320km/hのスピードメーターを持つZZ-R1100で最速の名を欲しいままにしたカワサキだったが、1997年にホンダのCBR1100XX、1999年にはスズキのGSX1300Rハヤブサにその地位を奪われてしまった。それに対抗したのがZX-12Rで、2001年からの速度自主規制開始前に滑り込みで間に合わせる形で2000年にリリースされた。

ホンダの追撃にキレたカワサキが生み出した異色コンセプト

当時類を見ない147PSという最高出力で世界最速を誇ったZZ-R1100D型がデビューしたのは1993年のこと。スピードメーターは320km/hまで刻まれ、現在の”ギガ”よりも語感の強い”メガ”スポーツと呼ばれた。そして、メガスポーツはカワサキ一強の牙城になっていた。

ホンダはZZ-R1100には対抗せず、1992年にCBR900RRをリリース。徹底的に軽さを追求し、当時のリッター級で並外れた運動性を発揮。ZZ-R1100(当時はC型)に対しては「0-1000mまでの加速は同等以上にする」(開発者談)と割り切っており、これがスーパースポーツの元祖になった。

ところが、ホンダがCBR900RRを基礎とするエンジンを1137ccに拡大してZZ-R1100を大幅に上回る164PSのCBR1100XXを1996年末に発売。これに対抗するためカワサキは、スーパースポーツと同等の運動性をもったメガスポーツという異色のコンセプトとなるZX-12Rの開発を進めたのだ。

Ninja ZX-12R(2000年) [KAWASAKI] 20世紀最後の年に登場したメガスポーツの新機軸。178PSという当時最強のパワーを叩き出し最速の座への返り咲きを目指した。

ZZ-R1100(1993年) [KAWASAKI] 1984年のGPZ900Rの水冷並列4気筒エンジンを進化熟成させ排気量は1052ccまで拡大。ツインラムエアシステムに147PSの出力で300km/hに迫った。

CBR1100XX(1997年) [HONDA] 167PSの最高出力だけでなく快適性や安全性を高次元でバランスさせ「世界最高性能」を目指した。メーター読みで300km/hを超えて話題になった。

GSX1300R Hayabusa(1999年) [SUZUKI] メガスポーツに突如参入したスズキは、GSX-Rをそのまま大きくしたハヤブサをリリース。1299ccの排気量と175PSのパワーでライバルを圧倒した。

エンジンはコンパクト化を追求! ZX-9Rと同じボア×ストローク比に

大きなスーパースポーツを目指したカワサキは、1199ccのZX-12RのエンジンをZX-9Rと同じ0.67というボア×ストローク比としている。ZX-9Rは1994年にカワサキがホンダCBR900RRに対抗して発売したスーパースポーツで、12Rのエンジンはこれをベンチマークにしている。

エンジンは徹底的にコンパクトさを追求し、クランクシャフトからドライシャフトまでの寸法は9R比で+3mm、エンジン全長も+8mmに留めている。吸気側12度、排気側13度のバルブ挟み角もZX-9Rと同じ数値で、ZZ-R1100からエンジンは大幅にコンパクト化され12kgも軽量化された。

シリンダーは当時先進のオールアルミ製メッキタイプとし、コンパクト化と放熱性が向上。さらに電子制御式燃料噴射を採用していたのもZX-12Rのトピックと言える。当時はまだキャブレター式がドライバビリティに優れると言われていたが、技術が追いつき始めていた時期でもあった。

ZX-9Rと同じボア×ストローク比、バルブ挟み角を採用し、9Rの排気量アップ版としたエンジン。最高出力は178PS/10500rpmと、100cc排気量が大きいハヤブサを上回るパワーを発揮した。

クランクシャフトの下に1軸2次バランサーを装備。ZZ-R系のオルタネーターを廃してジェネレーターをクランク軸に配置、クラッチやヘッドカバーなどをマグネシウム製とし軽量化を追求した。

GPZ900R系水冷直4が踏襲していたロッカーアームを廃してバルブ直押しのコンパクトなシリンダーヘッドを採用。燃焼室もコンパクトで圧縮比は12.2:1となる(ZZ-R1100は11:1)。

アルミモノコックフレームはKR500のスピリットを踏襲

ZX-12Rのエンジンは、スーパースポーツ譲りのコンパクト設計としていたが、これはCBR1100XXやハヤブサと変わりはない。ところがフレームは独自性の塊で、従来のツインチューブフレームを脱するバックボーンモノコック構造としているのがユニークだ。

ZX-9R並みにコンパクト化されたエンジンの利点をさらに生かすべく、エンジンとほぼ同じ幅のバックボーンフレームからエンジンをぶら下げる構成にして、フレームをエアボックスとしても活用しているのだ。これにより全幅はZX-9Rの730mmに対し725mmを達成している。

この手法はカワサキのグランプリレーサーのKR500から着想を得ており、ZX-12Rの記念ブックにはKR500のモノコックフレームが掲載されていた。KRはフレームに燃料タンクの役割を与えていたのをエアボックスに置き換えてスペース効率を追求していた。

一方、燃料タンクはライダーのシート下まで伸ばすことで容量を確保。これは、重量物を重心に近づける意味もあり、2002年にデビューしたモトGPマシンRC211Vに先駆けて同様の効果を狙ったものだ。これらのアプローチでZX-12Rはスーパースポーツを目指した。

水色に着色された部分がエアボックスでアルミモノコックフレームがその役割を果たしている。燃料タンクがシート下まで伸びており、20Lの容量を確保する。

フレームはへの字型でZZ-R1100よりも12kg軽量。前方にラムエアの吸入口、真ん中にエアクリーナーエレメントの差し込み口、大きく空いた2つの穴はメンテナンスホールだ。

カウルを外すとエンジンとフレームの幅がほぼ変らないのが分かる。この車体レイアウトは、2006年のZZR1400、2012年のZX-14Rにも受け継がれることになった。

KR500(1982年) [KAWASAKI] 1980年から3年に渡りWGP500に参戦したKR500の最終型。ZX-12Rはモノコックフレームの伝統を受け継いでスーパースポーツを目指した。

川崎重工グループならではの航空機部門とのコラボで空力を追求

ZX-12Rでフレームと並んで独自性が発揮されたのは、航空機部門のノウハウを生かしたカウル設計だ。今では当たり前となっているウイングレットを2000年の時点で装備しているところに先進性が発揮されているのが分かる。

他にもフロントフォークボトムピースに突起を設けており、これが空気の流れに作用しエンジンの冷却効果を高める効果があるという。また、最も風圧の高い位置にラムエアダクトの吸入口を突き出しており、圧力を最大化している。

カウルの両側にあるウイングレットは、フロントまわりから乱流がカウルの上部の空気の流れに影響するのを防ぐためのもの。現在のようにダウンフォースを発生させる機能はない。

川崎重工航空機部門の協力を得て風洞実験が繰り返されミラーの形状も高速での空気抵抗を減らすデザインとなった。これが発展してH2Rではダウンフォースが得られるウイングになった。

倒立フォークのボトムピースにある突起部は、空気の流れを車体から遠ざけて空気抵抗を軽減するのが狙い。これによりラジエターを通過する空気抵抗も抑えて冷却効果が増すという。

圧巻のラムエアダクトはフロントフォーク両サイドのダクトからエアボックスに導かれる。ダクト内には騒音を低減するレゾネーターも設置されている。

高速域での空力向上に貢献するシングルシートカウルを標準装備している。ハヤブサも「コブ」と呼ばれるシングルシートカウルを採用しているが、12Rはスマートな形状だ。

2000年型は350km/hのスピードメーターを採用。独「モトラッド」誌のテストで実速300km/hを突破したが、ハヤブサには敵わなかった。そして、現在も生き残っているのはハヤブサだけだ。

デザインスケッチにはSF映画の近未来バイクのようなアイデアもあった

最終に近いと思われるデザインスケッチ。この時点でカウルサイドのルーバーが描かれており、2012年のZX-14Rのイメージが生まれていた。

スーパーカーのようなスケッチもあり、これには現代のスーパースポーツのようにアッパーカウルにウイングレットが装着されている。

中には近未来的デザインのスケッチもあった。現実味は低いがこういった振り幅の中から候補を絞っていったと思われる。

カワサキNinja ZX-12R主要諸元

・全長×全幅×全高:2080×725×1185mm
・ホイールベース:1440mm
・シート高:810mm
・車重:210kg(乾燥)
・エンジン:水冷4ストローク並列4気筒1199cc
・最高出力:178PS/10500rpm
・最大トルク:13.66kg-m/7500rpm
・燃料タンク容量:20L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=200/55ZR17

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