
「バイクは基本的には停車しているより走っている時間のほうが長いんだから、足着き性で愛車を選ぶなんてナンセンス!」という意見がある一方で、初心者や女性などを中心に「そうは言っても、停車時にちゃんと足が着かないのは不安!」という人が多いのも事実。そこで、国内メーカー製の現行モデルで、シート高が低めに抑えられた新車を探してみました!
目次
絶対に「低シート=足着き性良好」なわけではないが……
身長160cm以下のライダーや、バイクの操作にまだ慣れていない初心者、あるいは身長があっても非力な女性の場合、愛車を選ぶ際に“足着き性”をかなり重視するという人は少なくないようです。
バイクの操縦に慣れてくると、多少足着きが悪くても問題なく操れるようになることが多いですし(車重250kg超で両足バレリーナ状態になるアドベンチャーモデルなんていうのは話が別ですが……)、とくにスポーツ系にはその位置にシートがあることで優れた運動性能を発揮できるよう設計されているモデルも多いので、シート高ばかりを考えて愛車を選ぶのはちょっともったいない気もしますが、でも「足が着かないと不安で乗れないの!」という切実な訴えも理解できます。
そこで、国内メーカーが日本で正規販売する新車のなかで、足着き性に優れるモデルについて考えてみました。といっても、多数ある各社のバイクに片っ端からまたがって……というテストは難しいので、メーカーが発表している主要諸元(スペック)に記載されているシート高を基準に推察。
足着き性の良い悪いは、シートの高さだけでなくシートの幅やステップの位置、サイドカウルやフレームなどの張り出し具合によっても変わりますが、ひとつの目安にはなります。
やっぱりクルーザー系が低シート
ハーレーダビッドソンに代表されるようなクルーザーモデルは、いわゆる“ロー&ロング”な車体設計で、シートが低めであることは、ちょっとバイクを知っている人なら(あるいは知らなくても写真や実車を見れば)容易に想像つくでしょう。実際、現在新車販売されている国内メーカー製モデルのうち、スクーターを除く軽二輪以上の機種を調べてみたところ、低シートを誇るのはすべてクルーザータイプでした。
ただし、度重なる排ガス規制強化の影響などもあり、国内メーカーが現在国内で新車販売しているクルーザータイプというのは超限定的。そのため、250/500/1100で構成されるホンダの現行レブルシリーズが、低シートカテゴリーでは圧倒的な勢力を誇ることになっています。
ちなみにホンダには、今年で生産終了となるCB400スーパーフォアとCB400スーパーボルドールという、普通二輪免許で乗れる水冷4気筒モデルがありますが、こちらもシート高は755mmと低め。また、車重がかなりあるためシート高が低いからといって安心感につながらないかもしれませんが、ラグジュアリークルーザー系のゴールドウイング/ツアーもシート高は745mmと低く抑えられています。
そんなゴールドウイングシリーズに限らず、いくらシートが低くても重たい車両は支えたりまたがったまま取り回したりするのが大変ですし、逆に車体が軽ければつま先だけで支えるときの安心感も増します。そこで、参考までに車重も調べておきました。ぜひ、愛車選びの参考にしてみてくださいね!
国内メーカー製MT車のシート高&車重(軽二輪以上/2022年10月現行車)
メーカー名 | 車名 | シート高(mm) | 車重(kg) |
---|---|---|---|
ホンダ | レブル250/Sエディション | 690 | 170/171 |
ホンダ | レブル500 | 690 | 190 |
ヤマハ | ボルト Rスペック(※生産終了) | 690 | 252 |
ホンダ | レブル1100/DCT | 700 | 223/233 |
カワサキ | バルカンS | 705 | 229 |
ホンダ・レブル250/Sエディション
低シートも4年連続国内販売台数トップを後押し
初代は2017年4月に発売開始。2020年型では、灯火類のフルLED化をはじめとするマイナーチェンジを受けたのが、249cc水冷単気筒エンジンを搭載するレブル250シリーズです。
2020~2021年は、物流の混乱などによる生産の遅延がありながらも、年間1万3000台前後を国内販売。日本における年間ベストセラーモデルとなっています。その要因のひとつは、シンプルな車体構成とこれに起因する低めの車両価格、そして現行モデルとしては軽二輪クラスで唯一となるクルーザースタイルであるところですが、同時に690mmの低いシート高が、「これなら自分にも乗れるかも」と、多くのエントリーライダーや女性ファンを獲得した結果でもあるのです。
軽二輪クラスのシングルエンジンということもあり、車重はスタンダードで170kg、車体同色のヘッドライトカウルなどを専用装備したSエディションでも171kgと軽量。低いシート高と組み合わさることで、小柄な女性でも絶大な安心感で操縦できると評判です。
ホンダ・レブル500
250と共通ボディでこちらもローシート
レブル250と同時デビューしたレブル500は、250が単気筒エンジンなのに対して471cc水冷並列2気筒エンジンを搭載していますが、じつは車体の基本部は250と共通化されています。それはつまり、690mmのシート高も同じということ。エンジンが大きくなるぶん、車重は190kgとかなり増しますが、こちらも同じく多くの人が“べた足”で停車することができ、絶大な安心感を得られます。
ヤマハ・ボルト Rスペック(生産終了)
空冷エンジンのため残念ながら生産終了
2022年10月現在、ヤマハのウェブページに掲載されている軽二輪以上のマニュアルクラッチモデルでもっともシートが低いのは、クルーザータイプとなるボルトRスペック。
シート高は690mmで、これはホンダのレブル250/500に匹敵します。ただしこのモデルは、941cc空冷Vツインエンジンを搭載しており、排ガス規制強化の影響により2022年で生産終了。とはいえ、まだ新車の在庫が多少あり、SR400のようにプレミア価格になっていないことから、今回は現行モデルとして扱いました。
ホンダ・レブル1100/DCT
コンセプトを受け継ぐ新レブルの3作目
ニューレブルシリーズの第3弾として、2021年春に新発売。1082cc水冷並列2気筒エンジンは、アドベンチャーのCRF1100Lアフリカツイン用をベースとしたものですが、専用設計の車体は、先行発売されていたレブル250/500と同様に低重心かつ安心感のある足着き性が追求されています。
シート高は700mmで、リッタークラスとしてはかなり低め。並列2気筒エンジンということもあり車重もそこまでなく、非力な女性や高齢ライダーでもスマートに操れる可能性が高いバイクです。
カワサキ・バルカンS
スポーティさも備えたミドルクルーザー
鋼管フレームに649cc水冷並列2気筒エンジンを搭載し、クルーザータイプとしては深めに確保されたバンク角でスポーティな走りも視野に入れたのがバルカンS。そのシート高は705mmで、ミドルツインならではのスリムな車幅もプラスとなって、良好な足着き性が実現されています。
ホンダのレブル500と同じく、日本ではややマイナーな存在となるミドルパラレルツインのクルーザーですが、足着き性重視のライダーは中古車を含めて視野に入れてもいいバイクでしょう。
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