
2023年のニューモデルで注目されているホンダのCL250/CL500のルーツとして1962年登場のCL72スクランブラーが知られているが、CLシリーズ最大排気量を誇るコンセプトモデルがあったのはご存じだろうか?
空冷ビッグシングルをスクランブラースタイルで楽しめる
CL644は、1995年の東京モーターショーにホンダが出品したコンセプトモデルで、エンジンはオフロードのXR650L系の空冷単気筒644ccを搭載していた。これを当時ではあまり例のないスクランブラースタイルにしており、先見性のある提案だった。
同時にシングルスポーツのスーパーモノ644(SUPER MONO 644)も出品しており、対極のコンセプトでユーザーの興味を調査していたと思われる。どちらが選ばれたかというと、1998年のCL400に結びついたことからCL644の方が注目度は高かったと思われる。
背景としては1990年代のSR400ブームがあり、これに対抗するホンダ独自のアプローチとしてデビューしたCL400は一代で終了してしまい、2001年にはCL400をベースにしたCB400SSへ移行した。結局、時代が求めていたのはトラディショナルシングルだったのだ。
今では海外メーカーも含めてスクランブラーはネオクラシックモデルの定番スタイルになっているので、CL644やCL400は10年ほど登場が早かったのかも知れない。2023年には新世代のCL250/CL500でホンダのスクランブラーブランド「CL」が走り出すが、リベンジなるか!?

CL644 [HONDA] 1995年に開催された第31回東京モーターショーに出品されたコンセプトモデル。現在脚光を浴びているスクランブラースタイルを28年前に提案していた。

CL400 [HONDA] CL644の代わりに1998年に発売されたのは同じXR系の空冷単気筒エンジンを搭載したCL400。キック始動オンリーとしており、ヤマハのSR400を意識していたのが分かる。

CL250 [HONDA] 2023年に発売のホンダ最新スクランブラー。ファッション性の高さとスポーツ&オフロード性能をほどよくバランスさせており、幅広い層から支持されそうだ。

CL72スクランブラー [HONDA] 当時はオフロードをスクランブラーと呼んでいた。スーパースポーツのCB72をベースにしておりエンジンは並列2気筒250ccで24PSを発揮した。

スーパーモノ644 [HONDA] CL644と共に東京モーターショーに出品されたコンセプトモデル。1993年に少数が発売されたドゥカティの単気筒レーサーをホンダ流に再現していた。
CL644のコンセプトはSLR650に受け継がれた!?
ホンダのオフロードモデルは1962年のCL72スクランブラーから始まり、1970年前後にはSLシリーズに移行した。その後すぐにXL/XRシリーズに入れ替わるのでSLシリーズの期間は短かったが、1997年に日本ではSL230がリバイバルを果たしている。
一方、海外でも1997年にSLR650が発売されたことはあまり知られていない。エンジンはCL644と同じ空冷単気筒644ccを搭載し、スポーツネイキッドとスクランブラーの中間的なコンセプトとしている。スペインのモンテッサ工場で生産され欧州専用車として用意されたローカルモデルだ。
CL644の古典的な装備から脱したリンク式モノサスペンションやオイルタンクを兼ねたモノバックボーンフレームなど、技術面もアップデート。外観は丸目一灯にアップマウントの2本出しサイレンサーでホーネットのようなカジュアルなスタイルに仕上げられている。
ビッグシングルのロードバイクはSR400、近年ではGB350以外に大ヒットした例が少なく、ターゲットが絞られる大型クラスのCL644が市販には至らなかったのもこれが理由だろう。海外勢もドゥカティのスーパーモノは公道モデルを断念、ビューエルのブラストもアメリカローカルでの販売のみで日本への導入は叶わなかった。

SLR650 [HONDA] 1997年に発売された欧州用のネイキッドスポーツ。フロント19インチホイールでダート走行にも対応しており、コンセプトはCL644に近い。

SLR650のフレームは角パイプのクレードルフレームでバックボーンはSR400と同様にオイルタンクを兼ねた合理的な設計だ。足まわりはリンク付きのモノサスでスポーティな装備となる。

CL644はハーレーのスポーツスターのような古典的スタイル。アップマフラーは同XR1000を意識しておりエンジンがVツインだったら!? と思わされるが1995年にはホンダ版XR1000的なVRX400が発売されていた。

BLAST [BUELL] ハーレーではないがスポーツスターのエンジンをベースにした旧ビューエルはリアシリンダーを省いた単気筒のブラストを2000年に発売。排気量は492ccでSLR650に近い立ち位置だ。
この記事にいいねする