
日本では、新東名高速などの特別な区間でも、高速道路の制限最高速度は120km/h。一般道なら同60km/hなので、馬力なんてそんなに必要ありません。それでも、やっぱり憧れちゃうのが超ハイパワー。しかもそれが、かつては「夢のまた夢」なんて言われた200馬力ともなれば、その数字だけで所有欲が満たされます。そこで今回は、現在新車で購入できる国産200馬力を探しました!
昔のライダーたちが夢見てきた200馬力の大台

量産市販車で初めて「最高出力200馬力」を公称したのは、2008年に発売が開始された海外仕様の2代目VMAXでした。「怒涛の加速感」をテーマに、可変吸気ファンネル機構を備えた1679cc水冷V型4気筒エンジンをアルミ製フレームに搭載。コストという制約を超越した、ハイクオリティな設計も特徴でした。ちなみにこのVMAXは、2009年に日本国内仕様も導入。こちらは151馬力に抑えられていました。
モーターサイクルの歴史を振り返ると、進化の裏にあるのは「速さ」やそれを実現するのに不可欠な「馬力」を追い求める技術者たちの熱意でした。消費者である一般ライダーたちは、最高出力というスペックから速さを感じて、ハイパワーに憧れてきたわけです。
ほんの20年前、「最高出力200馬力」というのは、一般的な量産市販車の世界ではまだまだ憧れの域。例えば、ロードレース世界選手権の最高峰クラス(MotoGP)が、2ストと4ストの混走になった初年度の2002年、ヤマハが導入した4スト990ccのYZR-M1は「最高出力200馬力以上」と公表されていました。ホンダも、2001年のプロトタイプ段階では、同じく4スト990ccのRC211Vを「最高出力200馬力以上」と発表しています。
その後すぐに、4スト990ccのMotoGPマシンは「240馬力以上」の時代を迎えますが、2007年に800cc化されると、再び最高出力は「200馬力以上」というレベルに。つまり最高出力200馬力というのは、わずか15~20年前の世界最高峰ワークスオンロードレーサーと同等の数値というわけです。そして今なら、憧れの200馬力は数百万円の資金さえ用意できれば誰でも入手できるのです。
200馬力の大台に達しているのは5車種8タイプ
車名 | エンジン形式 | 最高出力 | 価格 |
---|---|---|---|
CBR1000RR-Rファイアーブレード/SP | 999cc水冷並列4気筒 | 218ps/14500rpm | 242万円/278万3000円 |
Ninja ZX-10R KRT EDITION | 998cc水冷並列4気筒 | 203ps/13200rpm | 233万2000円 |
YZF-R1/M | 997cc水冷並列4気筒 | 200ps/13500rpm | 236万5000円/319万円 |
Ninja H2 SX/SE | 998cc水冷並列4気筒+スーパーチャージャー | 200ps/11000rpm | 273万9000円/305万8000円 |
Z H2 SE | 998cc水冷並列4気筒+スーパーチャージャー | 200ps/11000rpm | 225万5000円 |
その時代の最先端技術が用いられる1000ccスーパースポーツのカテゴリーでは、2015年ごろから最高出力が200馬力に達するモデルが増え、現在は大台のさらに上を行く車種も少なくありません。また近年は、スポーツツアラーやストリートファイター系ネイキッドでも、200馬力モデルが登場しています。
2023年3月現在、国内4メーカーの正規ラインアップに並ぶ200馬力の大台到達マシンは5車種。仕様が異なるバリエーションモデルもひとつずつ数えると8タイプです。このうちもっともパワーがあるのは、ホンダのCBR1000RR-Rファイアーブレード。欧州や日本などで最新排ガス規制(欧州地域ではEURO5)が施行されたことで、ラインアップ落ちや馬力ダウンを余儀なくされたモデルも多く、RR-Rの218馬力というのは、ドゥカティのパニガーレV4Rと並び、ストック状態では2023年型の一般的な量産市販車最高値となっています。
ちなみに4メーカーではスズキのみ、200馬力マシンがありません。197馬力のGSX-R1000Rが生産終了扱いとなっているのに対して、スズキには驚速アルティメットスポーツモデルのハヤブサもありますが、こちらは先代よりもややダウンの188馬力。これは、数字としてのパワーではなく、実質的な速さを求めた結果です。
それでは、ホンダとヤマハとカワサキの200馬力大台モデルについて、簡単に紹介します!
国産200馬力バイクはコレだ!
ホンダ CBR1000RR-Rファイアーブレード/SP
エンジン屋と言われるホンダの意地が詰まった218馬力
先代CBR1000RRの後継として2020年型で新登場したフラッグシップスーパースポーツ。RR時代は最高出力でライバルマシンに負けていることがほとんどでしたが、そうこうしているうちに他社は、上限は200馬力という暗黙の了解を破り、どんどん先に……。そんな状況下で、“エンジン屋”と言われることもあるホンダがいよいよ本気で対抗した結果、999cc水冷並列4気筒エンジンは218馬力にまで達しました。
2022年型ではマイナーチェンジを受け、最新排ガス規制にも適合化されていますが、このときも吸排気系の変更で218馬力をキープ。こんなところにも、ホンダの意地が感じられます。SPは電子制御サスペンションをはじめとする上級装備ですが、パワーユニットはスタンダードと同じです。
カワサキ ニンジャZX-10R KRTエディション
ライバルに先駆け10年以上前から200馬力
カワサキの旗艦スーパースポーツで、上級バージョンは市販車レースベース車としての役割も担い、スーパーバイク世界選手権ではジョナサン・レイの6連覇を含み過去10年間で7度もチャンピオンマシンとなったのが、ニンジャZX-10Rシリーズ。じつはこのモデル、2011年の段階で量産1000ccスーパースポーツでは初めて200馬力の大台に到達していました。
998cc水冷並列4気筒エンジンは、2016年にマシンがフルモデルチェンジされたときはまだ200馬力キープでしたが、2019年型で熟成されたときには203馬力に到達。再びモデルチェンジが施された2021年型で最新排ガス規制に対応しましたが、このときも203馬力を維持しています。2023年のカワサキ国内ラインアップでは、スーパーチャージドエンジンシリーズを抑えて馬力トップです。
ヤマハ YZF-R1/M
2015年型で早くも200馬力に到達
2015年型で大幅刷新され、このときに200馬力の大台に達したのがYZF-R1。997cc水冷並列4気筒エンジンには不等間隔燃焼のクロスプレーン型クランクシャフトを採用して、ライダーのスロットル操作に対してリニアなトラクション性能を追求する一方で、ライバルマシンに見劣りしない最高出力も確保されています。
ヤマハは、このマシンをベースとしたストリートファイター系ネイキッドのMT-10も展開していますが、こちらはチタン製コンロッドの採用などが省かれていて最高出力166馬力。そのためYZF-R1シリーズが唯一、ヤマハの大台到達マシンです。R1Mは電子制御サスやカーボン外装などを専用装備しますが、エンジンは共通。こちらも、2020年型で馬力を維持したまま最新排ガス規制に適合化されています。
カワサキ ニンジャ H2 SX/SE
バランス型スーパーチャージドエンジン搭載
同じ川崎重工業のガスタービン部門や航空宇宙分野などからも技術移管を受けつつ開発された、過給機まで完全自社製のスーパーチャージドエンジンを搭載。優れた低中回転域トルクや燃費性能を実現した“バランス型”と呼ばれる仕様ですが、それでも998cc水冷並列4気筒エンジンは200馬力を発揮します。
ニンジャ H2 SXそのものは、鋼管トレリスフレームを採用したフルカウルのハイスピードスポーツツアラーで、2022年型の熟成によりミリ波レーダー活用のアダプティブクルーズコントロールと死角検知機能を新搭載。さらに2023年型では、カメラセンサーを使用したオートハイビームも新たに採用しました。上級版のSE仕様は前後サスが電子制御で、フロントブレーキがグレードアップされています。
カワサキ Z H2 SE
カウルレスなのに200馬力という狂気
ニンジャ H2 SXシリーズと同じく、完全自社製の998cc水冷並列4気筒スーパーチャージドエンジンを鋼管トレリスフレームに搭載。しかしZ H2は、200馬力のモンスターでありながら走行風を避けるフルカウルを装備していません。ともすれば異常にさえ思える、その“漢らしさ”こそが魅力。過給機ゆえの独特なエンジンサウンドとともに、クローズドコースで全開にしてみたいマシンです(※楽しいですが、かなり狂暴です)。
2023年型の日本仕様は、前後サスがショーワ製の電子制御式でフロントブレーキにブレンボ製のキャリパーとセミラジアルマスターシリンダーを採用した、上級版のSEのみ設定。電子制御も充実されていますが、それでも価格は225万5000円で、2023年の国内メーカー製200馬力モデルでは最安です。
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