日本国内販売向けのバイクに対して、2022年11月生産分より令和2年排出ガス規制が適用されることから、これに適合していない生産終了モデルが大量発生。長年にわたり400ccクラスの代表格となってきたあのモデルや、かつてはバイクの花形クラスだった4気筒ナナハン、各社を代表するような車種や伝統だったエンジンが、姿を消そうとしています。でも今ならまだ、在庫車の新車購入も可能かも!?

一部車種はすでに超プレミア価格に高騰化

ウェビックの新車・中古車検索サイト「バイク選び」でCB400SFの相場を調べてみると、2022年11月14日現在では新車の取り扱いはナシだったが、中古車は235台掲載されていた。CB400SFの車両価格は88万4400円~となるが、走行距離の少ない程度のいい車両はメーカー希望小売価格を超える価格で値付けがされていた。掲載235台のうち57万円未満は21台だった一方、167万円帯で29台、157万円帯で26台……。全国平均は130.39万円で、高額帯での掲載車両が目を引く。CB400SFの価格相場表はコチラ

 

近年、市販二輪車の排ガス規制強化とそれに伴う旧型モデルの生産終了が繰り返されてきましたが、日本では2022年11月にも継続生産車に対する新たな規制(令和2年排出ガス規制)が施行され、これにより多くの車種が2022年10月で生産終了となってしまいました。

しかしこれは、2022年11月以降は新車を“販売”してはいけないというわけではなく、あくまでも“生産”ができなくなったということ。つまり在庫があれば、まだ新車で購入できるバイクもあります。

例えば国内メーカーとしては久々のスーパーモタードモデルとして新登場したKLX230SMは、令和2年排出ガス規制に適合していないモデルですが、発売日は2022年10月15日。もしも販売まで規制されていたら、わずか17日間しか買えないことになってしまいますが、実際には11月以降も新車注文が可能です。

つまり、在庫があれば排出ガス規制の影響による生産終了車でもまだ購入可能なのですが、中には「これで最後」という理由に加えて、コロナ禍による生産遅延で駆け込み生産ができなかったことも品薄状態に拍車をかけ、新車価格が超高騰しているモデルもあります。とはいえ今ならまだ、新車が買える2022年限りの生産終了モデルも多数!

写真を撮って送るだけという手軽なバイク買取サービスを展開する「アップス」では、CB400SFの高騰ぶりについての記事で解説。同サイトでもCB400SFは人気があり、価格も高額だ。記事はコチラ

2022年の生産終了モデルはかなり衝撃的

これまでも多くの名車が、排ガス規制強化やヘッドライトの保安基準変更、ABSの装着義務化などの法規対応ができないことを理由に姿を消してきましたが、2022年10月での生産終了車には、これまで各社を代表してきたような車種あるいは伝統的なエンジンを使うモデルが含まれていて、多くのバイクファンに衝撃を与えました。

そこで今回は、2022年10月の生産終了車から、このタイミングだからこそあらためて注目しておきたいモデルをピックアップ。あくまでも筆者の独断による車種選択ではあるのですが、“これまでの歴史”というところに着目しながら5車種を挙げました。

すでにプレミア価格あるいは在庫僅かで購入が現実的ではないモデルも含まれていますが、逆に「今ならまだ買える」車種もあります。生産終了車が何年かして新型になって復活する場合もあるので、これが必ずしも新車でその車種を手に入れられるラストチャンスとは限りませんが、まだ購入できそうなモデルについてはちょっと購入を検討してみてはいかがでしょう?

衝撃度第1位 ホンダ・CB400 SUPER FOUR

30年間も400ccクラスの代表格だった!

1992年4月の発売以来、1998年まで7年間で約7万6700台を販売し、カワサキのゼファーシリーズやZRXシリーズ、ヤマハのXJR400シリーズなどと並んで1990年代ネイキッドブームのけん引役となったのが、水冷並列4気筒エンジンをリヤツインショックの車体に搭載したホンダのCB400スーパーフォア。

その後、1999年型ではエンジン回転数に応じてバルブ駆動数が2⇔4に切り替わるハイパーVTEC機構を搭載するなど、刷新と熟成が続けられ、2022年でついに30周年を迎えました。

基本的には日本独自となる400ccクラスは、2000年代に入ってから国内マーケットの縮小と環境規制の強化が影響してモデルラインアップが大幅に減少し、これに伴って4気筒エンジン搭載車は壊滅的な状況になりましたが、そういう時代にあってもCB400スーパーフォアだけは、日本のバイク乗りに向けて法規対応を続けながら生き残ってきました。しかし2022年、ついにその歴史に終止符が打たれました。

これを惜しむファンは多く、CB400スーパーフォアの最終型はすでに価格が高騰。新車在庫は200万円近い値段を付けていることも少なくありません。これは、スーパーフォアをベースにハーフカウルを装着したスーパーボルドールも同様。価格を考えると、これから新車を購入するのはあまり現実的ではないかもしれませんが、それでも欲しいというファンは、決断を急いだほうがよいかもしれません。

https://news.webike.net/motorcycle/253165/

衝撃度第2位 スズキ・GSX-R1000R

スズキのフラッグシップ機がこれで消滅!?

11月に入ったところで、スズキが国内公式サイトで正式に「生産終了」をアナウンスしたのが、フラッグシップスーパースポーツモデルとしてレースシーンでも活躍してきたGSX-R1000R。

同社は、2022年限りでMotoGPおよび世界耐久選手権のワークスチームを撤退させることを発表しており、加えて市販車ラインアップからもスズキを代表してきたスーパースポーツが消滅するというニュースに、寂しさを感じずにはいられません。

GSX-R1000は2001年型でデビューし、当時まだしっかり定着していなかった1000ccスーパースポーツのカテゴリー確立に貢献するとともに、その優れた性能からしばらくの間はこのクラスのベンチマークとなってきました。2017年のフルモデルチェンジにより、上級版としてGSX-R1000Rも登場。このときから、このR仕様のみ日本国内仕様も販売されてきました。

北米などでは2023年型も発表されていますが、日本と排ガス規制のレベルが同じ欧州でも生産終了との情報。これにより、逆輸入車としても2023年型を日本で乗ることは厳しそうですが、現在のところ新車在庫はそれなりにある模様。価格もとくに高騰していません。

スズキがGSX-R1000シリーズをこのまま消滅させるのか、あるいはウワサにあるとおり数年後に新型として復活させるのかは不明ですが、スズキのスポーツバイクファンはこの機会に入手してみてはいかがでしょう?

https://news.webike.net/motorcycle/241548/

衝撃度第3位 スズキ・GSX-S750

ナナハン4気筒の伝統がついに途絶える!

日本においては、2011年型でデビューしたGSR750の後継として、2017年型で発売が開始されたのがGSX-S750。この2017年型で、外観刷新やブレーキ強化などが図られていますが、基本的には2005年型GSX-R750用をベースとするスーパースポーツ由来の749cc水冷並列4気筒エンジンを、専用開発されたしなやかなスチール製フレームに搭載し、バランスに優れるスポーツモデルに仕上げたネイキッドである点に変わりはありません。

1990年代まで、スポーツバイクの世界で“ナナハン4気筒”は特別な意味を持ち、スーパーバイクレースのベース車としての役割を担っていた当時のスーパースポーツも、ナナハン4気筒が主役でした。

その後、同じクラスに1000ccツインマシンが走れるようになった時代を経て、市販車のラインアップが変わったことで2000年代前半にスーパーバイクレースは1000cc化。これによりナナハンはレースベース車としての役目を完全に終えましたが、スズキはこだわりを持ってGSX-R750の生産をその後も続けてきました。

そして北米市場では、2023年モデルのGSX-R750もあるのですが、環境規制が異なる日本では販売できず、ナナハン4気筒を新車で楽しめるのはGSX-S750だけ……という時代が続いてきたのですが、それもついに終わりを迎えそうです。

こちらも、新車はまだ在庫があり価格高騰もナシ。懐かしのエンジンを新品で手に入れるなら、今がラストチャンスかもしれません。

衝撃度第4位 ホンダ・VFR800F

ホンダがこだわり続けたV型4気筒も……

ホンダは、1979年のロードレース世界選手権に4ストV型4気筒のNR750を投入(1982年には2ストのNS500にシフト)。市販車でも、1982年のVF750シリーズでV型4気筒を初めて手がけると、VF750Fをベースにレーシングマシンを開発し、その技術をさらにフィードバックしながら市販スポーツツアラーのVFR750FやスーパースポーツのVFR750Fを設計してきました。さらに、400ccや1000ccクラスでもV4エンジンを展開するなど、とくに1980~90年代にはかなりのこだわりを持っていました。

1990年代後半以降、水冷V4エンジンはスポーツツアラー用に路線変更。1998年のVFRをルーツとするVFR800Fは、約20年という歴史の中で熟成を受けつつ、これをベースとしたクロスオーバーモデルのVFR800Xとともに、ホンダ最後の水冷V4モデルとして販売されてきました。

2002年以降のモデルは、エンジン回転数によりバルブ駆動数が2⇔4に切り替わるハイパーVTEC機構も搭載。これもホンダの伝統的な技術となってきました。すでに新車在庫は少ないようですが、現在のところ高騰化している雰囲気はありません。

衝撃度第5位 ヤマハ・FJR1300A/AS

伝統のヨーロピアンツアラーが終焉

2000年9月のドイツ・インターモトで初披露されたのがFJR1300。しかしそのルーツは、空冷並列4気筒エンジンだった1984年型のFJ1100まで、さらに遡ることができます。

当時のいわゆるハイスピードツアラーは、1986年にはFJ1200へと進化。「セカンダリーロードを2人乗りで素早く走り抜ける操縦性とアウトバーンでの安定性」が評価されていました。さらに1991年には国内仕様も登場。ただし1994年モデルを最後に、国内仕様は姿を消しました。

そして、FJ1200の特徴を継承しながら、より新しいモデルとして誕生したのがFJR1300。新設計の1298cc水冷並列4気筒エンジンを、アルミ製フレームに搭載した、世界最高水準を目標とした欧州横断ツアラーでした。

2003年にはABS搭載の1300A、2006年にはクラッチ操作なしで変速ができるAS仕様も登場。2013年や2016年には大きくモデルチェンジされながら、20年以上も販売されてきました。

超高速での長距離移動ができない日本では、それほど人気が高いモデルではないのですが、ひとつの歴史的なモデルが姿を消そうとしています。こちらも、現在はまだ新車の購入が可能で、価格も高騰していないようです。

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