国内での正規販売が決定しているVストロームSXであるが、カー用品・バイク用品店を全国展開しているイエローハットグループで、オートバイ販売店である「バイク館」がいち早く並行輸入を開始。全国60店舗のお店で購入することができる。このVストロームシリーズの末弟を元初心者向けオートバイ雑誌編集長の谷田貝 洋暁が試乗レポート。

ダートも楽勝!? -実走インプレッション-

19インチホイールの落ち着きと適度なスポーツ性を両立

跨ってみてびっくりしたのはその軽さ。このVストロームSX、見た目はかなり大柄なマシンに見えるのだが軽いのだ。兄貴分のパラレルツインのVストローム250と比べれば重さは22kgも軽いのだが、その軽さが取り回しているだけでよくわかる。

この軽さの理由は、ジクサー250シリーズにも使われている250ccの油冷エンジン。冷却装置に水やウォーターポンプが必要な水冷方式ではなく、エンジンオイルをシリンダーヘッド周りにも循環させ、オイルクーラーで冷やす油冷方式を採用。空冷エンジンよりもパワーを出しながら、水冷エンジンよりも軽いというバランスの良いエンジンとなっている。

実際、この油冷エンジンはピークパワー26.5psを9300rpm、最大トルク2.26kgf・m/7300rpmで発揮。パラレルツインのVストローム250がピークパワー24psを8000rpm、最大トルク2.2kgf・m/6500rpmであることを考えるとその軽さとパワーのバランスの良さがよくわかる。

走ってみても、油冷単気筒エンジン由来の軽さはしっかり感じられる。167kgの車体はひらひらとした軽快感が強めのキャラクターで、コーナリングもスポーティにこなしてくれる。ちょっと車体が重めで安定志向の強いパラレルツインのVストローム250とは随分走行フィーリングが違い、軽快な走りが楽しめる。腰を落としてのリーンインでのコーナリングもしっかり楽しめるところは、アドベンチャーモデルの中でもロード性能に重きを置くVストロームシリーズらしいところだ。

ただ面白いのは、VストロームSXがアドベンチャーモデルの王道であるフロント19インチサイズのホイールを採用していること。この大きめなフロントホイールのおかげで、車重からくる軽快感がありながらも、その走りにはこの大きなフロントホイールからくる落ち着きもあり、アドベンチャーモデルらしい安定感がしっかり感じられる。単なるスポーツバイクではなく、しっかりツアラーとして長旅に向くキャラクターも作り込まれているというわけだ。

このキャラクターならフラットダートくらいは楽勝!?

今回の試乗会場は、教習所の敷地内。ということで不整地路面を走ることはできなかったが、波状路や岩が埋め込まれた凸凹路、5cmほどのギャップは走ることができた。

まずスタンディングしてみると、パラレルツインのVストローム250よりもスタンディングがとりやすいことに驚いた。しっかり引かれたハンドルポジションのおかげでスタンディング時に腰が引きやすく、体重移動もしっかり行えるのだ。

また低速域にしっかりトルクが出ているエンジンのおかげで、微速前進やスタンディングスティルのような動きもしやすい。

ちょっとした段差を使ってアクションしてみれば、しっかりフロントタイヤが持ち上がるだけのエンジンパワーがあるのもいい。167㎏の軽めな車体に205㎜の大きな最低地上高のおかげで日本によくある未舗装林道くらいなら楽勝で走れてしまうだろう。

ディティール解説

Vストロームシリーズらしい“くちばし(ビーク)”デザインが取り入れられられている。

ハンドル幅はアドベンチャーモデルらしく880㎜とワイドな設定。

燃料タンクは12Lを確保し、燃料供給はフューエルインジェクション。もちろんセルスターターも装備。

大きめのデジタルパネルには、速度、タコの他、ギヤポジションや燃料ゲージ、時計と必要にして十分。インドでは左の空白部分にナビ表示ができるが、今回は確認できなかった。

タイヤサイズはフロントが19インチでリヤが17インチ。ホイールはキャストでチューブレス。

見るからに軽量コンパクトな油冷4ストロークOHC 4バルブ単気筒エンジン。圧縮比は10.7でボア&ストロークは76.0×54.9mmとジクサー250とスペック的にはジクサー250シリーズ全く一緒。

最高出力と最大トルクの数値が若干違うがそれは四捨五入によるものだ。左側シュラウドの内側には油冷用のオイルクーラーが設置されている。

ジクサー250シリーズとギヤ比も一緒で、開発陣によれば機械的に変わるところはないとのこと。唯一の違いはオイルクーラーにメッシュのガードが追加されたことぐらいだとか。

前後セパレートタイプのシートを採用。グラブバーを兼ねるリヤキャリアも標準装備している。

タンデムシート下には、なんとかETCくらいは収まりそうなスペースがあった。ファーストエイドキットも付属。

ブレーキはバイブレ製で前後ディスクブレーキを採用。もちろんABSも装備している。

車体左側にある金網のようなパーツはサリーガード。インドの女性が着る丈の長い民族衣装で横乗りタンデムするときに裾を巻き込まないための装備だ。

アドベンチャーモデルらしくステップは、踏ん張りやすいワイド&ギザギザ仕様。

ラバーパッドはボルト留めで取り外しが可能。ダート走行時には積極的に取り外そう。

ギヤは6段変速で、6速はかなりオーバードライブ設定で250ccクラスながら高速巡航走行もそれなりに可能だろう。

ヘッドライトにLEDを採用しているのに対し、テールランプやウインカーは一般的なバルブを使用。

アドベンチャーモデルらしく、幅広のハンドルには小ぶりだがハンドガードも装備している。

リヤショックにはプリロード調整機構も装備しており、積載や二人乗り時の快適性をアップさせられる。

エキゾーストパイプは下回しであるが205㎜の最低地上高を確保。非常に小さいがアンダーガードも装備している。

タイヤはMRFのMOGROP METEOR-FM2。KTMの250アドベンチャーへの採用実績があるタイヤだ。

【まとめ】軽量コンパクトなアドベンチャーのエントリーモデル

世界的にアドベンチャーモデルが流行しているが、ハードルとなるのはその迫力ある車格からくる重さだろう。VストロームSXは、油冷エンジンのおかげでアドベンチャーモデルとしては167kgと非常に軽く、車格もコンパクト。またエンジン特性も扱いやすいうえに、ある程度のスポーツ走行も楽しめる。このため初めてのアドベンチャーモデルとしてはもちろんだが、免許取得後の初めてのバイクとしても非常にいいキャラクターに仕上がっている。ただ、唯一のウィークポイントは意外に高い835㎜のシートからくる足つき性の悪さ。それだけ克服できればVストロームSXは、エントリーモデルとしても非常にバランスの良いモデルと言える。

またこのVストロームSXはすでに国内モデルも販売が決定しており、そちらの登場時期や価格も気になるところ。「バイク館」では距離無制限の2年保証を用意し、部品に関しても消耗品に関しては国内にストックしているという。ただ補修部品に関しては都度の取り寄せになるため若干の時間がかかるとのことだった。

ちなみに国内モデル発売後に、並行輸入モデルを正規販売店に持ち込んでも正規のサービスは受けられないと思っておこう。

Vストロームらしい“くちばし”が特徴的なスタイリング




【全長/全幅/全高】2,180mm/880mm/1,355mm
【車両重量】167kg
【軸間距離】1,440mm
【最低地上高】205mm
【販売価格】529,000円(税込、バイク館平行輸入車)

Vストロームシリーズの末弟として誕生したVストロームSXだが、特徴的な“くちばし”を持つビークデザインは紛れもなくVストロームシリーズのソレ。長兄のVストローム1050に雰囲気の似たエッジを効かせたスタイリングが与えられている。

シートはちょっと高めポジション



【シート高】835mm
パラレルツインエンジンを搭載するVストローム250がシート高800㎜なのに対し、VストロームSXは835㎜と35㎜シートが高く、足着き性に関して言えばあまりよくないと言わざるをえない。ただ最低地上高は205㎜確保しており、アドベンチャーモデルとしてフラットダートくらいなら楽々こなしてくれそうだ。実際、スタンディングのポジションも取りやすく、非常にコントローラブルだった。

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コメント一覧
  1. 誤字許さないマン より:

    >足着き性に関して言えばあまりよくないと言わざるおえない。

    言わざる『を』得ない。

  2. 匿名 より:

    シート高的にVスト650のように油圧ハイトアジャスタはつけて欲しいが
    なんにせよ国内発売日発表が待ち遠しい

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