文/Webikeスタッフ:アキヒト
目次
【スズキ GSX-R1000R】
ディテール&試乗インプレッション
今年の3月で創立100周年を迎えたスズキ株式会社。それを記念した「100周年記念カラー」として、MotoGPに参戦するスズキのファクトリーチーム「Team SUZUKI ECSTAR(チームスズキエクスター)」のGSX-RRのデザインをモチーフとしたGSX-R1000Rが新たに登場しました。
今回はカラーリングのみの変更となりますが、「The King of Sportbikes」を目標としMotoGPで培われた最新テクノロジーを惜しみなく投入したGSX-R1000Rの性能について、あらためて迫りたいと思います!
1.より攻撃的によりコンパクトになった外観
【全長/全幅/全高】
2,075mm/705mm/1,145mm
【車両重量】
203kg
ひと目見てとにかく小さな車体に驚きました。
「600ccだろうか・・・?」と思ってしまったほど。スズキのリッターバイクと言えば他にもVストロームなどがありますが、同排気量とはとても思えません。
それと同時に、この小さな車体から200ps近いパワーを感じられるのかと思うと、自然とワクワクが止まりませんでした。
そしてより攻撃的なフォルムとなったディテールは、多くのユーザーを虜にすること間違いなしです。
さらにスズキのMotoGPファクトリーチームと同色となれば、気分はGPライダーですね(笑)
2.足つき
【シート高】
825mm
【足つき】
先代のGSX-R1000のシート高は810mmですので、シート高は少し高めの825mmになっています。それ以上にサスペンションの設定のが硬いのか、跨った時にあまりリアが沈まず、足つきにも影響しているように感じました。
3.実際に走ってみた!
200馬力近いパワーを持ったこのバイクで果たして満足に街中を走れるのだろうか?そんな不安を抱きながら恐る恐る発進しましたが、そんな不安は一瞬で吹き飛びました。発進時の回転数の落ち込みを軽減するローRPMアシストによるスムーズな発進だけでなく、低回転でもトルクが薄くてギクシャクするということもありませんでした。
幹線道路での60km/h巡航も6速なら2,800rpm程で走ることができるだけでなく、もちろんそこからスロットルを開けていけばしっかりと加速するだけのトルクを持ち合わせています。
メリハリのある走りを求めるなら3・4速を中心に4,000rpm以上を使って走ると、街中やワインディングでも適度な加速を体感できて気持ち良く走れました。
気持ち良く走る上でライダーの手助けをしてくれるのが、IMU(6軸センサー)を用いた電子制御たちです。
電子制御はサーキットのような限界を突き詰めた走りでのみ効果を発揮すると思われている方もまだまだ多いと思いますが、スズキドライブモードセレクター(S-DMS)やモーショントラックTCS(トラクションコントロールシステム)により、雨天時など路面状況が悪いときでも最適な出力に抑えられることで、ライディングに余裕が生まれます。一番レスポンスの良いS-DNSのAモードで街中を走ってみましたが、スロットルのツキが良すぎて走りにくいといったこともありません。もっと楽に走りたいと思ったらBモードにすると丁度良いでしょう。アップダウン対応のクイックシフターは街中でもスロットルを開けたままシフトアップができますが、高速道路のような高速域ではそれが一段と気持ち良く繋がり、スムーズな加速を体感できました。シフトダウン時にはクラッチ操作無しで回転数を合わせてくれるので、クラッチ操作による疲労の軽減にもなりますね。
装備重量は203kgと軽すぎるとはいかないものの、押し引きから軽さを感じました。跨ってみると外観の印象と同様にとても小さく感じ、ライディングポジションは自然と体がバイクに近づくような感覚でした。マスの集中化による重量バランスと体とバイクが自然と一体になるポジションにより、コーナーはヒラヒラの一言。タイヤはブリヂストンのRS11が採用されていることもあり、このままでも結構楽しめます。
サーキットでの速さを突き詰めたスーパースポーツとなりますが、ストリートユーザーにもフレンドリーなバイクであることはとても伝わりました。ただ、強いて気になった部分を挙げるならポジションと水温です。ノーマルのポジションでもしっかりと攻められるように設定されたポジションはツーリングメインのライダーにはキツイかなと感じました。水温もビッグバイクの宿命とも言えますが、街中を走っているとすぐに100℃を超えてしまいます。ファンが回ることで信号待ちでも105℃以上にはなりませんが、真夏は排熱との戦いになりそうです…
4.すべてがLEDとなった灯火類
【ヘッドライト】
ヘッドライトデザインはGSX-Rのアイデンティティとも言える上下二眼を採用しています。
ヘッドライトの左右にはSRAD(スズキ・ラム・エア・ダイレクト)の吸気ダクトが設置されていますが、大きなダクトが悪目立ちしないようなデザインになっているところも魅力の1つですね。
ダクト上部には細長いLEDのポジションライトが配置され、ヘッドライトもLEDです。昼間はもちろん、夜間でもシャープな印象を周囲にアピールします。
また、大きく変わった点として、K5モデルから長らくGSX-Rの特徴であったミラー内臓のウインカーではなくなりました。
実はミラー内蔵ウインカーは結構重たく、今回のようにカウルサイドに付けることで軽量化の効果もあるそうです(スズキの方に聞きました)
スタイリングとしてはミラー内臓の方がボディ部分がシャープになって好みの方も多いかもしれませんが、意外と小ぶりなウインカーなのでそこまで気になりませんよ!
と、いうことでミラーも普通の物になってます。サーキット走行などで配線を気にせず外せるのは良いですね。
【テールライト】
テールライトもデザインが大幅に変更されています。
GSX-R1000といえば、カウルに内蔵されたウインカーによって横に平べったくなったテール周りが特徴的でした。
それが今回からリアフェンダー装着のウインカーになったことで、テールライトもカウルも非常にシャープになっています。
先端の尖ったいかにもスーパースポーツ!なリア周りは実に美しいです。
ただ、テールライトがGSX250RやVストローム250と共通デザインなので、フラッグシップモデルらしい特別感が欲しいなと思ってしまいました。
5.必要十分なフルデジタルモニター
各社でフルカラーTFT液晶の採用が目立つ中で、GSX-Rはデジタルモニターとなっています。
それでもトラコンやS-DNS、シフトインジケーターなど、必要情報は十分にカバーしています。
6.レーシーなポジションのハンドル
トップブリッジを見て驚いたのがフロントフォークの突き出しです。サーキットを走るバイクで足回りのセッティング方法の1つとしてフロントフォークを突き出す事はありますが、GSX-R1000Rは初めからフロントフォークを突き出している様です。
ハンドルの位置はシートよりも少し高いくらいで、自然と上半身は前傾になります。窮屈という訳ではありませんが、長距離ツーリングは体が辛そうですね。
GSX-R1000Rに搭載された電子制御の内、スズキドライブモードセレクター(S-DMS)、モーショントラックTCS(トラクションコントロールシステム)、ローンチコントロールと言った主要な電子制御はハンドルスイッチで切り替えを行います。比較的スイッチも少ないので、モードの切り替えも迷わず行えますね。
キルスイッチと一体型のスタータースイッチは、ワンプッシュでエンジンがかかるスズキイージースタートシステムを搭載しています。
7.アフターパーツに引けを取らない足回り
【ブレーキ】
フロントキャリパーにはbrembo製のモノブロックラジアルマウントブレーキキャリパーが装着されています。
ブレーキディスクもbrembo製のTドライブフローティングマウントを組み合わせたタイプが装着されており、ハイスピードからのブレーキング性能も抜群となっています。他にもブレーキ周りのカスタムでお馴染みのメッシュタイプブレーキホースが標準装備となり、ブレーキのタッチ感と高いコントロール性を発揮しています。
また、モーショントラックブレーキシステムが採用されており、ハードブレーキング時に後輪のリフトを軽減させることからサーキットでも高い効果を発揮します。
【サスペンション】
フロントにはSHOWAのBFF(Balance Free Frontfork)が装着されており、リアサスペンションもSHOWAのBFRC lite(Balance Free Rear Cushion lite)を搭載。レースマシンさながらの最高級装備となっています。標準設定でも街乗りでは少し硬いかなと感じましたが、ワインディングや高速走行時にはコシがありタイヤのグリップを感じ取れるようになっていました。
細かく設定できるだけに、サーキットを走らないと本来の性能は発揮できなさそうですが、「いざという時」にセッティングできるだけでも所有感を満たしてくれますね。
ステムには電子制御式のKYB製ステアリングダンパーを装備し、急なハンドルの挙動も抑制してくれます。
8.MotoGPのテクノロジー満載のエンジン
最高出力:197PS/13,200rpm
最大トルク:117N・m/10,800rpm
197psを発揮する新設計エンジンは、可変バルブシステムをはじめとするMotoGPのテクノロジーが数多く盛り込まれています。軽いクラッチワークと急なシフトダウン時に発生するバックトルクを逃がすスリッパークラッチを搭載。電子制御と相まってパワフルなエンジンながら街中での扱いやすさにも貢献しています。
純正マフラーはサイズが大きくて「何だか野暮ったいなぁ」という第一印象でしたが、エンジンをかけるとその迫力サウンドに心奪われました。
アイドリングでは低音が響き、アクセルを開けていくと次第にレーシングサウンドに変わっていくのはゾクゾクします。
純正サイレンサーでも十分満足できるサウンドを響かせてくれます。
9.下半身のホールド感が抜群のタンク
タンク容量:16L
ニーグリップやバンク中のホールド感を重視したボリュームのあるタンク形状です。
街乗りをメインに高速道路と軽いワインディングを走ったところ、実燃費は約14Lほどでした。長距離ツーリングなどではもう少し燃費が良くなると思いますが、給油タイミングは要注意ですね。
10.シート下にはETC2.0を搭載
メインシートは前方が細く、後方に連れて広がっていくSS系の車両であればメジャーな形状を採用しています。
タンデムシートも付いていますが、乗り心地もちろんのこと、シート下スペースについても実用的とは言えない状況です…
そしてこのGSX-R1000Rですが、ETC2.0が標準装備となっています。ただ、クセモノなのがその設置場所。
画像の赤丸の位置に搭載されており、タンデムシートを外しただけではカードの出し入れができません。
カードを入れる為にはメインシートとテールカウルも外す必要があり、一度カードを入れたら暫くはそのままにしてしまいそうですね…
11.気になる販売価格は!?
メーカー希望小売価格(消費税10%込み)
2,156,000円
※2020年7月現在
価格も非常に魅力的です。バイクその物としては非常に高価な部類になりますが、国産スーパースポーツモデルも高性能高価格化する中で、ハイエンドモデルながら税込2,156,000円はクラス最安値となります。
他社に引けを取らないパワフルなエンジンとIMUによる高性能電子制御、アフターパーツ顔負けの足回りを搭載してこの価格は正直言ってオトクとしか言えませんね。
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12.まとめ
スズキのフラッグシップモデルGSX-R1000R。
サーキットが主戦場に思われがちですが、電子制御により全域で扱いやすく様々な場面でも楽しく走行できそうです。
これだけの装備とパワーを持っていながら200万円前後の価格はコスパも抜群と言えるでしょう。
最新のリッターSSが欲しい!スタイルが格好いい!と思った方は、一度実車を見にバイクショップへ足を運んでみてはいかがでしょうか?
撮影協力:株式会社スズキ二輪
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