
GPZ900Rの先に進むべく選び、さらに磨きをかけたGPZ1100
長らくGPZ900Rで戦ってきたパワービルダー鉄輪の清田宗雅選手。そのGPZ900Rのフレームとエンジンを変更し、それ以外の足まわりはリメイクして作り上げたのが、今回紹介するGPZ1100だ。
清田選手は長らくGPZ900Rエンジン・フレームであるマシンで戦うことにこだわっていた。しかし、GPZ900Rで筑波サーキットを1周59秒台に突入するようになると、顕著にフレームがネックになってきた。GPZ900Rフレームは長年過酷な環境で使い続けるとヘッド周辺の剛性不足からヘッドマウント部にクラックが入るのだとか。それも清田選手だけではなく、パワービルダーに所属する他選手のGPZ900Rも同タイムに接近すると同種の問題が発生。補強を加えても同じで、おそらくフレーム構造としての剛性が足りないと推測されている。
それにFゼロクラスにもオーバーリッタークラスが増え、そのライバルたちに対抗するにはオーバーリッタークラスのエンジンを用いたいところだった。ところがFゼロクラスはエンジンの懸架方式を変更できないというレギュレーション。そこで以前紹介したような、かなりの荒業を用いて懸架方式を維持していたものの、先にも触れたようなフレームの問題もあり、フレームとエンジンの交換を決意。そこで選ばれたのがGPZ900Rと同じエンジン系列だったGPZ1100だったのだ。
とはいえGPZ1100はスポーツ向けモデルではなく、ツーリングモデルとして定評を博してきたモデル。そもそも直線を巡航するには向いているが、サーキットでタイムを競うようなキャラクターではない。そこでGPZ1100フレームの採用にあたっては車体姿勢から筑波サーキットに適した内容とすべく、パワービルダーを代表する#29 GPZ900Rレーサーのフレームデータも活用しながら車体姿勢を再構築。キャスターを立てて旋回性を高めつつ、ピボット位置も変更し直して適正なリンク比を獲得するなど、大々的な改修が加わった。
パワービルダー得意のエンジンチューニングはというと、ZRX1200RエンジンをベースにJEピストンとヨシムラ製カムシャフトを導入。内部パーツの重量バランスや精密組み立てなどを行なうことで、現状では冬季に185㎰を記録している。
足まわりはというと、フロントはオーリンズ製倒立フロントフォークとショーワ製リヤショックという組み合わせ。リヤのチョイスは清田選手の好みが大きいとのことだ。またホイールはJBパワー・マグ鍛JB4とし、旋回性アップにつなげている。
なお、セッティングの幅を広げることと、キャスターを立てたことでトレール量を適正化させることを目的に、現在はIMA製ブラケットを採用しているのは清田選手によるチョイス。またセパレートハンドルは同社他レーサーなどとは異なりロビーモト製だったりと、清田選手の意向が色濃く反映させている点も個性的だ。
撮影時は2021年に入った段階なので、細かい部分には差異があるものの、ほぼ現状の状態で2019年テイスト・オブ・ツクバのFゼロクラスに参戦し、春秋を連覇。そして2020年からはハーキュリーズクラスにクラスチェンジし、現在の仕様まで各部の改良や変更などが加わっている。
このマシンは5月8日(土)・9日(日)の両日に開催が予定されている2021年テイスト・オブ・ツクバのハーキュリーズクラスにもエントリーしており、同社#29 GPZ900Rとも熾烈なバトルを繰り広げるだろう。当日券の発売は行なわれないので、注目の一戦はぜひ前売り券を購入して皆さん自身の目で目撃しよう!
カスタムポイント
ベースエンジンはZRX1200Rで、社外製のチューニングパーツとしてはJEピストンとヨシムラ製カムシャフトを用いたほかは、基本に忠実なチューニングメニューと精密組み立てを行ない、実に185㎰を発揮させるに至っている。耐久性を犠牲にすることなく高い信頼性を保持したままパワーアップを達成する。チューニングとは無理を強いる行為ではなく、よりよい燃焼効率を導く手法とはパワービルダー・針替伸明氏がつねづね語ることだが、それを忠実に実行したエンジンだ。
カスタムパーツギャラリー

ハンドルバーはパワービルダーからの参戦車だと他車純正流用が主流だが、このGPZ1100はロビーモトを選択。ブレーキマスターはブレンボ製ラジアルタイプだ。レバーは最適なタッチを求めて形状を加工。清田選手のこだわりが垣間見られるポイントだ

ブラケットは可変オフセットタイプのIMA製。当初はGSX-R1000だったが、キャスター変更に伴い適正なオフセットを求めるため、こちらを選んだとのこと。フロントフォークはオーリンズ倒立タイプで内部はアップグレートキットに交換し、ハイレベルなブレーキングにも対応

ツーリングユーザーのようにスマホがメーター下に設置されていたが、これはデータロガーの表示用にアンドロイド端末を流用したモノ。このように清田選手の走行データはすべて記録され、過去データと比較も可能。なお現在は後ろに見えるスタック製タコやPラップは撤去され、アンドロイド端末のみがメーター部に鎮座。タコも走行中に端末で表示できるようにしている

外装類はGPZ900Rそのものだが、シートカウルからガソリンタンク部分までの外装はパワービルダーオリジナルのレース用タンク一体型。インナータンクもわざわざワンオフしたモノだ

キャスターを立てて旋回性を得るうえで、ピボット位置が適正ではなかったことからピボットも変更。具体的な変更値の記述は避けるが、適正なリヤショックのレバー比を得るため、同社の膨大なデータも活用された

データロガーはDargger製を用い、センサーはシートレール後端などに配置し、車体の動きをリサーチ。またシート下に配置したり、点火コイルのASウオタニSPⅡはサイドカウル内に配置するなど電装類の取りまわしは利便性を考慮して変更

ブレンボ製ラジアル4ポットキャリパーにサンスター製φ320㎜ワークスエキスパンドローター、JBパワー・マグ鍛JB4と一級品が投入された足まわり。こういったパーツを駆使することでハイレベルな走行に耐えられる足まわりを構築しているのだ

リヤショックは清田選手の好みに合わせてショーワ製をチョイス。筑波サーキットを1周1分以内で走り切れるだけの高い信頼性を与えている

エキゾーストシステムはノジマエンジニアリンク製でパワービルダー特注品だ。特徴的なスパイラルコレクターにより加減速や回転の伸びなどなど、あらゆる面で効果的だと同社が高く信頼する一品となる。なお同仕様が欲しい人はパワービルダーまで相談を

スイングアームはキャスター角やピボット位置を変更した際の車体姿勢が適正になると判断し、かつ軽量だったZZR1200純正を流用。ところが剛性が足りず、スタビライザーを追加補強して対処。現在の仕様になったことで185㎰でも問題なくパワーを路面へ確実に伝達する
「GPZ1100 by パワービルダー」の主なカスタム内容
エンジン総排気量 | 1164cm3 |
---|---|
ピストン | JEφ79mm |
カムシャフト | ヨシムラ ST-1 |
キャブレター | ミクニTMRφ40mm |
エキゾーストシステム | ノジマエンジニアリング |
オイルクーラー | ZZR1100 |
ラジエター | CBR1000RR |
ホイール | (F)JBパワー マグ鍛 JB4 3.50-17 (R)JBパワー マグ鍛 JB4 6.00-17 |
タイヤ | (F)ピレリ ディアブロスーパーコルサV3 120/70-17 (R)ピレリ ディアブロスーパーコルサV3 200/55-17 |
Fブレーキ | キャリパー:ブレンボ4ポット ローター:サンスター マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |
Rブレーキ | キャリパー:ブレンボ2ポット ローター:サンスター マスター:GPZ1000RX |
Fフォーク | オーリンズ スプリング:アップグレートキット |
ブラケット | IMA |
Rショック | ショーワ |
スイングアーム | ZZR1200+補強 |
ハンドル | ロビーモト |
ステップ | テクニカルワークス |
シート | パワービルダー |
クラッチ | マスター:ゲイルスピード ラジアルポンプ |
ペイント | BPナカヤマ |
チェーン | レジーナ |
スプケロット | サンスター |
情報提供元 [ カスタムピープル ]
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