38kW/6,500rpm
【最大トルク】62Nm/4,800rpm

シリンダーが地面に対して直立しているツインエンジンという意味で“バーチカルツイン”と呼ばれる。しかもWのエンジンはクランクレイアウトが360度。つまり左右2つのピストンが同時に上下するため、バーチカルツイン特有の突き上げられるような鼓動感も強調される。新型のW800はユーロ5対応で排気音が野太くなったせいか、この鼓動感が旧作より際立っているように感じる。

・エンジンの造形美

Wシリーズのエンジンは空冷フィンをはじめとする造形にとにかくこだわっており、その花形と言えるのがエンジン右側にある特徴的なベベルタワーだ。この内部では下部のクランクから上部のシリンダーヘッドでカムシャフトを駆動させる動力を伝えるためにシャフトが回転。動力伝達に傘型歯車(ベベルギヤ)を使うことからベベルタワーと呼ばれる。またエンジンの美しさのこだわりはエンジン下部に取り付けられているオイルフィルターカートリッジのカバーを付けてしまうほどだ。

・足まわり
【タイヤサイズ】フロント:100/90-19/リヤ:130/80-18

W800は、バリエーションモデルでフロント18インチタイヤを採用するストリート、カフェとは違い19インチサイズのホイールを採用している。このワンサイズ大きいタイヤが回転することでより大きなジャイロ効果が発生し、直進性の強いクラシックマシンらしいキャラクターを作り出している。また新型W800はディメションこそ旧型と変わらないものの、タイヤチョイスがダンロップのK300GPに変わった他、フロントフォークのボトム周りを一新。このあたりの変更でよりクラシカルで重みのあるハンドリングのキャラクターを作り出しているようだ。

・ハンドル

バリエーションモデルのW800ストリートが、よりアップでプルバックなポジション(幅925mm)なのに対し、W800のハンドルは一文字に近く(幅790mm)、W800ストリート比ですこしだけ前傾になるスポーティなポジションが作られている。

・ブレーキ

【フロント】トキコ片押し2ポット/φ320mmディスク
【リヤ】片押し2ポット/φ270mmディスク

旧型は、フロントはディスクブレーキでリヤがドラムブレーキだったが、新型のWシリーズは、ABS装備義務化への対応のために前後のブレーキを油圧ディスク化。ABSにキャンセル機能はなく、介入具合一種類の1チャンネルタイプ。介入具合もほどよく、ロードセクションからダートまで使えるぐらいの味付けが施されている。

・シフトペダル

ギヤは5速リターン式。スプロケットはフロントが15丁でリヤが37丁。チェーンは520のシールチェーンを採用している。

・マフラー

マフラーは植物のガマの穂のような形状が特徴的なキャブトンタイプマフラー。ユーロ5に対応しているとのことだが、アイドリング音は意外に野太く、先代よりも迫力が増している印象だ。

・インジェクション

クラシカルな外観だが、燃料供給装置はキャブレターではなくフューエルインジェクションを採用。

6.ディティール ユーティリティ

・燃料タンク

【燃料容量】15L
15Lの容量が確保されたタンクは、ティアドロップ形状でニーグリップを行う部分には、今では珍しいラバーパッドを装備。燃料キャップはヒンジ式で燃料はもちろんレギュラーガソリン。タンク下にはアクセサリー電源の取り出し口も備えている。

・シート

ホワイトのパイピングで化粧された、タックロールタイプのシート。全体に厚みがあり座り心地がいい。シートは車体左側のキーシリンダーで取り外すことができ、内部にはETC車載器が内蔵されている。

・スチールフェンダー

クロームメッキが施されたスチールフェンダーもWのアイデンティティ。新型Wシリーズは、旧型ではシート横にあったウインカーがテールランプ側に移されて、荷物が積みやすくなっている。

・スチール製サイドカバー

両サイドのサイドカバーもプラスチックではなく、高級感を求めて金属素材を採用。内部はエアクリーナーボックスで、スライド式のフィルターが内蔵されている。左側からはヒューズボックス&バッテリーにアクセスできる。

・センタースタンド

サイドスタンドに加えてセンタースタンドも標準装備。おかげでチェーン注油やスポークの清掃、また旅先でのパンク修理などがしやすい。

・レバーアジャスター

クラッチレバーは5段階、ブレーキレバーは4段階のレバーアジャスターを装備。工具なしで好みの握り幅に変更できる便利な装置だが、カワサキ車に多い機構だ。

・ETC2.0標準装備

シート下にほとんどスペースはないが、後部にETC車載器が標準装備されている。アンテナはメーターの前に取り付けられており、メーター内にはインジケーターが埋め込まれている。

・荷かけフック

シートの両側には、タンデムシート上に荷物を積むための荷かけフックが装備されている。指の上に見えるのはシートを取り外すための鍵穴。下はヘルメットホルダー。

・スイッチボックス

【左】ヘッドライト切り替え/ウインカー/ホーン/パッシング/ハザード/グリップヒータースイッチ
【右】スタータースイッチ/キルスイッチ

必要最低限の機能しかないシンプルなスイッチボックスだが、W800にはなんと温度調整機能がついたグリップヒーターが搭載されている。オフ含め4段階の温度調整が可能となっている。

7.まとめ

スポーツしないならWのキャラがちょうどいい!?

Wシリーズの最大特徴は、シチュエーションを選ばないキャラクターもあるが、一番はやはりウエアや老若男女乗る人を選ばない普遍的なデザインだろう。日本中どこへ乗り付けても違和感がなく、若い女性でも男性でもまた年配のライダーだって似合う。ウエアも同じ。タウンウエアのようなカジュアルな格好で乗ってもいいし、かっちりバイクウエアを着込んで走っても違和感がない。速くスポーティに走ることに興味がなければ、ツーリングから街乗りまで、これほどオールマイティに使えるバイクも珍しい。

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