
文/Webikeスタッフ:Johnny
量産車で初のフルカウル採用、量産車で初のキャストホイール採用。
これをエポックメイキングと呼ばずしてなんと呼ぶ?
「上がり」のバイク、というフレーズを聞いたことがありますか?
多様なメーカー・多様な車種を乗り継ぎ、酸いも甘いも噛み分けたベテランのライダーが、最後の愛車として選ぶ一台を指すフレーズです。
そんな「上がり」のバイクと評される車両を多数排出する BMW の名車の中から、「上がり」というより今からでも所有して「一生」のバイクとして、できる限り長く連れ合いたくなるような一台をピックアップ!
防風性能に優れる以上に人目を引く大きなフェアリング、センタースタンドでメンテナンスには困らない、リアとサイドにはキャリアが付属し積載性もバッチリ。
タンデム・ロング・キャンプと、全てのツーリング要素を網羅する装備です。ETCだけ装着すれば完璧でしょうか。
フロントビューがボリューミーなフルフェアリングに目が行きますが、オートバイに対してフェアリング(カウル)と呼ばれる部品が量産車に採用されたのは、このR100RSが世界初!
R100RSは、現代に連なる「全ての」カウル付きバイクの始祖に当たる、まさにエポックメイキングな存在...
フェアリングに内蔵される丸目のヘッドライトを樹脂のパネルでカバーし、ウインカーもカウル形状に合わせてビルトインでデザインするという高度なコンセプトは、量産車での初採用とは思えない造り込み。
この凝った造りによって「フルフラット」な表面形状を実現。走行中の空気抵抗を劇的に遮断しています。エアロダイナミクスの観点では、製造から40年を経ても現行車に劣らない完成度です。
カウル付きバイクの原点にしてこの造り込みは当時、工業の最先端を走る国家であった「West Germany(西ドイツ)」製品の為せる技。
R100RSが生まれた時代、まだベルリンには物理的に大きな壁が存在したのでした。
クラシカルブラックの車体には細いホワイトのラインが走り、左右に張り出したシリンダーヘッドからは弧を描いて後方へと伸びるクロームメッキのエキゾーストパイプ。
このR100RSが持つブラックペイントとクロームメッキのコントラストは、ネジ一本から始まり、車体全体に行き渡るインダストリアルデザインの妙を体現していると感じます。
虚飾的でなく、質実剛健とした実直な美しさです。
フューエルタンクで控えめに輝くブロンズともゴールドとも形容しがたいBMWのエンブレムからは、年代を重ねた得も言われぬ気品を感じます。
アンティーク、ヴィンテージ、そんなフレーズがここまで似合う風格のバイクも少ないですね。
どことなく、高級腕時計を想起させるコクピット。全身を包み込むようなサイズのフルフェアリングによって外界と遮断されることで、ヨーロッパのアウトバーンでも日本の高速道路でも、文字通り誰の邪魔も入らない至福のひとときが得られます。
車体の駆動はメンテフリーなシャフトドライブ。チェーンドライブしか知らないライダーの中には食わず嫌いで敬遠する向きもありますが、現代のフラッグシップモデル R1250GSにおいてもこの機構が変わらず採用されているのは、長距離のツーリングという用途においては疑う余地のないものであることの証明でしょう。
重心の低い、空冷2バルブOHVボクサーエンジンの鼓動と相まって、チェーンドライブとは異なる車体制御のフィーリングもオーナーだけが楽しめる、比較対象の存在しない唯一の味わいです。
モデル前期にはリアがドラムブレーキのモデルもありますが、この車両に関しては前後ディスクブレーキ仕様です。
ワイヤースポークライクなデザインのキャストホイールが印象的ですが、実は「キャストホイール」もR100RSで初めて量産車に採用されています。
カウルなし、ホイールはワイヤースポークが当たり前の時代に、突然フルカウルとキャストホイールをダブルで初採用した市販車が登場したときの技術的なインパクトといったら、日本製の4気筒マシンの登場を超えるものだったのではないでしょうか。
現代のZ900RSもスポークの細いデザインのキャストホイールを採用していますが、ネオクラシックと本物のクラシックの間に共通する部分で興味深いです。
現代でも最新マシンに引けを取らないユーティリティに独特の乗り味。当時から現代にまで息づくBMWの伝統とクラフトマンシップ。バイクの歴史や世界史についてまで想いを馳せさせるヒストリー。
近代オートバイの原点にして、終着点の一つとも言えるR100RS。ライダー人生の後半に差し掛かるまで選択肢に加えないのは、勿体ないことだと思いませんか?
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