
カー用品・バイク用品店を全国展開しているイエローハットグループの「バイク館」が輸入販売モデルの試乗会を開催。今回取り上げるのは、インドのバイクメーカーHERO(ヒーロー)のXパルス200 4Vで、フロント21インチホイールを採用し、オフロードテイストの強いアドベンチャーバイクのようだが? 元初心者向けオートバイ雑誌編集長の谷田貝 洋暁が試乗レポート。
1. オフロードテイストの強いスタイリング
【全長/全幅/全高】2,222mm/850mm/1,258mm
【車両重量】158kg(乾燥)
【軸間距離】1,410mm
【最低地上高】220mm
フロント21インチ/リヤ18インチのフルサイズホイールを採用したフルサイズのオフロードバイク風であるが、シート高は825㎜とやや低めに設定。この低めのシート高に加え、200ccクラスの空冷エンジンに13ℓの大容量燃料タンクなどの旅向き装備は、どことなくジェベル200を連想させるコンポーネントだ。
【販売価格】
369,000円(税込)
2. シートが後ろ目のゆったりポジション
【シート高】825mm
21インチのフルサイズの車格に身構えて乗車したのだが、しなやかなサスペンションセッティングもあって意外に足着き性がよく、身長172cmの体格だと、両足の親指までしっかりとつけられる。車重は乾燥重量で158kgとちょっと重めなのに加え、13ℓのタンクなどもあってやや重量感がある。またシートの着座位置も一般的なオフロードバイクのそれよりやや後ろにセットし、ゆったりとしたポジションを確保している。
3. インドの主流はおっとり系オフロード!? -実走インプレッション-
ダカールラリーを完走したメーカーが作るアドベンチャーバイク
恥ずかしながら筆者はHEROの車両に乗るのは今回が初めて。さすがにインドのメーカーでもともとホンダ系ということは知っていたが、いろいろ調べてみるとHEROは、世界一過酷といわれるダカールラリーに挑み、これを完走。真剣にオフロードバイクに取り組んでいるメーカーだということを今回知った。
試乗モデルであるXパルス200 4Vに関しても、本国ではアクセサリーパーツとして前後サスペンションのキットを販売。装着すれば前後のストロークが伸びて、275mm(+55mm)の最低地上高を確保できるというから相当なことだ。
ただノーマルのXパルス200 4Vは、跨ってみるとどこかおっとりというか、いわゆるオフロードバイクのような目を吊り上げて走るようなスポーティな雰囲気が皆無なことに気づく。
速く走ることを全く意識していないというか、旅を純粋に楽しむというか、車体を通して伝わる雰囲気全てが牧歌的なのだ。走ってみてもその印象は変わらず、ハンドリングにしても安定感がわりと強めで、サスペンションも乗り心地重視のしなやかで鷹揚なキャラクター。
国産メーカーや主要外車メーカーが作る現代のオフロードバイクは良くも悪くも全てがスポーツバイクだ。排気量や性能などの違いはあるにせよ、どのオフロードバイクも、コントロールして“速く”もしくは“巧く”走らせたくなるようなスポーティな部分がどこかしらにある。エントリーモデルと言われて久しいセロー250にだってそんなスポーツバイクらしい部分はしっかりと感じられるくらいだ。
ところがこのXパルス200 4Vは違った。スポーツバイクらしい部分がほぼ皆無。……というか、そもそもの設計思想からしてそういう尺度で作られてない雰囲気。乗り味に“速く走らせよう”とか“競い合う”というスポーツバイクの要素が感じられないのだ。
紛れもないオフロードバイクではあるものの、速く走るためスポーツバイクとして作られていない。あくまで旅をじっくりゆっくり楽しむための性能に特化した乗り味とでも言えばうまく伝わるだろうか?
走っていて思い出したのは、同じインドのバイクメーカー・ロイヤルエンフィールドのヒマラヤンだ。排気量こそ倍近い違いがあるものの、オフロードバイクにしては着座位置を後ろ目に設定したポジションや、立ちの強いおっとりとしたハンドリングなど共通点が多いと感じる。もちろん牧歌的な雰囲気も感じられるのだが、メーカーは違えど同じジャンルのマシンを作ればお国柄は自然と出るのだなと納得した次第だ。
4.ディティール

ワイドなハンドルは幅850㎜で材質はスチールを採用。ハンドガードにスクリーンと旅向けの仕様となっている。

ヘッドライトの光源はLEDを採用するもウインカーなどはバルブを採用している。

LCDメーターには、タコメーターや燃料計、時計といった装備に加え、ギヤポジション、平均速度なども表示。

燃料タンクは今時珍しいカバーなしのスチール製。容量13ℓも確保され航続距離も長そうだ。

前後一体型だが、ライダー側には若干の窪みを設けたシート。着座位置はやや後ろ目のゆったりポジション。

フロントホイールは21インチサイズのワイヤースポーク仕様。タイヤは日本ではあまり馴染みのないCEAT Gripp XL。

エンジンはオイルクーラー付きの空冷OHC 4バルブ199.6ccの単気筒。最高出力は14kW (19.1PS)/8,500rpmで、最大トルクは17.35Nm/6,500rpm。

キック/セルスターター併用式。フューエルインジェクションのためキック始動もかかりはいい。

エンジン左側には大きく張り出したオイルクーラーを備える。エンジンガードは標準装備品となっている。

ステップはアドベンチャーバイクらしくラバーパッドを外せば、ギザギザのオフロード仕様となる。

エキゾーストパイプこそエンジン下回しなものの、サイレンサーはアップタイプを採用している。

板厚3mmのアルミ製のアンダーガードを備えており、最低地上高は220mmを確保。ギヤは5速仕様となっている。

角パイプタイプのスイングアーム&ホイールリムはスチール製。リヤのタイヤサイズは120/80-18のチューブ仕様。

アクスルストロークは、フロント190mm、リヤ170mmとオフロードバイクとしては少なめ。本国ではストロークをフロント250mm、リヤ220mm化するアクセサリーキットが販売されている。

小ぶりだが使い勝手の良さそうなリヤキャリアは標準装備。シートは鍵で外すことができる。

インドのメーカーらしく、チェーンラインにはサリーガードを装備。インド女性が民族衣装でタンデムするための工夫だ。

リヤのアクスルトラベルは170㎜と少なめだが、リヤショックはプリロード調整機能が付いている。

シート下にはほぼスペースはないが、トレイ状の小物入れには工具とファーストエイドキットが収まっていた。
まとめ

外車らしい強烈な個性を感じられる1台
世界的にアドベンチャーバイクが流行っているものの、国内4メーカーのモデルや主要外車メーカーのモデルは、グローバル戦略を意識したモデルが多く、同じようなキャラクターになりがち。改めて外車らしさを感じさせてくれるモデルは非常に少なくなっている。
そんな中で異彩を放つインドのバイクメーカーたち。HEROは元々ホンダ系列のメーカーであった経歴もあり安心感が高いうえに、外車らしい個性の強さも味わえる。
確かにスロットル操作に対するドン付きやパワー感など、インジェクションのセッティングなどはまだまだ日本車の方一日の長があるものの、日本車にはないテイストを存分に感じられるバイクになっている。
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最後にサラッと「ドン付きあり」報告がwww