
こんにちは! 今週の「WebikePlusスタッフが勧める意外とイイよ」のコーナーです。
安くてカッコいいバイクを買ったので、意気揚揚と仲間に見せたら「ああ……コレ買ったのか……」なんて言われ、その言葉どういう意味!? と思いつつネットで調べたら「壊れやすい」だの「不人気」だのひどい言われよう。

そんな経験ありませんか? だからってさっさと買い替えるのはちょっと待った。キラキラした大人気車ではなくても、どんなバイクも個性の塊。メーカーが「これは売れるぞ!」と意気込んで開発したバイクたちは、それぞれ独特の魅力を持っているもの。
そこで、人気はどうあれイイものはイイぞ! とゴリ押ししていくのがこのコーナー。人気モデルに乗ってりゃエライ時代は過去のもの、現代こそマイナーバイクを全力でお勧めしたい! と「マイナーバイク好き(自称)」のWebike+スタッフ・西田が独断でピックアップしたモデルを紹介していきます!
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目次
プロダクトワンとプロダクトツー、名前からしてやる気です
今回紹介するのは、ホンダ「ブロス」。登場は1988年。生産終了は1990年と、2年ほどでラインナップから落ちたこのモデル。お世辞にも「人気でした」とは言えませんが、どーですかこのスタイル。余計なことをなんにも考えず、先入観なく見てください。めちゃくちゃカッコよくないですか!?
レプリカのように存在感のあるアルミツインチューブフレーム、水平基調のソリッドなシルエット、パワーのありそうな水冷Vツイン、そしてスーパースポーツそのものといえる片持ちスイングアーム「プロアーム」。やる気に満ちたセパレートハンドル――と、強烈にレーシーな雰囲気の漂うこのブロス。当時の最新技術を満載しており、さぞかしハイメカで速いんだろうな! と思わせます。
ホンダも最新モデルで新しいジェネレーションを作ると意気込んだものか、そのネーミングも独特。ブロスには400ccと650ccの排気量別で2種類のラインナップがありましたが、650ccモデルを「プロダクト ワン」、400ccモデルを「プロダクト ツー」とし、一般的な「ブロス650」「ブロス400」という安直なネーミングはしませんでした(現代の中古車市場では、その安直なネーミングで呼ばれていますが……わかりづらいと言ってはそれまで)。
そんな部分も含めて、ホンダが求めたブロスへのコンセプトは、旧来のバイクが持っていた「アメリカン」とか「レプリカ」といったカテゴライズのない、まったく新しい世界観のバイクにあったのです。翌年にカワサキから発売された「ゼファー」もそういった従来のコンセプトへのアンチテーゼを持っていましたが、オールドルックを追求したスタンダードなゼファーに対し、チャレンジングな新スタイルを投入した点にブロスのオリジナリティがありました。

1988年に発売されたブロスは、最新技術を駆使した装備に扱いやすいVツインエンジンを搭載し、スペックやカテゴリーにとらわれない「バイクの楽しさとは何か?」をコンセプトに設計された。ところが1990年にブロスは1度モデルチェンジをしたのちにカタログ落ちという結末となり、ゼファーのような大人気車種にはなり切れなかった。写真はプロダクトツー(400cc)。プロダクトワン(650cc)との外見的な差異はほとんどない。
クルーザーゆずりのエンジンだがスポーツ性能は捨てず
そんなカッコいいブロスながら、人気がイマイチとなってしまった大きな原因のひとつがエンジンでしょう。プロダクトワンの出力は55.0PS/7,500rpm、プロダクトツーでは37.0PS/8,500rpmと、パワー面で同クラスのスポーツモデルには見劣り。同世代の400ccレーサーレプリカモデルは、こぞって60PS近い高出力エンジンを搭載。後発のオールドルックなゼファー400でも46PSを発揮しており、最先端に尖った見た目にレプリカ的なパワーを期待したライダーには選ばれませんでした。
しかし、このエンジンはけして「アンダーパワーなしょぼいエンジン」ではありません。ブロスに搭載されたエンジンは挟角52度のOHC3バルブVツイン、ベースはNV400カスタムというクルーザーに採用されたもので、「位相クランク」という特徴的な構造を持っています。これは挟角Vツインでは大きくなってしまうエンジンの一次振動を軽減し、バランサーも不要とする画期的なもの。同じ挟角Vツインを搭載するハーレーダビッドソンのバイクなどは、アイドリングでもブルンブルンと車体が震えていますよね? あの振動こそがイイんだ! というライダーもいるのですが、一般的には振動は少な目のほうが乗り心地がよくなるもので、高回転も無理なく行えるというメリットが大きいもの。
またVツインは、当時のスポーツモデルでは主流だった直列4気筒よりも低回転時のトルクを発揮することができ、車幅も抑えられ車重も軽量化。確かにカタログスペックではレプリカモデルにかなわないものの、取り回しの気軽さには間違いなくVツインに軍配が上がります。

挟角Vツインのエンジンはハーレーを代表するクルーザーに採用されがちだが、実は運動性能の点でもメリットの大きい構造だ。エンジンの横幅を小さくでき、重心の集中によって車体の全長をコンパクトにしたり、フロントへの荷重を高める効果も期待できる。ブロスにおいてもその利点はしっかり発揮されており、ワインディングや街乗りでの機敏性はコミュニティでのインプレッションでも高評価だ。
ゴリゴリの最新装備を兼ね備えたボディ
対してボディ回りにはレーシーな最新装備を贅沢に採用。まず目につくアルミツインチューブフレームは断面を異形化して剛性をアップ。エキゾーストには「ショットガンマフラー」と名付けられたショートサイレンサーを採用し、足回りはレプリカ・VFR750Rに採用されたプロアームを非スポーツモデルで初めて搭載(サイレンサーが邪魔でホイール交換はさほど楽ではない、らしいですが……)。タイヤは太いワイドサイズのセレクトで、1990年の最初の(最後の)モデルチェンジにて前後17インチからリア18インチに改良。ラジアルタイヤ指定となり、ハンドルはトップブリッジ上にやや突き出したセパレートハンドルで、低すぎず乗りやすい姿勢を助けました。

アルミツインチューブフレームは「ツインスパー」とも呼ばれる、剛性を稼ぎやすいレーサーレプリカやハイパフォーマンスモデルおなじみの装備。さらにブロスの場合は断面形状が「目」の形に成形されている異形フレームを採用し、剛性をさらに高めた。

ショートサイズのマフラーは、「ショットガンマフラー」と名付けられていた。エキゾーストパイプはステンレス製。「都会的で洗練されたフォルム」を目指したというこのデザイン、現代のストリートファイターにも通じるものがあり先見性を感じる!

目を引くプロアーム。市販車に採用されたのは「VFR400R」が最初だったが、さらにブロスではVFR750Rと同じセンターロックを採用している。アルミキャストによる一体成型で、ホイールの着脱やチェーン調整の整備性向上に大きな効果があるプロアームだが、レーサーレプリカ意外に導入されたのは初だった。

オーソドックスでシンプルな二眼メーター。水温系はタコメーターに内蔵しており、インジケーター類も余計な装飾はないが、質感の高いパネルは高級感を醸し出している。注目すべきはハンドルで、トップブリッジから一段高いセパレートハンドルを採用しているが、なんと素材はジュラルミンの鍛造だ。軽量さを求めるにしても、コストのかかり方が違う。
このような贅沢装備に身を固めたのも、すべては旧来の固定観念に縛られない、新しい時代のバイクを作り出すため。運動性能は不足なく、エンジンは味わい深く、装備の所有感は高いという存在を実現する。そのためにホンダの持っている技術が惜しみなく、手抜きなくブロスには投入されていたのです。
つまり意外といいぞ「BROS」
豪華装備と味わいのあるエンジン、という今までにないコンセプトで登場したブロスですが、残念ながら主流にはなれず2年ほどでカタログ落ちしてしまった……というのは冒頭に書いた通りですが、このようなスタイルのモデルはブロス以降ほとんど登場しませんでした。しかしブロスに採用された挟角52度のVツインエンジンをホンダは見捨てることなく、これをベースに1995年にはよりクラシカルな「VRX400 ロードスター」を投入しますが、これも悲劇的結末を迎えてしまったことは以前にもお伝えしましたね。
このエンジンは1988年……ブロスと共に登場しつつ、対照的な大成功を収めた「スティード」にも採用されたため、むしろブロスは「スティードのエンジンを積んだスポーツっぽいバイク」などと呼ばれる存在となってしまいました。しかし、スティードと同年に発売されたという事実こそ、ホンダが「次にくるバイク」のカテゴリーを様々な形でチャレンジしていた証左! という意味で、非常にホンダらしいチャレンジングな姿勢を感じることができるモデルなのではないでしょうか。
つまりブロスは、

・レースの最先端技術を尽くし、でも扱いやすいという矛盾への回答
・「アメリカンのエンジンを積んだスポーツ」じゃないぞ! 新時代のカテゴリーはここにある
という、「意外といい」バイクなのでした。そして確かに一般受けはしなかったものの、大排気量Vツインの鼓動を感じながら走れるスポーツモデルって、気づけば数えるほどしかありません。ましてやこんなにレーシーなスタイルのものは、本当にブロスしかありません。こういう唯一無二の枠にハマらないモデルにピンときてしまったライダーには、探すだけの価値がある存在です。
BROS(PRODUCT ONE)諸元(1990)
全長 (mm) | 2080 | |
全幅 (mm) | 720 | |
全高 (mm) | 1060 | |
シート高 (mm) | 770 | |
重量 (kg) | 165 | |
エンジン種類 | 水冷4ストロークOHC 52度Vツイン | |
総排気量 (cm3) | 647 | |
最高出力 (PS/rpm) | 55/7,500 | |
最大トルク (k-gm/rpm) | 5.7/6,500 | |
燃料タンク容量 (L) | 12.0 | |
変速機形式 | 5速/リターン式 | |
タイヤ | 前 | 120/70R17 |
後 | 150/60R18 | |
ブレーキ | 前 | 油圧式シングルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク |
車両:ブロスオーナー様
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情報提供元 [ Honda ]
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かつて、ジムカーナ界では常勝マシンでした。一度友人のものに乗せてもらったことがありましたが、低回転のどこからでもついてくるエンジン、ヒラヒラと軽快なハンドリングで、コレはインチキだと感じました。
以前POSHの左出しマフラーとFCRをつけて乗っていました。車重が重いですが乗って楽しいバイクでした。
出たばっかのBROS TWO乗ってました。
CBR250Rからの乗り換えででした。
初期型だったので、更にセパハンが低かったですね。
乗った感じ、街中でもアクセル開けられる(パワー低め)。5速まで行った後もう一段欲しくなる。高速で120超えると目に見えて燃費が悪くなるバイクでした。
でも走って楽しいバイクだったな。
自分は昔バトルオブツインなるレースに出ていましたが、30年ちょい昔友人の戸田選手がブロス改で出場してました。
80馬力ほどにチューニングされたエンジンで筑波サーキットを1分01秒で走ってました。
アルミツインチューブフレームはまさにレーサーですよね。
昔はチューニングパーツも出てたりワンオフで製作したりでレースではドカッティのライバルでした。
妻が400の後期型(UPハン)を買ってました。子供が出来てからは僕のバイクになりました。僕は当時CB1に乗ってましたが、ジムカーナではBROSの方が早かったですね。
エンジンは車のようで、何rpmでも同じようなトルクの出方でカムに乗るタイプではなかったですね。キタキツネさんがおっしゃる通り650はジムカーナでは敵なしでしたが、ギヤ比が高くて、400のミッションに改造されてた方が多かったと思います。
作りはCB1よりBROSの方が断然よく、レバーなどは同型なんですが、BROSは端の丸めの裏に軽量化の凹みがされてました。