
文/Webikeバイヤー:yasuo
バイクが病的なほどに好きな私は、エンジン以外でも右手を捻ると加速してくれる乗り物全てが興味の対象。電動『も』大いに興味があります。今回はSNSでキャッチしたFW-06の試乗を申し出て、モータリストからプロトタイプをお借りしてきました。
取材協力:モータリスト
目次
デザインはX-ADV並みの洗練度! やる気満々のポジション
FW-06は、まず洗練されたスポーティーなデザインに心を奪われます。他社の電動専用モデルの多くは、どこか電動モデル独特のデザイン処理があったり、本来エンジンが見える位置に無機質なバッテリーが収まっていたりして違和感を覚えるモデルが多いのです。
しかしFW-06のデザインは抜群にカッコいい。X-ADVやアジアで人気の尖ったアンダーボーンスポーツにも通じるスタイルで、かつ電動モデルゆえのマフラーレスデザインを生かしています。「このデザインいけてるね!」と思いながらガラスに映る自分をチラ見する感覚は久しぶりでした。
全長と高さのバランスはホンダのグロム的な感じです。シート高は784mmとけっこう高くて、これはクロスカブ110と同一数値。1時間乗るとお尻が痛くなる硬めのシートと身長176cmの筆者でも両足のカカトが浮くため、もう少し低い方がとっつきやすいと感じました。
また、ステアリングヘッド位置を2~3cmぐらい下げると良さそうな印象で、そうすれば幅広い体格のライダーにフィットしそうです。広くて低めのハンドルや高い位置のステップは、モタード車のような感覚です。このやる気満々のステップがもう少し低くなれば自然なポジションです。

FW-06 [FELO] 中国の新興バイクメーカーがリリースし、日本ではモータリストが販売する電動バイク。サイズ感は原付2種ですが日本だと定格出力が5kWで軽二輪区分です。価格は99万円。

テールまわりは縦配置のテールランプと両脇のダクトでスーパースポーツのようです。その分、タンデムシートは小さめ。マフラーレスでシンプルな車体構成です。

身長176cmのライディングポジションは、ステップが高めなのでヒザの曲がりが少しきつい印象。上半身はリラックスして乗れます。

体重70kgの足着き性は両足のカカトが浮きます。スポーツ性を重視したコンセプトが伺えます。
速さは4スト100ccくらい、Sボタン作動で150ccレベルに!
始動は電源をオンにしてスタートボタンを押すと液晶メーターにSTANDBY表示が出ます。あとは右手を捻るだけで走ります。飛び出しを防ぐためか、ブレーキに触れていると右手のスロットルを捻っても出力が出ません。Uターンなどには少々慣れが要ります。
初速にドンと出てからの加速は比較的マイルドで、高速での最高速も時間をかけて80km/h弱ぐらい。例えて言うなら4スト100ccのスクーターのような感じです。しかしこれは爪を隠した鷹モードであり、左側のSボタンを操作すると抑えられていたパワーが解放され、右手とモーターが直結したような感覚とともに、速度域によっては150ccクラスのスクーターよりも強い加速を見せてくれます。
50km/h前後で巡行していて、ココ一発の加速が欲しい時にSボタンを数秒間使ってみるとか、合流時、信号スタートをリードしたい時や、登坂時などに数秒ずつ使用しました。Sボタンを押して全開での加速を続けると高速で3桁km/hは確認できました。
当然このトルクお化け装置(Sボタン)を多用すると電池残量への影響があるでしょうから、多用するとバッテリー残量が心配になります。ご利用はほどほどにね! という機能です。

通常モードでは原付2種クラスの経済的な走りと、Sボタンでクラス上のパワー感に豹変する2面性が楽しい。

ホーンの横にあるSボタンを押し続けている間はパワーが増します。その状態で右手でアクセル操作をします。
電動バイクは静かで快適と再確認、インカムの音楽がよく聞こえる
ハンドリングは硬めのフロントと、よく追従してくれるリアサスペンションの組み合わせ。スポーティな外装デザインやライディングポジションのせいか、ついつい元気に走ってしまいたくなります。基本パッケージングが良いため、ブレーキパッドやリアショックのアップグレード、タイヤチョイスなどでより攻められるようにカスタムしたくなります。
ホイールベース1236mmは短かめで、リード125やシグナスグリファス、CT125ハンターカブよりも短く、グロムよりは少し長い数値です。FW-06はハンドルの切れ角が少なめなので、車庫入れなどの取り回し時はショートホイールベースに救われました。
電動バイクは、わずかに発生するモーター音を発するのみで振動も無いため、インカムから音楽を流しても快適です。ホントに快適。走行中にヘルメットの風切り音しか無い感覚は、普段のガソリン二輪車には無いサイレントな世界で、普段気にならないヘルメット自体の静寂性が気になるほどです。

前後ともディスクブレーキを採用。フロントのみシングルチャンネルABSを採用しています。

リアはリンクなしのモノサスを採用。奥に見えるのがモーターでベルト駆動を採用しています。ブレーキ作動時にパワーがカットされるのには少し違和感を覚えました。

片持ちスイングアームは2本式を採用します。アクスルシャフト上にあるのは自動変速2段ギアでスタートをスムーズにするオートマチックトルクシステム(ATS)です。

パイプハンドルは幅広で低めです。電源はスマートキー式で中央のノブを回して操作します。ハンドルグリップのラバーの材質が滑りやすく堅かったのと少し太めな印象です。

黒バックの液晶メーターは見やすかったです。電池残量計や走行可能距離などを表示します。
実用航続距離は100㎞くらい、リッター160円換算だと電費は77kmに
気温0度~7度ぐらいの真冬の通勤路を中心に、1回60~70kmの距離を4日間走行しました。住宅街からアップダウンの多い山間路、渋滞の幹線道路も走っています。
1日目:69km走って残量21%→充電での消費電力量4.89kWh
2日目:64km走って残量27%→充電での消費電力量4.64kWh
3日目:70km走って残量24%→充電での消費電力量4.77kWh
4日目:60km走って残量38%→充電での消費電力量3.90kWh
電欠までの航続距離のテストは出来ませんでした。この記録から推測すると公称値の140kmは厳しそうですが、現実的な値として100km位は走れそうです。
次に経済性について考察してみましょう。前述のデータを合算すると “263km走って、充電で使った電気は18.20kWh”となります。電気単価は昨今変化が激しく試算が難しいですが、1kWhあたり30円とすると、546円。263kmあたり546円、つまり100kmあたり207円です。
ガソリンが1L=160円で換算すると同じ費用で77km走れる計算なので、電気単価が高騰しているなかでもガソリン代より経済的と言えます。
FW-06は現在国内でもデリバリーが始まっており、販売店によっては試乗車も配備されています。気になった方は乗ってみることをおススメします!

バッテリーは車体内蔵式なので、駐車場に電源が必要です。充電器のコネクター差込口はダッシュボード右側の蓋を開けるとあります。

充電時の消費電力量は簡易的な電力計で計測していますので、あくまでも目安として参考にして下さい。

クラス違いになりますが参考としてヤマハE01と、BMW Cエボリューションを並べてみました。加速力や最高速を上げれば航続距離とトレードオフになるため、そのバランスに各社の方針が伺えます。
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