
近年のアウトドアブームやキャンプツーリング人気も後押しして、「そこまでハードじゃないフラットな路面の林道くらいなら、バイクでオフロードも走ってみたい……」なんて考えているライダーも増えているみたい。では、“初めての林道ツーリング”に向いているバイクとは? オフロード系の王道モデルを中心に、オフロードデビュー用バイクを考えてみました。
目次
初めてのダート走行なら足着き性や軽さも大事
一般的に、オフロードでは車体の軽さが命。車重が運動性能に大きな影響を与えるというのは、オフロードもオンロードも同じですが、モトクロッサーやエンデューロマシンなどのオフロード系モデルはとくに軽さが重視されており、だから現在でも競技用モデルのほとんどに軽量コンパクトな単気筒エンジンが使われています。ツーリングライダーが、初めて林道などの比較的フラットなダートを走るのに最適なモデルを考えたとき、車体の軽さというのはかなり重要な項目。軽ければ、極低速でトコトコ走ったり停止したり、あるいは踏み込んだ林道の先が荒れていて「こりゃダメだ!」と引き返すためにUターンするときなどに、愛車を倒すことなく支えられる確率はアップします。
ほぼ同じような理由で、足着き性のよさ(=低めのシート高)というのもポイント。オフロードスポーツモデルの場合、ストロークが長いサスペンションや大径の前後ホイールを使いつつ車高を上げ、最低地上高を確保してオフロード走破性を上げるため、必然的にシート位置もかなり高くなっています。しかしフラットな林道を走る程度ならそこまでの最低地上高は必要なく、むしろ低めであることでオフロード初心者が両足を着きながらトコトコゆっくりダートを走るなどの使い方に向くようになることも多いのです。
セロー250の消滅が大きな痛手

2020年に生産終了となったセロー250はシート高が830mm、車重が133kg。車重はライバルと比較しても軽い
フルサイズホイールを履いたオフロードバイクで、高速道路を含むさまざまな道を問題なく走れて、オフロードでは比較的良好な足着きと軽い車体で“二輪二足”のトレッキングができるマシン。これは、長年にわたりヤマハ・セロー250の専売特許でした。かつては、ホンダのSL230やXR230、カワサキのスーパーシェルパなどのライバルも存在しましたが、排ガス規制強化の影響などにより廃止。結果的には、初代がセロー225として1985年に誕生して以来、マウンテントレッキングの楽しさを提唱し続けてきたセローだけが生き残ったのです。
しかし、そのセローも初代誕生から35年、250化されてから15年となる2020年に登場したファイナルエディションで生産終了。これにより現在、日本国内で新車販売されているモデルで、オフ初心者がときには両足を着きながらトコトコと未舗装路に踏み込んでいくのに向いているバイクの選択肢はより減った状況です。とはいえ、ホンダとヤマハが軽二輪オフロードモデルのシート高を低減して通常ラインアップ化。このあたりがまずは林道デビュー用の狙い目となりそうです。
オフロードモデルのシート高&車重(2022年9月現在)
メーカー名 | 車名 | シート高(mm) | 車重(kg) |
---|---|---|---|
ホンダ | CT125・ハンターカブ | 800 | 120 |
カワサキ | ヴェルシス-X 250 ツアラー | 815 | 183 |
カワサキ | KLX230S | 830 | 136 |
ホンダ | CRF250L | 830 | 140 |
ホンダ | CRF250ラリー | 830 | 152 |
ホンダ | CRF250L(s) | 880 | 140 |
ホンダ | CRF250ラリー(s) | 885 | 152 |
アプリリア | RX125 | 905 | 134 |
ファンティック | XEF250トレール | 915 | 122(乾燥) |
※赤字は今回紹介の車両。
※CRF250、CRF250ラリーはローダウン仕様のSTDとシート高の高い(s)の2タイプを用意。
カワサキ・KLX230S
日本人の体格や好みに歩み寄り!
北米や東南アジアなどでも販売され、日本では2019年10月に新登場したオフロードモデルがKLX230。最高出力19馬力のシンプルな232cc空冷単気筒エンジンを、スチール製フレームに搭載したモデルですが、初代KLX230はストロークが長い本格派の前後サスによりシート高が885mmと高く、この点だけは初心者向きという要素から外れていました。
しかしカワサキは、2022年型で日本向けをKLX230Sに刷新。こちらは、フロントサスのホイールトラベルを220→158mm、リヤサスを223→168mmとして、シート高を830mm(セロー250やCRF250Lと同等)まで下げています。スタンダード仕様は廃止されたので、長い足が欲しかった人には残念ですが、日本人の体格には合う改良と言えるでしょう。
ホンダ・CRF250L
ローシート仕様をスタンダード扱い
現在のホンダを代表する公道用オフスポーツとして展開されているのがCRF250L。排気量249ccの水冷単気筒エンジンをスチール製フレームに搭載し、倒立フロントフォークやアルミ鋳造製スイングアームなどで運動性を高めてあります。こちらをベースにアドベンチャー性能を高めたCRF250ラリーもありますが、車重は12kgアップとなるため、より初心者のトコトコ林道遊びに向くモデルとしてスタンダードタイプのLを選びました。
このシリーズは、いわゆるローダウンタイプが標準仕様となっていて、こちらのシート高は830mm。すでに生産が終了されたセロー250と同等です。一方で、より本格的な走りを求めるユーザーのために、シート高880mmのCRF250L(s)を併売している点も特徴。自分の体格やレベル、走る場所によって足まわりの仕様を選べます!
ホンダ・CT125 ハンターカブ
軽さとクラッチ操作レスが気軽さを生む
最後は少し目線を変えて、原付二種クラスの自動遠心クラッチ付きモデルから、2020年6月の新発売からこれまで大人気が続くホンダのCT125・ハンターカブをピックアップ。こちらは純粋なオフロードモデルというわけではありませんが、オフロード走行を含むアウトドアレジャーにもマッチするモデルとして開発され、メーカーのカタログなどでもフラットなオフロードでの走行シーンなどが掲載されています。
シート高は800mmと低め。一般的なオフロードモデルと比べてシートの幅があるため、数値から想像するよりも足着き性は悪いのですが、車重が120kgと軽いので不安感は少なめです。自動遠心クラッチ付きで、発進停止やシフトチェンジ時にクラッチ操作がいらないため、滑りやすいダートでもスロットルとブレーキの操作に集中できるというメリットもあるかもしれません。いかにもオフ車というスタイルとは異なるルックスも魅力です。
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