
2003年1月にアメリカ・デトロイトショーに出品されたダッジのトマホークは、今や伝説となったアメリカンマッスルカーのバイパー用V10エンジンをバイクに搭載した恐るべきモデル。たった10台のみが限定販売さた幻の名車だ。
地上の巡航ミサイル「トマホーク」は500PS以上を発揮
トマホークはかつて世に登場したコンセプトモデルの中でも特別な一台。果たして8277ccのV型10気筒エンジンを人間が操ることができるのだろうか…。と思うだろうが、これは決してハリボテではなく実際に走行し、10台が限定発売されたというから驚きだ。
バイパーのエンジンはトラック用から派生したもので、最大トルクは72.6kg-mと現行ハヤブサ(15.2kg-m)の約5倍! 最高出力は506PSで理論最高速は640km/hと言われていた。これに1991年の湾岸戦争で初めて実戦投入された巡航ミサイル「トマホーク」の名を付けたのだからインパクトは絶大だったのだ。
また、トマホークの特徴はエンジンだけでなく、日本のメーカーが現在でも研究を重ねている自立できるバイクだった。それもそのはずでタイヤを前後に2本ずつ計4本装備しており、この自動車メーカーらしいアプローチも注目だろう。
とは言っても4輪だったら直線だけでコーナリングは無理? 思いきやなんとバンク角は45度と公表されている。フロントは左右独立の片持ちサスで2つの車輪を保持しており、ハブステア方式としている。ただし、ハンドル切れ角は20度しかないのでUターンは苦手だ。
ヤマハが4輪バイクのテッセラクト(Tesseract)を東京モーターショーに出品したのは後の2007年のこと。これは後のLMWに発展し市販に至ったことで知られている。トマホークの方向性は全く異なるが、先見の明はあっただろう。

トマホーク [DODGE] ダイムラー・クライスラー時代の2003年に発表されたコンセプトモデルで量産はされず、その冬に10台限定55万ドルで発売されたが公道走行は不可だった。

リアのスイングアームは2本のタイヤの内側に設置されており、油圧でロック可能なパーキング機能を備えていた。テールランプの下には縦長のマフラー排気口×2がある。

ハンドルの下にある2つの穴は吸気口でヘッドライトは前輪の間に設置されている。フロントブレーキは4ポット×4の計16ピストンにリムマウントWディスクで強力な制動力を発揮する。

バイパーのV型10気筒はOHV2バルブの8277cc。最高出力は506PS(372kW)/5600rpmで、最高速の640km/hは机上の理論値で、公式には0-60mph(約100km/h)が2.5秒とされた。

バイパー [DODGE] 1992年デビューで日本でも写真の初代モデルが正規販売された。トマホークに搭載されたのは2002年からの2代目のエンジンで排気量と出力が高められている。

OR2T [YAMAHA] テッセラクトをベースに研究開発モデルとして試作された車両。スポーツLMWを研究テーマとし高速旋回性が確認できたという。トリシティとは異なりリアは2輪だった。

トマホークはクライスラー及びダッジのブランディングとしては成功したが、目標の100台を販売する製品には至らなかった。しかし、2020年に中国で150ccのコピー品が出回り話題になった。

中国のミニトマホークには、リアが2輪仕様と1輪仕様があり、リア2輪仕様は独立懸架でないためコーナリングでは片輪を浮かせながら走行する構造だった。価格は中国で1000ドル程度。
ダッジ トマホーク主要諸元
・全長×全幅×全高:2590×703.5×937.2mm
・ホイールベース:1930.4mm
・シート高:736.6mm
・車重:680.3kg
・エンジン:水冷4ストロークV型10気筒OHV2バルブ 8277cc
・最高出力:506PS/6000rpm
・最大トルク:72.6㎏-m/4200rpm
・燃料タンク容量:12L
・変速機:2段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=Wディスク
・タイヤ:F=120/60R20、R=150/50R20
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