
2015年の東京モーターショーにスズキが参考出品したターボエンジン「XE7」を覚えているだろうか? コンセプトモデル「リカージョン」(2013年)に搭載されると思われたが、その後発売には至っていない。
これが、2019年にノンターボ(=NA)モデルとして特許出願されており、11月のミラノショーで登場すると予想されるのだ。
XE7は当時の取材では700cc、新型CB750ホーネットやMT-07とガチンコに!?
10月4日に初公開されたホンダのCB750ホーネットやヤマハのMT-07など、近年並列2気筒エンジンを搭載したミドルクラスが増えている。そんな中でスズキはV型2気筒エンジンを中心とするラインナップで対抗しているが、過去に並列2気筒エンジンを開発した事例があった。
それが、2015年の東京モーターショーに参考出品されたXE7で、公開されたスペックは並列2気筒インタークーラーターボDOHC4バルブ。排気量などは不明だが、当時の取材では700ccと言われていたのでCB750ホーネットの755cc、MT-07の688ccと直接対決するクラスになる。
XE7は実際に発売されることはなかったが、2019年になってこれによく似た並列2気筒エンジンを搭載したノンターボのネイキッドモデルがスズキから特許出願されている。この流れから推測できるのは、XE7は自然吸気のエンジンとして開発が継続されているということだろう。
特許の図面では骨格のみしか分からないが、これがネイキッドスポーツであるのはアップハンドルや倒立フォーク、前後17インチと思しき足回りなどの装備からも明らか。そして、このスズキの新型ミドルネイキッドが、11月のミラノショーで初公開されると予想されるのだ。

GSX-S750 [SUZUKI] 2017年にGSR750をベースに登場。スズキ伝統の750cc並列4気筒エンジンを搭載していたが、今年8月に生産終了をアナウンス。並列2気筒のネイキッドスポーツは、これの後継か!?

XE7を自然吸気仕様にしたと思われるスズキの特許図面。フレームはCB1000Rのようなバックボーンタイプに見える。他にもパイプフレーム+正立フォーク仕様の図面もあるが、スタイルは同じネイキッドスポーツだ。

こちらはXE7を搭載した特許図面でシルエットはリカージョンそのもの。トラスフレームを縫うようにターボやインタークーラーが詰め込まれている。XE7は当時走行テストまで実施されていたようだ。

Recursion(リカージョン) [SUZUKI] 2013年の東京モーターショーに参考出品されたコンセプトモデル。エンジンはSOHC588ccでXE7と別物。この時点では実動状態ではなかった。
XE7は2軸バランサー装備の位相クランク並列2気筒
ターボチャージャーを搭載したXE7は、2015年に東京モーターショーに出品されたタイミングで特許が多数出願されており、そのメカニズムは現在部分的に公開されている。特徴的なのは、上下に2軸のバランサーを装備しているところで、エンジンの振動はかなり抑え込まれていると思われる。
振動対策が実施されることでエンジンを強度部材として車体パッケージに組み込むことができるので、フレームの軽量化も期待できるだろう。また、図面から位相クランクを採用していることが分かるので、CB750ホーネットやMT-07と同じ90度Vツイン相当の爆発間隔になっている可能性が高い。
このタイプの並列2気筒エンジンは、ヤマハを例にするとネイキッドスポーツのMT-07からアドベンチャーツアラーのテネレ700、スーパースポーツのYZF-R7まで、バランスのいい出力特性を実現する。スズキのXE7をベースにしていると思われる新型ネイキッドも、同じようにバリエーション展開を見せるかも知れない。

左がXE7で右がネイキッドスポーツに搭載されている並列2気筒エンジン。左サイドカムチェーンのレイアウトや左側に設置されたクラッチシャフトなど特徴が一致しているので、XE7ベースだと思われる。

XE7の特許図面でクランクシャフト前方上下にバランサーシャフトを2本置いていることが分かる。2軸のバランサーは一般的に1次振動とカップリング振動を抑える効果が見込める。

XE7の特許図面でクランクシャフト正面の図。ピン位置が180度でも360度でもない位置に位相していることが分かるので90度位相と考えるのが妥当だ。
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