
カー用品・バイク用品店を全国展開しているイエローハットグループの「バイク館」。全国60店舗のオートバイ販売店を持つ、この「バイク館」がYZF-R15Mを43万9,000円で販売開始。このYZF-R15Mを元初心者向けオートバイ雑誌編集長の谷田貝 洋暁が試乗レポート。
“R1”と見まごうスポーティなスタイリング
【全長/全幅/全高】1,990mm/725mm/1,135mm
【車両重量】142kg
【軸間距離】1,325mm
【最低地上高】170mm
ヤマハのフルカウルスポーツモデルの頂点に君臨するYZF-R1のスタイリングをそのまま150ccクラスにダウンサイジングしたような、スポーティなデザインが与えられたYZF-R15M。倒立フォークにアルミスイングアームなど装備も本気だ!
【販売価格】
439,000円(税込)
本格スポーツの前傾ポジション
【シート高】815mm
単気筒のスリムな車体にシート高も815㎜とスポーツモデルとして低めだが、ポジションは若干前傾姿勢が強めになっている。身長172cmの筆者の場合、両足を着こうとすると数cm踵が浮いた。ステップもバックポジション気味でスポーツするためのポジションという印象だ。
伸びのいいVVAが楽しい! -実走インプレッション-
VVAが低速トルクと高回転側の伸びを両立
このYZF-R15Mに関して何よりまず語るべきは、VVAを備えたエンジン特性である。このVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)とは、低回転域の力強いトルク特性と高回転側の伸びの良さを両立させるためにカムプロフィールを切り替える可変バルブタイミング機構の一種。YZF-R15Mの場合、6000回転以下では低速トルク重視のバルブリフトを行うカムプロフィールで運行、6000回転以上になるとカムプロフィールが切り替わり伸びのいい高回転型のエンジン特性へと変化。結果、1万回転という高回転域で最高出力18.39psを発揮するエンジンとなっている。
実際に乗ってみてもこのVVAの効用はしっかりと体感することができる。発進などの出足はもちろん、再加速などにも力強い押し出し感があり、キビキビとした走りが低速域で味わえる。その一方、高回転側の伸びも非常によく、実際にフルスロットルで走っていると7000回転あたりからググッと二次曲線的に加速が増すのを体感できる。メーターにもこのVVAの作動を知らせるインジケーターが付いており、視覚的にもVVAを楽しめるようになっていた。
かつてこのVVAを搭載する水冷4ストロークOHC単気筒と同系エンジンのWR155Rというモデルに試乗したことがあるが、155ccという排気量ながらパワフルで高速道路でも時速120kmで巡航できてしまう性能に驚いたことがある。今回は残念ながら教習所という限られた環境での試乗しかできなかったが、WR155Rと同系のエンジンを搭載するYZF-R15Mならば高速巡航走行もなんなくこなしてくれることだろう。
またエンジンで驚いたのは、豪華な上級装備の数々だ。シフトダウン時のバックトルクを逃すアシストスリッパークラッチ、スロットルの開けすぎにによるスリップダウンを防ぐトラクションコントロール、アップのみだがクラッチレバーを操作することなくシフトアップが可能なクイックシフター。VVAによる全域性能のエンジンに加え、これら装備のおかげでYZF-R15Mは本格的なスポーツ走行が楽しめるようになっているのだ。
エンジン特性に見合う スポーツできる車体とポジション
一方でYZF-R15Mは車体の作りもかなり本格的だ。跨って驚くのはそのスポーティなポジションで、前傾を強めてしっかり前輪荷重を稼ぐように低く設定したセパレートハンドルとバックステップを採用。これらのスポーティなキャラクターのおかげでしっかりとハングオンポジションをとることができる。スポーツライディングの大前提となる荷重を使ったマシンコントロールがものすごくやりやすくなっているのだ。
シャーシに関しても、スポーツ走行を行うための作り込みがしっかり行われている。フロントフォークのカヤバ製φ37㎜倒立フォークなんていうこれ見よがしなパーツも決して伊達のための見掛け倒しな装備ではない。倒立フォークでフロントフォークの剛性を確保したことで、スポーツ走行に必要なハードブレーキングが可能になっている。
全域で力強いエンジンに、操るための攻めのポジション、スポーツランの高い負荷に耐える軽量な車体と、3拍子揃ったYZF-R15M。スポーツライディングの入門機としてここまで恵まれたマシンも、ミドルクラスの中ではなかなか珍しい。
ディティール

“M”の字に開けられたダクトに収まるのはプロジェクタータイプのヘッドライト。光源はもちろんLEDだ。

燃料タンク容量は11ℓ(レギュラー仕様)。シルバーとブルーのを基調としたカラーリングは2015年頃のYZF-R1Mの雰囲気にそっくり。

セパレートハンドルを採用するも、ハンドルは若干持ち上げられており、スポーツ性と居住性を両立させている。

軽量化のためだろう、トップブリッジはしっかり肉抜きされておりスポーティな雰囲気を盛り上げてくれる。

VVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)を搭載した155ccエンジンは18.39psを10000回転で発揮。11.6という高圧縮比なエンジンだがレギュラー仕様とのこと。

R1風のLCDのメーターには、速度、タコ、時計といった基本表示に加え、ギヤポジションインジケーターも搭載されている。


カーボンの綾織風のパターンが施された高級感あふれるシート表皮には、R15Mのロゴが刺繍で入れられていた。

パッセンジャーシートは外せるものの小物入れスペースはかなり狭く、ETC車載器がギリギリ入るかどうかというところ。

アルミスイングアームは本格スポーツモデルの証。車体左側にはマッドフェンダー一体型のサリーガードを装備。

アルミ削り出しのローレット加工がスポーティなステップ周り。バックステップポジションでやや高めに設定されている。

シフトアップ方向のみだがクイックシフターを搭載しており、スロットルを戻さずギヤチェンジが可能。

フローティングマウントではないものの前後ディスクブレーキを採用し、ブレーキはバイブレ製。タイヤサイズはフロントが100/80-17で、リヤが140/70R-17。

倒立フォークはカヤバ製でインナーチューブ径はφ37mm。タイヤはMRF製のNYLOGRIP ZAPPER FX-1でリヤタイヤだけラジアル仕様。

YZF-R1にも通じるテールカウル&テールデザイン。ヘッドライト周りに加えストップランプもLEDで、ウインカーがバルブ仕様となっている。

シート高は815㎜で、前傾ポジションのためやや足着き性が悪くなるが、3cmのローダウンが可能なローダウンリンクを「バイク館」で用意(12,900円/税込)している。
まとめ
前傾姿勢がやや強めなため、ロングツーリングで使いたいという旅ライダーには向かないが、これからスポーツライディングを身につけたい思っているライダーにとってYZF-R15Mはベストなマシンと言える。同じ軽二輪の250ccクラスのフルカウルモデルと悩むところだが、VVAを搭載するYZF-R15Mなら、エンジンパワー的には250ccクラスと“あまり変わらない”走りが可能。ならば車重が250ccクラスよりも20㎏近くも軽い車体が相当なアドバンテージとなる。
このYZF-R15Mというマシンの最大の長所は、このエンジンパワーとの車重のバランスにあるのだ。YZF-R15Mを相棒に、自身の体重を使って荷重コントロールしながらメリハリのある運転をこころがければ、自ずとスポーツライディングの基礎が身につけられるだろう。
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