さまざまな要因が重なり、世間では“物価高”のニュースが飛び交う昨今。これはバイクも例外ではなく、部材高騰などに加えてメーカーは排ガス規制対応も迫られたことから、新車価格はじわじわと上昇し続けています。そこで注目したいのが、リーズナブルな単気筒エンジン搭載の国内メーカー製モデルたち。シンプルだけど、鼓動感やトルクも魅力です!
目次
低回転域トルクがあり、軽さや安さが長所
現在の一般的なモーターサイクルに使用されている4ストローク単気筒エンジンは、同排気量の2気筒以上と比べたときに、低回転域からトルクに厚みがある傾向。それほど高回転域まで回らないので、最高出力を稼ぐのには不向きですが、低回転域でもスロットル操作に対してダイレクトに反応してくれる点も長所です。
加えて、単気筒エンジンは機構がシンプルなので、基本的には軽量コンパクト。車重も抑えられるため、一般公道の速度域でキビキビ走らせやすいというメリットがあります。また、振動も発生しやすい代わりに鼓動感が多め。のんびり走らせたときに、この鼓動感が“バイクらしさ”の演出にもつながります。
そして、機構がシンプルということは、生産コストを抑えやすいということ。だから単気筒エンジンを搭載したバイクは、同排気量帯で同じようなカテゴリーの2気筒以上モデルと比べて、新車価格が低めに設定されていることがほとんどです。
昨今、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などに起因して、世界情勢が以前とは大きく変化したことで、バイク生産にも部材高騰や物流コスト増の波が押し寄せています。
2022年11月からは継続生産車にも平成32年(令和2年)国内排出ガス規制が適用されたことで、メーカーはこれに対応することも迫られました。それらの結果、バイクの新車価格は以前と比べて上昇傾向。2気筒以上と比べてリーズナブルに楽しめる単気筒モデルは、手軽にバイクを楽しみたいユーザーにとって大切な存在なのです。
選べる車種は残念ながらそれほど多くない
車名 | エンジン形式 | 最高出力/最大トルク | 価格 |
---|---|---|---|
GB350 | 348cc空冷単気筒 | 20ps/3.0kgf-m | 55万円 |
GB350S | 348cc空冷単気筒 | 20ps/3.0kgf-m | 59万4000円 |
ジクサー250 | 249cc油冷単気筒 | 26ps/2.2kgf-m | 48万1800円 |
ジクサーSF250 | 249cc油冷単気筒 | 26ps/2.2kgf-m | 51万4800円 |
CB250R | 249cc水冷単気筒 | 27ps/2.3kgf-m | 56万4300円 |
KLX230SM | 232cc空冷単気筒 | 19ps/1.9kgf-m | 57万2000円 |
近年ではヤマハが、排ガス規制に対応できないことを理由にSR400の生産を終了。さらに、セロー250やトリッカーも生産終了となったことから、ヤマハの国内ラインアップからはマニュアルクラッチの単気筒モデルが消滅した状態です(2023年3月現在)。
一方でホンダは、ほぼSR400と入れ替わるようなタイミングで、GB350/Sを日本市場に導入。こちらは、単気筒らしい低価格もウケて大人気となっています。また250ccクラスには、水冷単気筒エンジンのCB250Rもラインアップされています。
スズキには、超シンプルな154cc空冷単気筒のジクサー150もありますが、軽二輪クラスのフルサイズ排気量モデルとして249cc油冷単気筒のジクサー250シリーズも展開中。ジクサー150は最高出力13馬力で、さすがに高速道路を含むツーリングで使うのはキツいですが、250ならある程度の余裕が得られます。カワサキは、単気筒エンジン搭載車が消滅間近。最新排ガス規制に適合化したモデルは1機種もありませんが、126cc超ならKLX230SMが在庫販売されています。
ちなみに、海外メーカーにも目を向けると、単気筒エンジンを搭載した軽二輪クラス以上のオンロードスポーツ系モデルとしては、例えばBMWがG310R、KTMがRC390やDUKE390、ハスクバーナがヴィットピレン401などをラインアップしています。これらは、本国以外で生産することでコストダウンも図ってあり、外国車としては比較的リーズナブル。とはいえ国内メーカー製の単気筒モデルと比べたら割高傾向です。
そこで今回は、排気量200cc超の国内メーカー製オンロードモデルに限定して、2023年3月現在のメーカー新車ラインアップにある車種をすべて紹介します。リーズナブルに新車を楽しみたい人は、ぜひ参考に。
国産単気筒ロードスポーツはコレだ!
ホンダ GB350
雑味のないパルス感も大きな魅力
インドのハイネスCB350をベースに開発され、日本仕様は熊本製作所でGB350として生産されています。発売開始は2021年4月。低価格もウケて大人気となり、しかも生産が遅延していることから、デリバリーが追いつかない状況が続いています。車体は大きめで、そのぶん車重もありますが、ハンドルグリップ位置がかなり手前でステップがやや前方に位置することもあり、ゆったり乗れます。シリンダーが垂直方向に伸びたバーチカルシングルエンジンは、古めかしい振動が皆無に近く、あるのは楽しさを生む鼓動感のみ。これも大きなセールスポイントです。
ホンダ GB350S
こだわりの専用設計でスポーティに
GB350のバリエーションモデルで、発売開始はGB350より少し遅れた2021年7月。外装類は、前後フェンダーとサイドカバーをGB350のスチール製から樹脂製に変更しつつ、燃料タンク以外はすべて専用デザインとしています。FIカバーやウインカー、ヘッドライトケースの装飾などもスタンダードとS仕様でそれぞれ専用化。シートも、表皮だけでなく内部形状から異なります。後輪は18→17インチ化され、タイヤはワイドなラジアルタイプに。ハンドルやステップの位置も変更して、よりスポーティな雰囲気を与えてあります。
スズキ ジクサー250
伝統の油冷機構をブラッシュアップ
インドのスズキで生産され、日本では2020年6月に発売が開始されました。最大の特徴は、スチール製フレームに搭載される新開発の油冷単気筒エンジン。1985年の初代GSX-R750以降、スズキのアイコンとなってきた油冷エンジンは、2008年にGSX1400が生産終了となったことで一度はその歴史に幕を下ろしましたが、このシリーズで復活を遂げました。ただし今回の油冷はかつてとは構造が異なり、シリンダーヘッドまわりにオイルジャケットと呼ばれる冷却回路を作成し、そこにエンジンオイルを流す、水冷のような構造です。
スズキ ジクサーSF250
フルカウル&セパハンでスポーティに
ジクサー250よりも2ヵ月早く国内デビューを飾ったジクサーSF250は、車体基本部こそネイキッド版と共通化されていますが、フルカウルを装備。ハンドルはセパレートタイプになっています。インド生産ということで、価格は50万円台前半に抑えられていて、これも大きな魅力。ジクサー250と同性能の油冷単気筒エンジンは、オイルクーラーで冷やしたエンジンオイルを直接オイルジャケットに流すことでエンジンを冷却。オイルを流す速度も、徹底的に研究されています。またオイルクーラーには、渋滞などを考慮して電動ファンも装着されています。
ホンダ CB250R
従来の単気筒がネイキッドにも残る
ホンダは2011年に、フルカウルスーパースポーツのCBR250Rを新設計して市場投入。249cc水冷単気筒エンジンを搭載したこのモデルは、2017年に水冷並列2気筒のCBR250RRにバトンタッチして消滅しましたが、CBR250R用に開発された単気筒エンジンはその後、オフロードモデルやクルーザー、そしてネイキッドなどに流用されてきて、今もしっかり現役です。ネオスポーツカフェシリーズの軽二輪仕様となるCB250Rもそのうちの1台。単気筒エンジンの長所を活かして車体をコンパクトにまとめ、車重を144kgに抑えています。
カワサキ KLX230SM
恐らく一度限りのモタード復活モデル
スチール製ペリメターフレームに232cc空冷単気筒エンジンを搭載したオフロードモデルのKLX230Sをベースに、前後ホイールを17インチ化してオンロードタイヤを履かせ、フロントブレーキディスクを大径化。専用デザインのヘッドライトを与えるなどしたスーパーモタードモデルがKLX230SMです。日本での発売開始は2022年10月15日ですが、じつはこのエンジンは最新の排ガス規制に適合化されておらず、発売からわずか2週間後には生産できない状態に。しかし販売には規制がないため、現在も新車ラインアップに残ります。
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レブルとCRFどこいった?
ジグサー150SF存在は凄く貴重
これに触れて欲しかった
因みに私はそれに乗っている