
バイクカテゴリーのうち「アドベンチャー」は、ダートを含むあらゆる道を走破しながら、文字どおり世界を“冒険”できるようなモデル……というのがそのルーツ。でも実際には、ほとんどのユーザーがオンロードのみを走りながら、快適なライディングポジションで荷物積載性などに優れる“ツアラー”として使用しています。それなら……ということで、敢えてオンロードツーリング重視の現行アドベンチャーを挙げてみます!
目次
アップライトなポジションでゆったり乗れるのも特徴!
1980年に登場したBMWのR80G/Sがそのパイオニア的な存在とされ、2000年代に入ってからライバル各社の開発競争が激化して、世界的に人気のバイクカテゴリーとなったのがアドベンチャー。そもそもは、ダートを含むあらゆる道を走破しながら、冒険的なツーリングを楽しめるモデルというのが、このカテゴリーのコンセプトです。でも、超本格的な冒険ツーリングをするライダーというのは世界的にも少数派だし、島国かつ道路事情がいい日本ではダートを走る機会さえもごくわずか。大多数のアドベンチャーライダーが、“タイヤに土をつけることなく”楽しんでいます。
そもそも、欧州や日本でアドベンチャーカテゴリーが人気となったのは、2000年代にスーパースポーツが大人気となった後、ライダーが高齢化してきて前傾姿勢がツラくなってきたから……なんて話も。アップライトなライディングポジションを基本とするアドベンチャーは、アクティブな冒険派ばかりでなく、お腹に肉がつき腰痛に悩むような中高年ライダーにも愛されてきたわけです。
オンロード系は「アドベンチャー」と呼ばないメーカーも!
現在、アドベンチャーカテゴリーにはさまざまなバイクがラインアップされていますが、「ダートを走らないなら、アドベンチャーの姿形をしているけどオンロードに特化したような車種を選んだほうが、むしろ快適に楽しめるかも!?」ということで、そのようなバイクを探してみました。なにせ人気のカテゴリーですから、世界中にある現行型アドベンチャーは超多数。そこからわずか4台をピックアップというのはちょっと難しすぎるので、今回は国内メーカー製の国内仕様で、なおかつ排気量400cc超の大型二輪クラスに絞って考えました。
ちなみにメーカーによっては、オンロードのほうが得意だけどアドベンチャーと同じようなスタイリングを持つバイク(クルマのSUVに近い車種)を、アドベンチャーとは別にカテゴライズしていることがあります。例えばホンダは「クロスオーバー」、ヤマハは「スポーツツーリング」と位置づけてありますが、今回はそれらのバイクも比較対象に含めました。
そのうえで、当記事で重視したのは前後ホイール径。現在、アドベンチャーカテゴリーに属するバイクはほぼすべて、フロントタイヤが21インチ径、19インチ径、17インチ径のいずれかで、リヤタイヤは18インチ径または17インチ径が選択されています。このうち、今回ピックアップしたのは前後とも17インチ径のモデルたち。これは、一般的なオンロードスポーツやスポーツツアラーと同様のホイール径で、走りもオンロード重視と容易に想像できます。ちなみに、優れたオフロード走破性をテーマとしたアドベンチャーモデルは、その多くがフロント21インチ、リヤ18インチのホイールを組み合わせています。
①カワサキ・ヴェルシス1000SE
そもそも並列4気筒エンジンは異色!
一般的に、オフロードバイクは車体の軽さが大事。だからモトクロスやエンデューロなどの競技用バイクは、現在でもほぼすべての車種が小型軽量な単気筒エンジンを搭載しています。カワサキのヴェルシス1000SEはZ1000用をベースとする1043cc水冷並列4気筒エンジンを搭載。現在はドゥカティ・ムルティストラーダV4シリーズもありますが、ヴェルシスが誕生した段階でアドベンチャーに4気筒というのはかなりの異例でした。
SE仕様のヴェルシス1000は、ショーワのスカイフックテクノロジーを採用した電子制御サスを搭載し、路面やライディングの状況に合わせて瞬時に減衰力が最適化される機能を持ちますが、タイヤはフロントが120/70ZR17でリヤが180/55ZR17と完全にオンロードスポーツ系。さらに車重は257kgもあり、これをダートで走らせるのはあまり現実的ではありません。逆に、前述の電子制御サスや優れた積載性、IMU(慣性計測装置)を活用した数々の電子制御システム、そしてアップライトなライポジが、オンロードで余裕のある旅性能をもたらしてくれます。
②ヤマハ・トレーサー9 GT
MT-09をスポーツツアラー化
プラットフォームベース車としての役割も担っているスポーツネイキッドのMT-09を、アドベンチャースタイルのツアラーに仕上げたのがトレーサー。現行モデルは、MT-09の刷新を受けて2021年型で登場し、このときに車名が「トレーサー9」となりました。日本では、上級版となるGT仕様のみラインアップされています。
トレーサー9は、トルクフルな水冷並列3気筒の888ccエンジンを、アルミ製のフレームに搭載。GT仕様は、KYB社と共同開発された電子制御サスを搭載しています。前後ホイール径は17インチで、タイヤサイズはMT-09と同じ。車重は220kgでこのクラスとしてはまずまず軽めですが、フラットダートを短距離通過するなどのシチュエーションを除けば、未舗装路を走ることは考えずに設計されています。
③ホンダ・VFR800X
フルカウルスポーツツアラーが開発ベース
ホンダのVFR800Xは、アドベンチャーではなくクロスオーバーにカテゴライズ。このモデルは、フルカウルスポーツモデルのVFR800Xをベースに開発された経緯があり、回転数に応じて2バルブまたは4バルブに切り替わるハイパーVTEC機構を備えた781cc水冷V型4気筒エンジンに加えて、アルミ製フレームまでもVFR800F用をベースとしています。
加えて、前後ホイール径は17インチで、タイヤサイズもVFR800Fと同じ。前後サスのストロークは伸長され、ハンドルもセパレートタイプではなくバーハンドル化されていますが、その走りがオンロード寄りであることは明らかです。
④ホンダ・NC750X/NC750X DCT
ライディングモードにもダート系はナシ
シリーズのルーツとなるNC700Xは、オンロードモデルやスクータータイプとエンジンおよび車体の多くを共通化する手法により誕生。その後、750に発展して独自の進化も遂げています。ただし、CBR400Rなどと基本部を共通化する400Xが2019年型で前輪を17インチから19インチに大径化したのに対して、NC750Xは現在も前後17インチホイールを履き続けています。
このモデルには、クラッチ操作なしで発進停止と自動または手動の有段変速ができるDCT仕様も設定。MT仕様とDCT仕様ともにライディングモードも選べますが、スポーツ/スタンダード/レイン/ユーザーのみの設定で、オフロード対応モードはありません。同型エンジンを使うスクータースタイルでDCT仕様のX-ADVにはグラベルモードがあることからも、NC750Xが未舗装路の走行を意識せず、オンロードに特化していることがわかります。ちなみにNC750Xシリーズは、23L容量のラゲッジスペースを装備。ツーリング時の利便性にも優れます。
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自分もNC750xはアドベンチャーだと思ってましたが、ホンダ公認でクロスバイク(デュアルパーパス)だそうです。
スズキVストローム1050XTがなかったのが意外です!