2023年に市場投入されるバイクは、一部の隠し玉を除いてすでに発表済み。日本での発売がまだ正式アナウンスされていない車種も多くありますが、ひとまず全貌が見えてきました。これらの中からブランニューモデルのみピックアップしてみると、今年の国内メーカーはミドルクラスにかなり力を入れている状態。大きいがエラいの時代は終わるかも!?

発表済みに加えてウワサのモデルも……

「ミドルクラス」に明確な定義はありませんが、これまでは概ね600cc前後のバイクがその対象。そして現在は、リッタークラスが多数ラインアップされ、スポーツ系やアドベンチャーなどの排気量拡大傾向が続いたこともあり、800ccあたりまでをミドルクラスに含めることも多くなってきました。

2023年、日本のバイクメーカーはこのミドルクラスに、完全新設計のブランニューモデルを積極的に投入。さらに、前年にもカワサキがZ650RSを新発売したり、2023年にはヤマハがMT-07にフルカラーメーターを新採用するなどのマイナーチェンジを加えたり、XSR700にオフロードテイストを加えたXSR700レガシーを欧州市場に導入するなど、動きが活発化しています。

さらに、この原稿執筆時点の1/23にはまだ正式発表されていませんが、カワサキはニンジャZX-25Rの400cc版をデビューさせることが、ほぼ確実視されています。400ccクラスを「ミドルクラス」に含めるかは微妙なところですが、いずれにせよ今年はリッタークラスよりもやや小排気量なバイクたちに注目が集まりそうです。

スズキとホンダが新設計ツインを投入

スズキとホンダが新規投入するミドルクラスをシリーズごとに並べてみた。スズキは既存シリーズの中で空いていた中間排気量を埋めた形となるが、ホンダは既存ブランドを復活させてミドルクラスから抑える戦略を取っているようにも見える。

 

すでに発表されているミドルクラスでは、スズキとホンダに注目。どちらのメーカーも、750~800ccの完全新作エンジンを開発。それぞれ、これをアグレッシブなネイキッドスポーツモデルとオフロード走行を視野に入れたアドベンチャーに使用してきました。日常からツーリングまで幅広く対応できるモデルとして、このクラスのパラレルツインネイキッドはかなり秀逸。

一方でアドベンチャーも、リッタークラスと比べればミドルクラスのほうがオフロード走行も現実的です。またホンダは、既存モデルをうまく流用する手法により、同じく水冷並列2気筒エンジンのスクランブラーも新たに導入しました。

日本や欧州、あるいは北米あたりでも、コロナ禍により多少の変化はあったとはいえ、10~20年単位の傾向としてライダーの高齢化は進んでいて、重たいバイクや大きなバイクにツラさを感じている人も増えてきました。メーカーも、このあたりの市場動向はしっかり把握しているはず。ダウンサイジングのニーズにも、このクラスはぴったりでしょう。それでは、2023年に注目したい新型ミドルたちを紹介しましょう!

スズキ・GSX-8S

オールニューの俊足ミドルファイター

2022年秋のEICMA(ミラノショー)で電撃デビューした、スズキの新たなミドルスポーツネイキッド。

270度クランクの776cc水冷並列2気筒エンジンは完全新作で、クランクシャフトの前側と下側に90度配置する、世界初の独自2軸バランサー機構を採用しています。最高出力は83馬力。スロットルバイワイヤを採用していて、3種類のドライブモードと3段階+オフのトラクションコントロールを備えます。スチール製フレームをメインとする車体も完全新設計。KYB製フロントフォークとアルミ製スイングアーム、ラジアルマウントのフロントブレーキキャリパーを備えています。

このモデルは、2023年3月より欧州や北米などに順次導入予定。もちろん、日本での発売も期待されています。これまでスズキは、このクラスに水冷並列4気筒エンジンのGSX-S750を導入していましたが、こちらのモデルは2022年に生産終了。今後、スズキのミドルスポーツカテゴリーは、このGSX-8Sが主役を担います。

スズキ・Vストローム800DE

ネイキッドと同時開発の新アドベンチャー

2023年のニューモデルとして欧州などで先行発表されたこちらのモデルは、GSX-8Sと同時開発された本格派のミドルアドベンチャー。

独自バランサー機構を搭載した776cc水冷並列2気筒エンジンは、GSX-8Sと共通化されていますが、大容量マフラーと専用セッティングECUにより、最高出力は8Sをわずかに上回る84.3馬力を発揮します。スチール製メインフレームも、ヘッドパイプ部を含めて8Sと共通ですが、ピボット軸からエンジンごと寝かされ、専用シートレールと組み合わされています。

こちらのモデルは、前後21/17インチのスポークホイールを装備。220mmのストロークが確保された倒立フロントフォークとリヤモノショックや、専用開発のアルミ製スイングアームなどで、オフロード走破性を高めています。スズキにはVストローム650シリーズというミドルアドベンチャーもありますが、そちらはオンロードでの快適性や操縦性を重視。800DEの登場で、オフロード好きもスズキのアドベンチャーを選びやすくなります。日本国内仕様は間もなく発表と予想!

ホンダ・CB750ホーネット

かつての4気筒から2気筒になって復活

ホンダのスポーツネイキッドに与えられてきた“ホーネット”の車名が、2023年モデルで復活。

ただし、かつてのホーネットシリーズが水冷並列4気筒エンジンだったのに対して、完全新設計の新型CB750ホーネットは水冷並列2気筒エンジンを搭載しています。270度クランクとユニカムSOHC4バルブ構造を採用したこのエンジンは、755ccツインで最高出力91.8馬力を発揮。パラレルツインエンジンになっても、刺激的な走りを忘れていないことを感じさせます。

車体は、スチール製フレームにショーワ製SFF-BP仕様の倒立フロントフォークやニッシン製ラジアルマウント4ポットキャリパー、プロリンク式リヤモノショックなどの組み合わせ。5インチのカラー液晶ディスプレイや4種のライディングモードなど、電脳系も充実しています。日本市場導入は不透明な状況ですが、ぜひ発売してもらいたいモデルです。

ホンダ・XL750トランザルプ

伝統の車名が約10年ぶりの衝撃復活

欧州で市販車として発表されているXL750トランザルプは、1986年にトランザルプ600Vとしてデビューしたシリーズ(日本では400版もあった)の実質的な後継機種。

軽量スチール製フレームに、同じく欧州で先に発表されたネイキッドのCB750ホーネットと基本部が共通化された755cc水冷並列2気筒エンジンを搭載しています。最高出力は91.8馬力で、これはホーネットと同じ。出力特性に加えてトラコンやエンブレやABSの制御が連動して切り替わるライディングモードは、5種類に拡大されています。

このXL750トランザルプは、そのルックスどおり幅広い路面状況でのツーリング性能をバランスよく追求したオールラウンダー。CRF1100Lアフリカツインと同じ前後輪サイズ(フロント21インチ、リヤ18インチ)や、前後200/190mmのサスペンションストロークにより、ダートでの走行性能にも優れることが予想されます。日本でも発売予定で、すでにホンダの公式ウェブサイトには日本語版の技術説明ページがアップされているほど。登場が待ち遠しいミドルアドベンチャーです。

ホンダ・CL500

クルーザーが開発ベースのカジュアルモデル

2022年秋のEICMAで欧州仕様が発表されたブランニューモデル。1960~70年代に人気を博したCLブランド(初代は1962年のCL72)を復活させたモデルで、日本では兄弟車となるCL250の量産試作車も公開されています。

このCL500/250は、シンプルな装備でボバースタイルにまとめられたクルーザーのレブル500/250が開発ベース。大径ホイールやストロークが長い前後サス、専用の燃料タンクとシート、アップタイプのマフラーなどを専用装備して、スクランブラースタイルが確立されています。

すでに市販車が発表されているCL500の欧州仕様は、レブル500とは471cc水冷並列2気筒エンジンの最高出力や最大トルクが異なり、専用のセッティングが与えられている模様。

ホイール径は、近年のオンオフモデルで一般的な前後19/17インチの組み合わせで、落ち着きがあり近年のライダーにも扱いやすいハンドリングと予想されます。低価格も期待でき、排気量は小さめながら、発売されたら同じくレトロスタイルを持つヤマハのXSR700やカワサキのZ650RSを脅かす存在になるかもしれません。

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