こんにちは! 今週の「WebikePlusスタッフが勧める意外とイイよ」のコーナーです。

安くてカッコいいバイクを買ったので、意気揚揚と仲間に見せたら「ああ……コレ買ったのか……」なんて言われ、その言葉どういう意味!? と思いつつネットで調べたら「壊れやすい」だの「不人気」だのひどい言われよう。

(人気ないってマジかよ……だから安かったのかっ!?バイク屋はいいバイクって言ったのに……)

そんな経験ありませんか? だからってさっさと買い替えるのはちょっと待った。キラキラした大人気車ではなくても、どんなバイクも個性の塊。メーカーが「これは売れるぞ!」と意気込んで開発したバイクたちは、それぞれ独特の魅力を持っているもの。

そこで、人気はどうあれイイものはイイぞ! とゴリ押ししていくのがこのコーナー。人気モデルに乗ってりゃエライ時代は過去のもの、現代こそマイナーバイクを全力でお勧めしたい! と「マイナーバイク好き(自称)」のWebike+スタッフ・西田が独断でピックアップしたモデルを紹介していきます!

前回記事はコチラ!

SRのような「伝統のスタイル」を新設計せよ!

今回紹介するモデルは、1988年にヤマハから発売された「XV250(S) ビラーゴ250」。国内では1996年モデルまでが販売され、海外ではさらに2007年まで生産が続いたご長寿モデル。既に国内販売が終了してから30年近く経ってしまいましたが、当時は人気モデルとして、見かける機会もたくさんありました。

人気のポイントは何といってもそのスタイル。250ccらしく細身で小さいモデルなのですが、高級感と存在感は抜群。小さいティアドロップタンクに対してフロント18インチのタイヤサイズは大き目で、最近のボバースタイルにも通じるシルエットを持っています。それでいて各所に贅沢に使われたクロームメッキパーツからは、クラシックなクルーザーの雰囲気たっぷり。

クルーザーの特徴といえば、「低くて長い車体」。それはいうなれば、「いかつい、ごつい雰囲気」でもあり、「大きくて悪そうな雰囲気」でもあります(それがいい! というファンももちろんいます)。しかしビラーゴ250は、スタイルこそクルーザーモデルを踏襲していながら、コンパクトで軽量、そして丸みを帯びた流線形のパーツ類から、「ごつさ」よりも「優美さ」を発揮したモデルでした。発売時のヤマハの資料を見てみると、そのキャッチフレーズは「伝統の誕生を目撃している」という気合十分のもので、ヤマハはオーソドックスなクルーザーを作りたかったのではなく、SR400のようなオーセンティックな「新しい伝統」を目指していたようです。

その性能はデザインの優秀さにはとどまらず、実際の使い勝手も非常によいものでした。シンプルな空冷Vツインのエンジンはロングストロークでトルクが厚く、シート高685mmで小柄なライダーにも足つきに不安なし。スポーティなフラットタイプと、どかっと座れるプルバックタイプの2種類のハンドル形状がラインナップされ、キビキビと走りたいライダーにも、のんびりクルージングを楽しみたいライダーにも、好みに合わせて選べるスタイルとなっています。

また車重も137kg(乾燥)と非常に軽く、取り回しも簡単で押し歩きも楽ちん。街中でも安心して乗りこなすことができ、足を前方に投げ出せるフォワードコントロールスタイルのステップは姿勢も気楽。分厚いシートは座り心地も優しく、どれだけ長時間乗っていてもお尻が痛くなることはない……これらのユーザーフレンドリーな特徴のうえ、スタイルはスマートで愛らしい。ビラーゴ250はそんな初心者や女性にも愛されるモデルだったのです。

 

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1988年に発売されたビラーゴ250は、当時の250ccクラスでは初めての本格的なクルーザースタイルを実現したモデルだった。発売当初は当時のレプリカブームもあり大きな注目はされなかったが、ネイキッドやクラシックモデルが評価されるようになると、扱いやすい車格やシンプルで素直なエンジン特性、美しいスタイルが多くのライダーに愛され、1996年まで販売が続いた。

 

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当時ヤマハは「次世代のクルーザーの創造」として「XV750」「XV400」というビラーゴシリーズを各排気量に展開。それまでの国産クルーザーが、ネイキッドモデルをベースとしたやや中途半端なスタイルの「ジャメリカン」などと呼ばれていた中、長いホイールベースや低いキャスター角、空冷Vツインエンジンの採用によって本格的なスタイルを追求していた。のちに「XV1100」「XV125」と、さらに多くのライダーを視野に入れた排気量のモデルも発売。

 

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旧来、ステップやハンドル位置への厳しい規制により、自由なスタイルの追求は難しかった。80年代前半に規制が緩和されたことで、ビラーゴシリーズのようなクルーザースタイルも生産が可能となったのである。ビラーゴ250の発売と同年には、ホンダから「スティード400」も発売され、「アメリカン」ブームとも言える国産クルーザー人気の時代を形成した。

 

新設計のヤマハ初/250cc空冷Vツインは独自の乗り味を追求

80年代以前、国産クルーザーはスポーツモデルの派生ラインナップのようなものでした。エンジンはスポーツモデルの高出力な並列2気筒、4気筒のものを採用し、フレームやホイールはベースモデルそのままに、アップハンドルなどの装備で「クルーザー」的デザインを求めた、いわゆるジャパニーズアメリカン……「ジャメリカン」が主流だったのです。

ところがビラーゴ250では、新設計の空冷OHC Vツインエンジンを新規採用。ボア49mm・ストローク66mmのロングストロークで、低中速でのトルクを強化しつつ、トコトコとした振動を出しつつ23PS/8000rpmの出力を発揮しました。このスペックはけして「スゴイ」高性能というわけではないのですが、軽量な車体も相まって走行性能は必要十分なもの。80km程度までは余裕のあるトルクを感じながら加速することもでき、ワインディングでも軽快に立ち上がります。このエンジンはシンプルかつ空冷フィンも美しく、ヘッドカバーやクラッチカバーといった部分には厚いメッキが施されています。

ヤマハはビラーゴ250以外にも、このエンジンをベースとしたエンジンの採用を続けました。のちに発売されたクラシックスポーツスタイルの「SRV250」、カフェレーサースタイルの「ルネッサ」、そしてビラーゴ250の後継機となったクルーザー「ドラッグスター250」です。特にドラッグスター250は250ccクルーザーの中でも大きな人気車種となり、2000年から2016年までの16年間販売が続けられました。1988年のビラーゴ250のデビューから数えると、30年近くもの間、多くのライダーに愛された名作エンジンといえますね。

 

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ビラーゴ250はヤマハ初の250ccVツインエンジン搭載モデルだった。新設計のこのエンジンは挟角60度、ボア×ストロークは49mm×66mmとかなりのロングストローク。137kgの軽量の車体もあいまって、走り出しは非常に軽やか。

 

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ヘッドカバー、クラッチカバー、ジェネレータカバーなどの随所に施されたメッキは重厚で高級感が高い。写真のモデルは1996年式で、既に販売から26年が経過しているにもかかわらず輝きは強烈だ。

 

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エアクリーナーはタンク右側のカバー裏を吸気口とし、タンク下を通る構造。左側にもカバーがあるが、こちらはダミーとなる。キャブレターは2シリンダーに対してシングルとなっている。加速ポンプ、フューエルポンプを採用しており、レスポンスが悪くならないよう対策されている。

 

また、迫力のあるスタイルを実現するために、クロムメッキがなされたエキゾーストパイプとサイレンサーを2本出しで設置。ところが内部構造を見ると、なんとリア側のエキゾーストパイプはダミーとなっており、排気がありません。
実際のエキゾーストパイプはシート下、メインキーの裏を通って集合し、サイレンサーでさらに分岐しています。この構造は「見かけだけのエキゾーストか……」と残念がられることもあるのですが、実際には排気ガスに干渉効果を発生させ、排気効率を向上させる効果があるのです。

 

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ストレートのサイレンサー、エキゾーストパイプににもメッキが施されている。サイズも大型で存在感は抜群だ。

 

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分解構造を確認すると、後方シリンダーのエキゾーストパイプ(に見えるもの)はダミーで、実際のエキゾーストパイプはシート下をくぐり、下側サイレンサーに集合している。では上側サイレンサーもダミーなのか? と思いきや、さらに分岐して上側サイレンサーからもしっかりと排気は行われている。この複雑な構造により排気効率の向上がはかられているのだ。

 

パワーユニット以外のパーツには、余計なスイッチや機能はほとんどなく、シンプルこの上ない構造をしています。メーターもクルーザーらしく、スピードメーターのみの設置でタコメーターはありません。このため、走行中の視界はクリアそのもの。コントロールで複雑なことを考える必要がないので、初心者であってもまごつかずに操作ができます。ブレーキはフロントがシングルディスク、リアはドラムブレーキを採用。制動力は十分なうえ、構造が簡単なのでメンテナンスも非常に楽。

このように、操作もメンテナンスも気軽にできることも、バイクに乗るハードルを大きく下げるのですが、ビラーゴ250の最大の魅力はその快適性にあります。分厚いシートは非常にやわらかく沈み込み、何時間乗っても苦痛になりません。フォワードコントロールによって足元も窮屈にならず、さらにプルバックハンドルによって肩や腕も自然な姿勢に。この快適さによってロングツーリングでも不快さはまったくありません。ビラーゴ250はクルーザーとしてのデザインの美しさを持ちつつ、実用性も非常に高いモデルなのでした。

 

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コクピットはスピードメーター、インジケーターランプのみの最低限。クルーザーにはタコメーターがないものが多い。これはスポーツ走行時のように、意識して常に回転数を知る必要がないためだ。派手な演出やライトが欲しいライダーもいるだろうが、クルージングに集中できるという意味ではシンプルなこともメリットになる。

 

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ヘッドライトは小ぶりで、ロー&ロングなスタイルの構築に一役買っている。写真で取り付けられているスクリーンはアフターパーツ。

 

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フロントブレーキは片押し2ポットのシングルディスク。近年のスポーツモデルでは250ccでもダブルディスク採用のモデルが多いが、車格も小ぶりで速度域も低いビラーゴ250では必要十分。リアのドラムブレーキも同様だ。また、どちらも構造が簡単で日頃のメンテナンスやパーツ交換が容易というメリットも。

 

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フォワードコントロールのステップはクランクケース前方。エンジンからの振動を緩和するため、ステップ付け根にはゴムダンパーが採用されている。

 

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ビラーゴ250では、スポーティで低い姿勢となるフラットタイプのハンドルと、腕を上げてどっしり運転できるプルバックタイプの2種類のハンドルを選択することができた。写真のモデルはプルバックタイプで、グリップエンドがほとんど下を向くほどきつめの絞りが加えられているが、乗車時の握り心地はとても快適。自然な肩や腕の位置で運転ができる。

 

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小ぶりな燃料タンクは容量9.5リットルで、見た目通りに少な目だ。とはいえ、トルクフルなエンジン特性により高回転域をさほど常用する必要がないため、燃費はよく航続距離に問題は出ない。

 

つまり意外といいぞ「ビラーゴ250」

中型クルーザーモデルの市場が盛り上がっていた2005年ごろには、国内各メーカーから様々なキャラクターの250ccクルーザーがラインアップされていました。しかし2022年の現在、クルーザースタイルのモデルはホンダ「レブル250」のみとなっており、新車の選択肢はまったくありません。しかし、レブル250は2017年の発売以来250ccクラスでの人気を一身に集め、2021年には累計4万台が出荷されるなど、バイク史に残る名機となっています。これにはもちろんレブル250自体の大きな魅力も理由になっているのでしょうが、初心者や女性にも気軽に乗りこなせる250ccクルーザーというカテゴリーそのものに、まだまだ大きな需要があるからではないでしょうか。

その意味では、既に絶版となって久しいビラーゴ250にも十分な魅力があります。ひとつの大きなネガティブ要素として、「絶版車はパーツや状態に問題が出るのではないか」という点がありますが、少なくともビラーゴ250に関しては、先に述べた通り構造もシンプルで、スポーツ走行や過剰な高回転を強いられるモデルでもなく、よい状態の車体が残っているほうではないかな、と個人的に思っています。
またパーツ供給についても、しばらくの間は心配ないといえます。というのはビラーゴ250、国内での販売が終わった後も、海外ではずっと生産が続けられており、「ビラーゴ250」としての生産が終了した2008年以降にも、「V STAR」と名前を変えて北米では生産が続いているのです! もちろん細かな仕様の違いや、外装パーツについては入手が困難な部分はあるでしょうが、ぐっと不安は減るのではないでしょうか。

 

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2022年現在も、北米向けモデルとしてビラーゴ250の後継機「V STAR」は生産・販売が続いている。これは北米の排ガス規制基準の差もあるが、シンプルで信頼度の高い設計が現在でも需要が高いためだろう。

 

つまりビラーゴ250は、

・とにかく使いやすく、初心者や女性にも不安がない機能性!

 

・ヤマハ初の新設計、長く使われた信頼性の高いエンジン

 

・クルーザーだけどかわいい「新しい伝統」を目指したデザインの美しさ!

 

・今なお生産が続き、絶版車なのにアメリカには新車がいるぞ!

というバイクなのでした。ここまでベタ褒めすると、「意外というか……普通にいいぞ」ということになってしまうのですが、あえて今回ビラーゴ250を紹介したのは、どういうわけかビラーゴ250、中古相場がかなり安く、購入ハードルが低めだから。
これは、ビラーゴ250が魅力の通りかなりの人気車種だったため、それなりにまだ中古車があるということと、古いバイクなので状態やパーツ供給にネガティブな要素があるかも、という先にお話ししたデメリットがあるためですが、少しでもよい状態の車体を手に入れるために、信頼できるバイクショップに相談してみるのもよいでしょう。

250ccクルーザーが欲しい! でもレブル250とは違うのがいい! と思ったライダーにとって、こんなモデルもあるんだ……と思っていただければ幸いかな、と思います。

ビラーゴ250諸元(1988)

全長 (mm) 2215
全幅 (mm) 780
全高 (mm) 1140
シート高 (mm) 695
重量 (kg) 137
エンジン種類 空冷4ストロークOHC Vツイン
総排気量 (cm3) 248
最高出力 (PS/rpm) 23/8,000
最大トルク (k-gm/rpm) 2.2/6,000
燃料タンク容量 (L) 9.5
変速機形式 5速/リターン式
タイヤ 3.00-18 47P
130/90-15
ブレーキ 油圧式シングルディスク
機械式リーディングトレーディング
写真
カタログ:ヤマハ発動機
※コメントご指摘の通り、文中に一部過りがありましたので修正いたしました(2022/09/27)
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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    「ドラッグスター250」は、最終モデルまで「キャブレター仕様」ですよ。

    【参考】
    https://www.bikebros.co.jp/catalog/2/141_2/

  2. KAZUO より:

    オーストラリアでは、未だにXV250 Viragoの名前で販売されてますよ!
    https://www.yamaha-motor.com.au/products/motorcycle/road/sport-heritage/xv250

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