ネオクラシックモデルの筆頭として2016年からヤマハが打ち出す「XSR」シリーズ。そのレトロさとスポーティさが融合した独特のスタイルに魅了されたライダーも多いが、国内ではXSR700、900の大型クラスしか正規販売がされていない。悔し涙を流した普通免許、小型免許のライダーも多いことだろう。

しかし、海外では2021年からライトクラスの「XSR125」が発売されている。日本では原付二種にあたる125ccながら、スタイリングは大型XSRシリーズそのままという、まさに普通免許ライダーにとって垂涎のモデルだ。
そしてこのXSR125、2023年には国内発売と予想されるのだ!

ネオクラシックの125という選択肢

高い経済性とあなどれない機動力で人気の125ccクラスだが、ヤマハは2022年現在、スクータータイプ以外の125ccモデルを国内発売していない。しかしミッション付きモデルの需要が大きいことは、ホンダ「ハンターカブ」の大人気ぶりをみれば明らか。
ホンダはカブに続き「DAX125」も発売を開始し、着実にこのクラスの市場をつかもうとしている。もちろんホンダ以外のメーカーも黙ってはおらず、スズキはフルカウルスポーツの「GSX-R125」をラインナップ。そんな中、ヤマハがこの市場に食い込まないはずがない!

そこでヤマハが投入すると予想したいのは、欧州モデルの「XSR125」だ。XSRシリーズのスタイルをそのままの完成度は非常に高く、小排気量モデルにありがちなチープさはまったくない魅力的なモデルであり、純然たる「ネオクラシック」として国内125ccクラスに殴り込むにはふさわしい存在感を持つ。ユーザーにとって新しい選択肢となることだろう。

 

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XSR125は2021年、欧州向けに発表された。XSRシリーズに共通するクラシカルなスタイルに、11kW(15PS)/10,000rpmの出力を発揮する124cc水冷OHC単気筒エンジンを搭載。倒立フォークや6速ミッションを採用し、小排気量ながら操作感を楽しめるモデルとなった。写真は2022年にはグラフィックをさらにクラシックに変更し、スポークホイールを採用した「XSR125 レガシー」

 

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XSR125 Legacy Action images

ヨーロッパにおいても日本の「小型二輪免許」に該当する「A1」免許区分があり、このため125ccモデルへの需要は高い。日本では通勤・通学で利用するライダーも多い125ccモデルだが、欧州でもその立ち位置は似ているのだ。XSR125の発売時キャッチコピーは「モダン・コミューター」、毎日の通勤をスタイリッシュに、スポーティに楽しもうというコンセプトだ。

 

排気量以上のクオリティに所有感抜群!

まず目を惹くのは、XSRシリーズの上位モデルを踏襲するデザイン。直線基調のタンクやショートシート、ショートサイレンサーといったパーツで、スタイリッシュな独特のシルエットを再現している。しかし注目するべきはその細部の作りこみのクオリティだ。シートはタックロール風のステッチラインが刻まれ、125ccとは思えないツインスパーフレームも非常にレーシー。前後ブレーキにはABSが標準装備され、円形の液晶メーターはブラックアウトされたネガLCDディスプレイに、タコメーターと燃料計、インジケーターをシンプルにまとめている。さらにヘッドライト・テールライトはLEDで、フロントフォークは倒立。手抜きのない高級感に満ちている。

 

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単なるレトロデザインに終わらない、マスバランスのまとまったシンプルなデザインは非常にXSRシリーズらしい。カラーリングは欧州では単色を基調としたビビッドなものだったが、「レガシー」モデルではヘリテージなヤマハのモデルをイメージしたグラフィックが追加された。

 

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シートはタックロール風のステッチ入り。この点は上位XSRシリーズとは異なるが、クラシックな雰囲気はスタイルを壊さない。やや薄めに見えるが、実際の座り心地が気になるところだ。

 

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フレームはレプリカモデルのようなツインスパーのデルタボックスフレームだ。材質はスチール製。スタイルもさることながら、クラス以上の剛性を発揮してくれるのだろうか!?

 

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メーターは黒い背景のネガタイプ液晶だ。タコメーター、燃料計、各種インジケーターランプがすべてまとめられており、スッキリした雰囲気を壊さないデザイン。丸い小型のヘッドライトにもよく似合う。

 

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ヘッドライト・テールライトはともにLEDを採用。このためチープさは一切感じられない。惜しいのはウィンカーのみ一般的なバルブを採用している点だが、カスタムの余地があると考えてもいい。

 

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倒立フロントフォークを採用。近年のハイレベルなスポーツマシンでは一般的な装備となったが、125ccのコミューターであっても手を抜かないというコンセプトを感じる。

 

エンジンはシンプルな水冷4サイクルSOHC124ccのもので、出力は11kW(15PS)/10,000rpmを発揮。この出力は欧州での「小型二種免許」に相当する「A1」免許で運転できる上限だ。そのコンポーネントはXSR125と同じく海外向けに販売されている「YZF-R125」「MT-125」と同一。「VVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)」を採用した上から下までパワフルなもので、加速から巡行まで幅広い回転数での安定した出力を実現している。また、海外モデルが国内で販売されるにあたって、気になるのは各国独自の「排出ガス規制」による障壁だが、XSR125は「EURO-5」基準をクリアしており、これは国内最新基準の「令和2年排出ガス規制」とほぼ同等だ。つまり国内への輸入・販売に関して特に問題はなく、日本での発売は非常に現実的といえる。

 

XSR125 Legacy Detail images

水冷4サイクルSOHC124ccのエンジン。出力は11kW(15PS)/10,000rpm、これは現行スポーツモデルのスズキ「GSX-R125」と同等であり、パワー的問題はないだろう。また採用されている「VVA」により、様々な回転域での最適なバルブタイミングをコントロール。これはバルブの開放を決定するカムを、回転数に応じて最適なものに切り替える機構だ。

 

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サイレンサーはショートスタイル。EUヤマハの公開する走行動画では、静かながら歯切れのよいエキゾーストを披露している。

 

来るか!? ヤマハの125を選べる時代!

こんな魅力的なスペックとクオリティを持つXSR125だが、国内発売を考えると、その対抗馬として考えられるのが同じく海外向けに販売中の「YZF-R125」と「MT-125」だ。
どちらも国内のYZFシリーズ、MTシリーズの末弟にあたるモデルながら、小型二輪免許で運転できるガチンコのフルカウルスポーツ、そしてストリートファイターというカテゴリーも、ネオクラシックと同じく現在の125ccクラスには存在しないもの。エンジンの基本コンポーネントはXSR125と同じであるため、当然排出ガス規制もクリア。国内販売にあたるハードルはなにもないのだ。

どれが来ても国内ユーザーにとってはうれしい限りだが、あるいは同時に登場する可能性もゼロではない。そうなれば現在の「ヤマハの125マニュアルミッションがゼロ」という状況から、一気に魅力的なモデルを選び放題となる。2023年のヤマハの動向には要注目だ!

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YZF-R125は2008年に発売されたが、国内販売はいまだ実現していないモデル。アルミスイングアームやブレンボキャリパーを装備し、フルスペックのスポーツマシンとして話題となった。現在の国内市場ではフルカウルのスポーツマシンはスズキ「GSX-R125」しか存在しないが、国内販売が叶えば強力なライバルとなるだろう!

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