こんにちは! 今週の「WebikePlusスタッフが勧める意外といいぞ!」のコーナーです。

安くてカッコいいバイクを買ったので、意気揚揚と仲間に見せたら「ああ……コレ買ったのか……」なんて言われ、その言葉どういう意味!? と思いつつネットで調べたら「壊れやすい」だの「不人気」だのひどい言われよう。

(人気ないってマジかよ……だから安かったのかっ!?バイク屋はいいバイクって言ったのに……)

そんな経験ありませんか? だからってさっさと買い替えるのはちょっと待った。キラキラした大人気車ではなくても、どんなバイクも個性の塊。メーカーが「これは売れるぞ!」と意気込んで開発したバイクたちは、それぞれ独特の魅力を持っているもの。

そこで、人気はどうあれいいものはいいぞ! とゴリ押ししていくのがこのコーナー。人気モデルに乗ってりゃエライ時代は過去のもの、現代こそマイナーバイクを全力でお勧めしたい! と「マイナーバイク好き(自称)」のWebike+スタッフ・西田が独断でピックアップしたモデルを紹介していきます!

前回記事はコチラ!

ホンダビジネスモデル「CD」シリーズのご長寿モデル

今回紹介するホンダ「CD125T ベンリィ」は1977年発売のモデル。昭和52年……じつに45年前の登場です。王貞治選手は現役でホームランを打ちまくり、スーパーカーブームが巻き起こり、小学生は「ダメダこりゃ!」を連呼していたこの時代。同世代のバイクといえば、ミドルクラスの4気筒として大人気となった「CB400FOUR」、スズキ初のDOHC4気筒「GS750」など、現在は絶版旧車の名作として語られるモデルばかりです。

ではCD125Tはどうなのかというと、旧車トークの中でも語られることの少ないモデルです。というのはこのモデル、カテゴリーとしては「ビジネスバイク」――いわゆるビジバイにあたり、働くバイクとしてお店の配達や営業といったビジネス用途専門のモデル。趣味性の高いスポーツモデルとは異なり、すごいハイメカや高性能をうたうモデルではありません。「CD」というシリーズはホンダのビジネスモデルに共通する型式名で、スポーツモデルの「CB」との区別がされていました。

とはいえ、バイクとしては非常にロングランな生産の続いたモデルでした。しかしほとんど外見は変更なく、発売当時からメッキタンクに大型ウィンカー、箱型メーターボックスにデっカいキャリアというスタイルのまま。1987年のマイナーチェンジ、それまでの4速ミッションから5速への変更、電圧の12V化、点火装置のCDI化などの近代化を受け、2001年の生産終了までを駆け抜けています。リアルクラシック!

だからこそ、クラシックモデルが高騰している現代であっても、けしてものすごい値上がりをしているわけではなく、比較的高年式で状態のいいモデルを手に入れやすいのも特徴。「ネオレトロ」がブームとなって久しいですが、本物の「レトロ」バイクを、劣化や性能の不安を感じずに維持できる魅力があります。

 

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ホンダから1977年~2001年まで、24年間の間生産されたCD125T。ビジネスユースを企図した「CD」シリーズの一角で、大型キャリアや大容量タンク、アップハンドルにロータリー式ミッションといった、業務利用のために便利な装備をそなえた。外見はほぼ変化していないが、マイナーチェンジで現代の交通環境にも適応できるよう改修が施されている。

 

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本来は大型キャリア、レッグシールド、キックペダルを純正装備しているが、写真のモデルでは取り外されている。しかしそれ以外はノーマルスタイルのまま。キックペダルに関してはセルスターターもあるため、始動は用意だ。

 

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タンク、マフラーなどのパーツには分厚いメッキが施され、年式を感じさせない美しさだ。大きなフェンダーやアップハンドルにスポーティーさはないが、だからこそのクラシカルな愛らしさともいえる。「ネオレトロ」ではない、ホンモノのレトロバイクだ。

 

質実剛健な作りこみに、スポーツエンジンベースのパラツイン

もちろんデザインがクラシカルというだけで、長い生産期間の間ビジネスバイクとして活躍したわけではありません。実用性を最大限重視された装備をそろえているのもCD125Tの魅力。エンジンは124ccのOHC空冷並列2気筒で、コンポーネントは「CB125T-I」と共有しています。CBではスポーツモデルとして高出力を発揮したエンジンながら、CDではギアレシオを変更し、最高出力は下がったもののトルクフルなエンジン特性となりました。トップスピードやカタログ値よりも、ストップアンドゴーや坂道発進といったシチュエーションに重きを置いた調整です。

ビジネスバイクらしいポイントとして注目したいのはシフトパターン。ロータリー式を採用しています。これは革靴などのバイク用でない靴でも傷まないように考案された方式で、スーパーカブなどでもおなじみ。ただ、こちらはカブの遠心クラッチとは異なり一般的なクラッチを採用。そのため見た目は一般的なシフトのモデルと同じですが、シフトペダルはカブと同じく靴を傷めづらいシーソーペダルとなっています。ミッションは初期は4速ながら、モデルチェンジで5速に変更。「OD(オーバードライブ)」ランプでトップギアを知らせるインジケーターも追加されました。

 

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エンジンは124cc、OHC空冷並列2気筒。出力は12PS/9000rpmを発揮する。共通コンポーネントを持つCB125Tはより高回転・高出力を目指したが、実用性を鑑みてトルクフルな性質にギアレシオ等が変更されている。負圧式のキャブレターはシングルで、アイドリングアジャスタやスクリュー類へのアプローチもしやすいシンプルな構造。

 

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ミッションはロータリー式。クラッチは一般的な方式のため、カブとは違いクラッチレバーがあり、操作感も一般的なバイクと同じだが、ペダルは靴を傷めずにシフトダウンができる「シーソーペダル」を採用している。

 

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1987年のモデルチェンジで5速ミッションとなり、メーター内に「OD」インジケーターが追加。トップギアに入っているとオレンジに点灯する。変速比が1.000より高い高速走行モードだという表示だ。

 

スチール製タンクは10.0Lの容量を持ち、特徴的なメッキ仕上げにタンクパッドを標準装備。このデザインは60年代のホンダでは一般的なもので、「CB450K」「CL72」といった名作スポーツモデルが採用していたもの。77年時には既にひと昔前のスタイルとなっていましたが、実用性を考えればニーグリップしやすいタンクパッドが標準装備されていたほうがよいのは当然です。メッキ処理もただのデコレーションではなく、防錆に効果がありました。このメッキについてはマフラーなどでも同じ効果があり、分厚い仕上げとなっているため古いモデルでも輝きを残すことができます。

 

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タンクはブラックの塗装面にメッキ仕上げで、エンブレムとタンクパッドを装備。容量は当初11.0Lだったが、モデルチェンジ後は10.0Lとなった。フルサイズモデル並みの大容量に加え、燃費もメーカー公称60km/lと非常に高いため、コスト面でも優秀。タンクのデザインは60年代のホンダスポーツモデルに似ており、現代に見るとものすごく斬新でカッコよし!

 

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タンクと同じく、マフラーにも防錆効果のある分厚いメッキが施されている。風雪や潮風にさらされるビジネスバイクだからこそ、簡単に錆びだらけになっては困るのだ。写真のモデルは1992年式で生産から30年が経過しているが、メッキ面に錆びは少ない。

 

ホイールサイズは前後17インチ、スポークタイプ。ブレ―キは前後ともにドラム式で、制動力は現代基準からみると少し不安定ながら、消耗品の安さや整備のしやすさはこちらが上。電子制御はもちろん一切ありません。サスペンションはカバードのテレスコピックで、インナーチューブの錆びを防ぎます。
デザイン上の大きな注目ポイントはメーター。大きな四角いメーターボックスにインジケーターランプとスピードメーターをそなえ、視認性は抜群。トリップメーターもあるので、給油管理も簡単です。スタイリッシュな雰囲気はぜんぜんありませんが、こちらも実用的なデザインといえます。チョークがトップブリッジど真ん中に設置されており、状態が一目でわかります。

 

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前後17インチのホイールサイズはカブと共通だが、タイヤサイズは若干異なる。またフェンダーは前後ともにスチール製で、甲冑のような重厚感がある。一般的には樹脂製が多くなる箇所だが、様々な環境を走り切るために強度を持たせてあるのだ。

 

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メーターは長方形で、スピードメーターやインジケーターを収めたオールインワン。スピードメーターには100kmまでプリントされており、ギアに合わせたスピードの表示がある。このメーターボックスは野暮ったいと嫌われることが多かったようで、「弁当箱」などといわれることもあるが、分解が非常に簡単で整備性がいいというビジバイらしいメリットも大きい。

 

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ウィンカーは大型で視認性も高い。ヘッドライトはハイ・ロー装備。光量はどちらも十分なレベルだが、これはモデルチェンジ時の12V化の恩恵だ。ホーンも存在感があり、意外と大きな音が出る。

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ビジバイ装備の特徴! ウィンカーブザーがトップブリッジの下に設置。ウィンカーを入れると「ぷぅー、ぷぅー」と可愛い音を出す。安全のための装備ながらスポーツバイクでの採用はほぼないので、オミットされることも多いパーツながら個人的にはとても好き。

 

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スイッチボックスはアルミ製。近年のモデルではほとんど樹脂製パーツであるため、基本設計の古さを感じさせるポイントだ。しかし操作感はカッチリしていて、独特の美しさを放つ。セルスターターも標準装備。

 

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迫力の2本出し。125ccで2本出しマフラーのスタイルはなかなか珍しく、クラシカルなイメージに拍車がかかる。サウンドはノーマルだと非常に静かだが、スロットルを開けていくとパラレルツインらしい歯切れのいいふけ上がりだ。

カスタムベースとして一躍レーシーに!?

そんな丈夫でクラシカルな雰囲気を放つCD125Tですが、そのイメージを活かしつつカスタムベースとして楽しんでいるライダーもいます。特に空冷パラレルツインのエンジンは、サイレンサーの交換で非常にレーシーなサウンドに変貌! アップハンドルは低めのスタイルに変更するとメッキ仕上げ多めのスタイルも相まり、実に渋いカフェレーサーへ仕上げることができます! シングルシートを活かしてビンテージ風にしているビルダーも!

絶版から年数も立ち、専用カスタムパーツはほとんどないものの、ベースがシンプルなためにさまざまなパーツをアイデアに合わせて取り付けできるところも魅力。アイデア次第で自分なりのクラシックカスタムを実現できる、最高のカスタムベースともいえるんです!

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カスタムベースとしてひそかに人気なCD125T。スポーツマシン譲りの空冷2気筒を活かし、サイレンサーを交換してレーシーなサウンドを発揮することもできる。バーハンドルのため、ハンドル周りのスタイル変更も容易だ。

 

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ここまでやるか! というほど完成度の高いカフェカスタム。しかしよく見ると、タンクなど純正そのままの部分も。元のスタイリングが古めかしいからこそ、レーシーなスタイルが独創的に映る。

 

つまり意外といいぞ「CD125T」

CD125Tの魅力はそのスタイルだけではなく、丈夫な各種パーツやビジバイらしい実用性にもあるのですが、近年はカスタムベースとしても楽しめるモデルである点にあります。特にヒストリックな空冷2気筒のエンジンは、水冷単気筒が当たり前の現代、もはや限られたものになってしまいましたが、「ネオ」ではない本物のクラシックモデルを欲するライダーにとってはとても魅力的なのではないでしょうか!

まとめるとCD125Tは

・1977年からスタイルがほとんど変わらないリアルクラシック!

 

・ビジバイらしい丈夫で堅実なパーツは実用性も高!

 

・カスタムベースとしても魅力的なサウンドと造形!

というバイクなのでした。クラシックバイクとしての魅力を感じるもよし、「働くバイク」としての魅力を感じるもよし、カスタムベースとしての可能性を感じるもよしと、マニアックなライダーにとって注目のモデルだと思います!

CD125T諸元(2001)

全長 (mm) 1980
全幅 (mm) 780
全高 (mm) 1050
シート高 (mm) 730
重量 (kg) 140
エンジン種類 空冷4ストロークOHC並列2気筒
総排気量 (cm3) 124
最高出力 (PS/rpm) 11/9,000
最大トルク (k-gm/rpm) 1.0/6,500
燃料タンク容量 (L) 10.0
変速機形式 5速/ロータリー式
タイヤ 3.00-17
3.00-17
ブレーキ 機械式リーディングトレーディング
機械式リーディングトレーディング
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